神戸駅前のオーガスタプラザというビル。
ここ数年、神戸駅界隈に行っていないから記憶も曖昧。
間違っていたらお許しを。。
そのビルの最上階あたりにトイレがある。

ありきたりのトイレではない。
デザイナーが内装を手掛けたように、よく言えばお洒落だ。
スタイリッシュ。
一見。

男性用は真っ黒らしい。
入った事はないが、そう聞いた。

女性用は真っ赤だ。
朱に近い赤ではなく、ワイン寄りの赤。
硬質のプラスチックみたいな壁全体が赤。
もちろん床も赤だ。
手洗い場に設置された大きな鏡が、迷い込んで来た者を映し出す。

個室の中も赤だ。壁も床も便器も、すべて赤。
中に入りドアを閉める。
当たり前だけど１人だ。
ドアの後も赤。
狭い空間に座る。
赤。赤。赤。。。。

赤の中に取り残される。

たまらない。
不安がどっと溢れてきて
用を足したのかどうかも分からなくなり
急いでドアを開け、
手を洗い、そこから逃げた。

捕まりそうだった。
あの中に。

どれだけの時間
あの中に居られるだろうか。
考えると身震るいがした。

閉鎖空間。

溜まった新聞の整理をしていて、
「閉鎖空間という地獄」
が目にとまった。
池澤夏樹さんだ。

いじめで自殺する子どもたちの多さに嘆いている。

仮に人には自殺する権利があるとしても
子どもはその権利を与えられるべきではない。
そんなところへ老い込んではいけないと。

学校でのいじめは加害者側の原因を探さなければならない。
が、なかなか表に出てこない。

人間はなぜ兇暴になるのか。
外界から閉鎖された空間で狂気に走る。

今の日本の学校は軍隊をモデルにしているのではないか。
服装や髪型の形式的ツ秩序の尊重、全員参加の強制。
絶対服従。

カルト集団の内部、暴力団、学生運動の内ゲバ
果ては、文化大革命、ポル・ポト政権の虐殺。

家庭、学校、社会
閉じ込められた場所になったならば。。

赤いトイレの中を思った。

永遠の閉じ込めてやると言われる。
ゾッとする。
救われる道は一つ
代わりの誰かがそこに座ればいいんだから
そう、囁かれたら。。

わたしはどうするだろう。

正義感も信念も強い方だと、自分では思っている。

が、赤いトイレの中は異様に不気味だ。
閉鎖された赤い空間の中で
わたしは正気をどれだけ保つことができるのだろうか。。

自信が揺らいでいく。

人間は自分たちが思っているよりも
はるかに脆いものかもしれない。

赤いトイレ。
誰が作ったのだろう。

閉鎖空間で
くっきりと思い出してしまった。

外に出ると、大きな見晴らしのよい窓から
神戸の夜景が広がっている。
あのいい知れぬ不安が嘘のように。

被害者には、当たり前だがなりたくない。
加害者になるのはもっと怖い。

あのトイレの中に他の色があれば
閉鎖された空間にはならなかったはずだ。

違う色をしていたのは
入りこんだ人だけなのだから。