泣ける?其の2『たったひとつの冴えたやりかた』1
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/04/23 00:57:53
泣かせる話は本当に感動的なのかと突っ込んだ。
じゃあ自分は泣けてしまう話で胸が詰まったことはないのかと問われれば、あります、すぐ思い当たる本もある。
SFを読む人なら「あぁ」とうなずいてくれるだろう。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの『たったひとつの冴えたやりかた』だ。
好き、というには厳しすぎ、重くて読むときは覚悟がいるけど、ティプトリーは自分にとって特別な作家なのだと思う。
気づけば翻訳出版された本はたぶん、全部ある。
『老いたる霊長類の星への賛歌』などはサンリオ版と早川版両方あった。
「たったひとつの冴えたやりかた」は三つの中編を収めた同題の(邦訳では。原題The Starry Rift)中編集の最初の一篇で、最近中編だけを独立させた(邦題は中編集とかわらず、The Only Neat Thing To Do)改訳単行本が出た。
買わずにいようと頑張ったけど、駄目、結局買って手許にある。
『生まれも、育ちも、/種族さえちがっても、/ともだちに/なれると思った。』
という帯のコピーを見ただけで、らしくないことに思い出して涙がでそうになる。
最初に読んだのは雑誌への翻訳掲載時。
文庫の中編集にも納められている川原由美子の挿絵(確か12ページの)が目次に載っていたから、カバーストーリー扱いだったと思う。
ストーリーは一面では素直なスペースオペラだ。
誕生日のお祝いに小型宇宙船を送られた15歳の少女が、貯めたお小遣いで船を長距離航行可能に改造し、探検に出かける。
異星人とのコンタクトも果たすが、思わぬ事態に遭遇し、そして――という話
やさしいジュヴナイル気分で読み始めたので、物語の着地点に呆然とした。
これはないだろう。
こんな、元気な女の子の冒険物語が、こう終わるのって……あり?
怒りに似た思いを抱きつつ、バタバタ泣いて、鼻水でティッシュを消費しまくった。
ネタバレ気味になるけど、ぶっちゃけ、人が死にます。自己犠牲があります。
でも、だから泣いたのではない、それだけじゃない。
後で話した友人に言われて戸惑った。
「いや、あれで泣けないよ。最後あたりでみんなで利口だ、立派です、みたいに褒めまくるから冷めちゃって」
……あれは娘の危機に狂乱しかかってる親をなだめる言葉でもあるわけで、基地の人々の冷静さが逆に自分はつらかったのだが。
実際、基地の人々はヒロインのことをその若さで立派だ、とは思っているだろう。
けれど、同じ立場に立たされたとき、彼らはおそらくは同じ行動をとる。
「世界」を支えるために、必要なこと、当たり前の犠牲として考えるだろう。
基地司令は現実的な対処に追われ、少女たちへの感傷を自身に許すのは、わずかな時間のみだ。
現実の前に、勇気も悲劇も背景に後退する。
覚悟はしているべきだった。ティプトリーだったのだから。
(長くなりすぎたので2につづく。すみません)