Nicotto Town


YUKIEのきまぐれ日和


小さな春への前奏曲②

 それからしばらくして、同じ学年の人はほとんど、たまにしか来なくなった。
 おまけに、誘った張本人の彩子は、先生の誘いで合唱部に転部してしまった。
 1年生で毎週来るのは、私と前田君だけのときが多かった。

 そんなこんなで、前田君とはわりと話すようになった。
 まあ、先輩たちやベッキーもいるから、最初のころは、2人だけで話すことはほとんどなかったが、出身校の話し、趣味の話、最近あった面白い出来事などを話すのは楽しかった。

 前田君は気さくで感じのいい人だなぁと思った。

 何回か部活に出ているうちに、2人だけで話す時も出るようになった。といっても、前田君はあまり自分から話題を出さないから、私が主に話題を出して、時々前田君に質問する形だった。
 
 あのことに関しては触れなかったが、私も習っているから、ピアノのことを話題に出した。前田君もピアノを習ったきっかけとか、お気に入りの曲とかを話してくれた。
 私はその時、こう言った。
「前田君が弾くピアノ、一度聴いてみたいなあ。今度機会あったら聴かせてよ。」
「ああ、まぁ。機会があれば・・・。」
 前田君がちょっと戸惑ったような感じがした。(ちょっとまずいことを言ったかなぁ)という気がした。
 でも、あの前田君のピアノを弾いている姿をもう一度見たいと思っている。


 ある日、ピアノ教室でのレッスンを終えて、阿部先生に聞かれた。
「今度は何か好きな曲を弾いていいよ。何かリクエストとかある?」
 私は真っ先に、あの曲を出した。先生に曲の情報を説明し、楽譜を取り寄せてもらうことになった。
 その日も、家に帰ってからCDを聴いた。聴くたびに、前田君がピアノを弾いている姿が浮かんだ。
(なんでだろう?別に好きってわけじゃあないのに。やっぱり、あのピアノを弾いている姿が印象的だったからかなあ・・・。)


 楽譜が届いてから練習を始めたが、これがすごく難しい。途中で拍子が変わるし、和音で指をかなり使う。
 やっぱりCDや前田君のように、すぐにはうまく弾けない。もっと練習時間が必要になりそうだ。


 (小さな春への前奏曲)がようやく形になってきた6月上旬、学校では体育祭の準備が進んでいた。
 テスト期間も近かったので、本当はやりたくなかったんだけど、私はじゃんけんで負けてしまい、各クラスから数人ずつ選ばれるパフォーマンス準備の係りに当たってしまった。
 私が当たったのは、バックボードという大きな紙芝居みたいなものだ。

 同じチームのクラスの係りの人達と準備をするのは、大変だけど意外と楽しいものだった。
 ボードに塗るペンキと刷毛を運んでいた時だった。
「あれ?中田さん?」
 前田君だ。
「中田さんってバックボードなの?」
「うん、そうだけど。」
「どんなのになるの?」
「う~ん・・・それはちょっと・・・。」
「企業秘密?」
「ははは・・・まぁ・・・。」
「がんばってね。チーム違うけど、期待してるよ。」
「うん。ありがとう!」
 なんだか妙にうれしかった。

 体育祭当日も「おはよう」ってあいさつしてくれた。それもなんだかうれしかった。

 だけど、体育祭の後、バックボードのことを話そうとしたら、なんだか前田君の態度はぎこちなかったというか、そっけなかった。その時、なんだか(ちくん)とした気がした。
(え?どうしてだろう・・・。)

アバター
2009/04/06 21:13
はい、私が通っていた高校がそうだったもので(^^)実はバックボードの部分は私の実体験が元になっているんです。意外と楽しかったですよ。
アバター
2009/04/06 00:28
体育祭にもパフォーマンスがあるんですね(*^ ^*)
楽しそうですね〜♬

実際に体育祭があった時は、練習が面倒だった覚えしかないのですが、
なくなってみると、もっと真面目に楽しんでやればよかったなーと思います(^ ^;




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.