「大変です、大変です！ サタンさん、大変です！」
「これ、これ。トナカイボーヤ！ わしは、サタン（悪魔）ではない、サンタじゃよ！」

「あ、ごめんなさい。 でも、そんなことより、大変なんです！」
「何がそんなに、大変なのかね？ あ、本当じゃ！話す順番が、逆になっておる！」

「え？　あ、本当だ…。でも、それ以上に、大変なんです！ 昨日の…」
「そうじゃのぅ、昨日のビーフシチューは、大変 おいしかったのぅ」

「それもそうなんですけど、昨日のブログの反響がすごくて！ コメントが、５７１件もありました！」
「おぉっほっほ。サンタの暮らしぶりがわかって、みなさんも楽しんでくれたことじゃろう」

「そ、それが、苦情のコメントが、ほとんどです！  喜んでくださったのは、一人だけ…」
「それは、誰じゃ？」

「マナー派出所のおまわりさんです。 ウィスキー、おいしくいただいています！ って」
「それはよかった。一人でも、そういう方がいてくれれば、わしは満足じゃよ？　ところで、その他の
　コメントは、どんな感じじゃ？」

「はい。読み上げます。子供の夢をこわすな！、おかげで、子供が、にんじんを食べなくなった！、
　ふりかけをかけないと、ご飯を食べてくれない！、子供が、ゲームばかりしていて、話を聞いて
　くれない！、モンハン３か、たまごっちを、買ってほしい！、主人の帰りが遅い！、ボーナスを、
　減らされた！、寒すぎて、布団から出られない！…」
「ちょ、ちょっと、止めておくれ。  はて？ わしには、関係のないことが、ほとんどの気がするが…？
　みなさんには、ジョークというものが、わからないのかのぅ？」

「オイラ、わかりません！ 鼻は光らないし、磨いたって光らない、普通のトナカイですから！」
「そうじゃのぅ。 わしだって、泣いても、笑っても、普通のサンタじゃよ？」

「でも、サンタさん。泥棒まがいのことをして、裏口から侵入したり、深夜に騒音の出る車に乗って…」
「だから、それはジョークなのじゃよ。では、これから、サンタがサンタであることを、証明して見せよう」

「オイラが、ピッキングをする話も、ジョークなのですか？」
「そうじゃよ。　なぜ当日、ヤモリ三兄弟に来てもらうのか？ 君には、わからないかね？」

「え？ 荷物運びじゃないのですか？」
「ヤモリの特技を、よく考えてごらん」

「特技ですか？ ええと…、いつの間にか、部屋に入って来てたりします。閉め切っているのに！」
「そうじゃよ！それじゃよ！」

「あ！そうか！ヤモリ三兄弟に、どこからともなく部屋に入ってもらって、中から鍵を開けてもらえば
　いいのですね！」
「大正解！ 鍵は壊さず、ガラスも割らずして、そっーと、子供たちの枕元に、プレゼントを置くことが
　できるのじゃ！」

「さすがですね！ では、車の騒音問題は…？」
「ハイブリッドカーの試乗会に行ったのは、覚えているかね？」

「はい！プリウスのですよね？音が静かで、乗り心地がとてもよかった…　えっ！まさか！」
「その、まさかじゃよ！ 今年は、空飛ぶプリウスで、プレゼントを配るのじゃ！」

「うわ～、とても楽しみです～！ あ、でも、キャデラックを、ぴかぴかに洗ってしまいましたが？」
「それでよいのじゃ。 新車同様に見えるから、少しは高く下取りしてもらえるじゃろう」

「騒音問題が解決しましたから、警察庁にお金を振り込まなくても、よくなりましたね！」
「振り込まれては困るのじゃ。そのお金で、新車を買うのでのぅ。 空を飛べるようにして、明日には
　届く予定じゃ。 DVDナビ付だから、今年は、迷わず配達できることじゃろう」

「え？ DVDも観られるのですか！ では、『ホーム・アローン』 を観ながら、配達しましょうよ！」
「そんな時間は、ないと思うがのぅ？」

「あれ？ 何ですか、この たくさんのラー油は？」
「今年は、食べるラー油も、プレゼントするのじゃ！」

「え～！ ご飯にかければ、子供達の食も進んで、親御さん達も、大喜びですね！」
「ほっほっほ。みんなの喜ぶ顔が、目に浮かぶのぅ！ さて、今日は徹夜で包装せねばなるまいのぅ」

「では、オイラも、ラッピング 手伝います。 何か、クリスマスソングを聴きながら、やりますか？」
「そうじゃのぅ。その方が、仕事も はかどるじゃろう」

「何がいいですかね？ ビング･クロスビー？ナット･キング･コール？ サッチモ？ プレスリー？」
「わしは、ベンチャーズのクリスマスアルバムも、好きじゃよ」

「サンタさんは、こんなにいい人なのに、みんな見たことないから、サンタなんていない！サンタなんて
　ウソさ！って、言うんですよ！」
「人前には、あまり出ないからのぅ。だが、見たことないからといって、いないとは限らないのじゃよ」

「そうですよね！見たことないからって…、 え？じゃあ、宇宙人もいるのかな？ ユニコーンは？」
「見たことないがのぅ」