夢の浮橋
- カテゴリ:小説/詩
- 2011/03/16 14:25:30
目を開けるとそこは薄紫の霞が掛かる美しい景色の中に
小さな橋がポツンと浮かんでいる場所だった。
私はどうしてしまったのだろう?
確か…ああ、そうだ読経の最中に唐突にひどい頭痛に襲われて
目の前が真っ暗になっって…それから…?
「殿、お迎えにあがりました」
君は…?
「いやですわ、お兄様私の事をお忘れになるなんて」
ああ、君は…そうだ。でも名前が思い出せない。
伏籠の中の雀の子を逃がされたと泣いていた尼そぎの少女。君は、君は…。
待っていてくれたんだね。
きっともう愛想尽きて私の事など置いてさっさと転生したと思っていたよ。
君が居なくなってからの数年は、目が潰れてしまったかのように
目の前が真っ暗で、辛く悲しいだけの日々だった。
早く君の後を追ってしまいたいと何度天に願った事か分からない。
でも御仏はなかなかそれを許してはくれなかったんだよ。
すぐに後を追わなかった私を恨んでいるかい?
「いいえ、今お兄様と再びこの浮橋で再会できるのもそうなさらなかったお陰ですもの」
ああ、そうだね。
自らの手で自らの命を終わらせるという最大の罪を犯していたら
きっと私は君とここで待ち合わせはできなかったはずだ…。
「さあ、お兄様そろそろいきましょう」
そうだね、早くしないとこの紫色の雲に紛れてはぐれてしまう。
連れて行っておくれ。永遠に途切れる事のなく桜が舞い散る夢の場所へ。
私の常春の君のその手で…。
コメントありがとうございます。
巻名だけ存在していて本文がない「雲隠の巻」は
読者の想像に一任させているという点で、ある意味究極の小説ですよね。
それをあえて文字に書き起こすなんておこがましいとは思ったのですが
新青ガチャ背景を見ていたらついこんなやり取りが頭の中に浮かんでしまったのでした。
光源氏のお兄ちゃん(*^-^*)ノ