誰も知らないうさぎのお話
- カテゴリ:その他
- 2011/01/05 20:57:51
むかしむかし、まだ神様がこの地を見守っていたころの話です。
津軽のあるところに、一人の男が住んでいました。
男の名前は、まだありません。
男は神様の命令に従って、畑を耕していました。
神様は、始めは男を見守っていましたが、
男の懸命な働きぶりに満足し、
新たな場所へ向かい、そこでまた、人間を生み出すことにしました。
神様は、男の監視役として自らの使いであるうさぎを残し、この地を去りました。
うさぎは神様が去ったあとも男を監視し続けましたが、
男は変わることなく働き続けました。
それどころか、独りで監視を続けるうさぎを不憫に思い、
話をしようとするのです。
取り入ろうとしているのだと疑っていたうさぎでしたが、
男の偽りない笑顔に、次第に心を許していくのでした。
男は昼間はせっせと働き、夜はうさぎと共に月を見ていました。
この頃の月は、まだ模様はなく、まるで黄金のように輝いていました。
ただただ黙って月を眺める日が続きました。
男とうさぎは毎晩決まった場所で月を見るので、
いつからかその場所は「月見野」と呼ばれるようになりました。
季節はめぐり、冬がやってきました。
男とうさぎは、雪原となった月見野で、この日も月を眺めていました。
しかし、この様子を、たまたま来ていた神様に見つかってしまいました。
神の使いが人間と絆を結んだことに激怒した神様は、
うさぎの姿が見えなくなるように、
うさぎの毛を、真っ白に染めてしまいました。
うさぎの姿は見えにくくなりましたが、
男とうさぎの仲は変わらずに続きました。
うさぎも、色を変えられたぐらいで男から離れようとしませんでした。
それほどに強い絆になっていました。
季節が一巡りし、また冬がやってきました。
うさぎの色は、雪解けと共に元に戻りましたが、
また雪の季節になると、真っ白になってしまうのでした。
それでも男とうさぎの仲は変わりません。
この日も月見野の丘に立ち、輝く月を見上げていました。
しかし、また神様が戻ってきたのです。
再びかんかんに怒った神様。
今度は二度と会えないように、うさぎを遠くへ吹き飛ばしてしまいました。
男は何もできないまま、
うさぎが飛んでいった夜空を見つめているのでした。
うさぎが飛ばされた先には、北極星が儚い光を放っていました。
夜が明けると、男は月見野の雪原を探し回りました。
来る日も、明くる日も、昼も夜もうさぎを探しました。
そして、月見野を探し終わると、うさぎが飛んでいった方向へと向かいました。
あまりに急な出来事だったので、男は何も持たずに旅立ったのです。
のどの渇きは雪を食べて凌ぎました。
空腹は感じられませんでした。
しかし、男の体は知らず知らずに弱っていきました。
そしてついに、雪の積もる森の中で、男は力尽きて倒れてしまいました。
一方、飛ばされたうさぎは、夜の星を頼りに、
月見野に向かっていました。
途中で海も渡りました。
男の声を聞き取ろうと、懸命に耳を澄ましました。
これを繰り返すうちに、うさぎの耳が大きくなっていきました。
そして満月の夜、ある森の中で、男の姿を見つけたのです。
しかし男はすでに力尽き、倒れていました。
「まだ息がある」
うさぎはその日から、男が目覚めるのを信じで、体を温め続けました。
うさぎはもともと神の使いで、食べ物を必要としていませんでした。
しかし、男が耕した畑の作物を食べたことで、地上の動物と同じ体になっていました。
うさぎはときどき木の皮を食べて飢えを凌ぎました。
再び満月の夜がきました。
木の皮は食べつくされていました。
朦朧とする意識の中、うさぎは男を温め続けていました。
新月の夜。
うさぎの耳に、水が落ちました。
雪解けです。
春が近づいて来たのです。
うさぎの身体は、すでに動くこともできなくなっていました。
「あ と す こ し…」
うさぎは男に寄り添い続けました。
草が芽吹き始めました。
鳥のさえずりが聞こえてきました。
春が来たのです。
暖かい太陽の光が、男の顔に当たりました。
そして、男は目を覚ましました。
男は暖かい夢を見続けていました。
そして、
男に寄り添うようにして、うさぎが息絶えていました。
すべてを知った男は、三日三晩泣き続けたと言います。
涙も声も枯れ果てた男は、
うさぎの亡骸を抱いてゆっくりと立ち上がり、
うさぎを葬る場所を探しました。
男は、海の近くの森に場所を決めると、うさぎを優しく横たえました。
そして、近くの枝を切り落とし、その木を組んで火を着けました。
満月の夜、うさぎを焼く煙は、高々と上がっていきました。
男は煙の先にある月を、独り眺めていました。
枯れたはずの涙が、またとめどなく流れているのでした。
「今が別れの時」
男の呟きは、今別町の由来となりました。
次の晩、月を見て男は驚きました。
月にはあのうさぎの姿が映っているのです。
「また逢えたね」
「ずっと一緒だよ」
男は体が朽ち果てるまで、月を見続けたのです。
…すみません、実は私の勝手な作り話です^^
前に一度、私のお話を読みましたよね。^^ あれは、本当に小学校4年のときに書いたものです。
私は小さい頃から、本が好きでした。 なので、作文や感想文の賞はいろいろいただきました!が。。大人や先生達は「すごいね。上手だね。」と感想を言うのですが、私はそれが悲しかった。
子供なりに私は、文章をとおして・・・ きっと、伝えたい事が他にあったのです。
雨月さんも、こんなステキな話を作るのですね。(´▽`*)・・・でも私は、はなまるはあげません。^^
これを書いた時の、雨月さんの気持ちに寄り添います。
ブログの題名が気にかかって読ませていただきました。
とても切ないお話ですね。
それと、とてもきれいな文章だなって思いました。
ありがとうございました。機会があれば、またときどき読ませていただけたらと思います。^^
最後の言葉・・「また逢えたね」 「ずっと一緒だよ」
先日愛犬が亡くなって、ポッカリ~開いた穴が埋まりました^^
きっと、ずっと、一緒にいられるとおもいます。
これから…
新しい年もよろしくです^-^
地上で結んでおかないとです。月のうさぎさん そうだったんですね、、
雨月さん ありがとうです。