ある日 とつぜん 最後のお話
- カテゴリ:自作小説
- 2011/03/14 18:07:02
ふと、目の前が明るくなった。
(ここ・・・・家じゃない?)
私の前には、何もない真っ白な空間が広がっていた。
しばらくぼーっとしていると、いきなり目の前に何かが現れた。
その「何か」は、とてもおかしな形をしていた。
顔は白いひげをサンタさんのようにはやした老人で、
胴体はしろい毛でおおわれており、
なぜだか後ろに2本の黒いしっぽが揺れていた。
「あ・・・あの・・・・どちらさまでしょうか・・・・・」
「わしは、夢をかなえる仙人じゃ。」
間髪いれずに仙人は答えた。
「じゃあ、仙人さん、どうして私はここに来たのでしょうか。」
「それはな、おまえがかなった夢を必要以上に使いすぎたからじゃ。」
「?」
「おまえは、最初のうちは、魔法を楽しく使っていただろう?瞬間移動とか念力とか。」
「はい」
「ああ、この分なら大丈夫じゃろうと、本当は1週間ほどそのままにしておいてやろうとおもっとったのじゃ。」
「・・・」
「だが、おまえは図にのり魔法を使って威張り散らしとったじゃろ?」
「・・・・はい」
「だから、魔法を使えなくさせる罰を下そうと思ったが、心から反省をして、自分のやった事の重大さを分かったようなので、ここに呼んだのじゃ。」
「・・・」
「本当に心から反省しておるか?」
「はい。」
「分かった。おまえが今日おかしたことは、皆、無かったことにしてあげよう。」
「ありがとうございます。」
「しかし・・・・」
「しかし?」
「自分が一人で生きているのではなく、周りの人の支えも借りて生きているということを忘れるな。
でないと、また今日のような事になってしまうからな。 分かったか?」
「はい!」
「うむ、良い返事じゃ。気を抜くなよ、わしは、いつもお前のことを見守っているからな。」
仙人はそう言うと、微笑みながら白い空間に溶け込んでいった。
「おきなさーい!!!いま何時だと思ってるの!!」
お母さんの叫ぶ声で目が覚めた。
あわててかけおりて、支度をする。
「いってきまーーす!!」
こうしてまた、私の何でもない日々が始まる。
でも、なんでもない日々の中に、いつも、驚きや幸せや希望が芽を出している。
「あ!ひこうき雲!」
青い空に一本、きれいに描かれた白い線の向こうで、あの仙人が笑っている気がした。