伝えたい言葉3‐1
- カテゴリ:自作小説
- 2011/05/29 23:03:58
逃げられたか…。
営業一課のフロアから去っていった綾奈の背中を見送りつつ、雅也は心の中でそっと呟いた。
(澤井さんのことが気になり始めたのはいつのころからだろうか?)
そう自分の内に問いかけてみる。
正直『分からない』というのがその答えだった。
小さい頃から自分を着飾ったり、おべっかばかり遣う人たちの中で育ってきた。高校生になり、大学生になり、年相応の同級生たちが身の丈にあわない衣服を身に着けるようになると、彼女たちにも嫌悪を覚えた。多分、彼女たちが変わっているわけではなかっただろう。思春期になれば誰だって異性の目を気にするし、少しでも自分が綺麗でありたい。そう願うものだ。
だが、その年齢に達するまでに雅也は嫌というほど欲にまみれた人間の裏側を見てきてしまったのだ。
(―――だから、かな?)
自分を着飾ろうとはせず、二人の弟の為に献身的に仕事をする綾奈を眩しいと思うと同時に『手に入れたい』とも思うのだ。
そんな『自分分析』をしてみてから、自嘲する。
(もう俺にはそんな時間なんて残されてはいないのに。)
大きな息を吐いて、雅也は綾奈のことを頭の中から閉め出すことにする。
もう、会うことは二度とないだろうが、それでも綾奈と同じ空間にいれた今日を感謝するのだった。
「確かなのかい?」
そう問いかけた主は、先ほど速水が提出した資料から視線を上げずに問いかけた。
「―――私の資料をお疑いですか?」
ややムッとした返答をする速水に、「おや?」というように毅―――滝野財閥会長滝野毅は視線を合わせる。
「そうは言ってないさ。だが、我が次男坊がねぇ…。速水君、君だって驚いたはずだろう?」
「まぁ。それはそうなんですが…。でも、確かですよ、この情報は。」
毅の言葉に速水は苦笑を返した。
「で、君の目から見てどうなんだ?」
「そうですね。―――近所の評判は、家族を含めて上々ですね。今は仕事に追われて男の気配は皆無。両親を一度に失っていますから今は彼女が大黒柱らしく、一生懸命家族を支えているっていうのが印象的ですね。」
立て板に水のごとくすらすらと言葉を羅列する速水の一言が毅のアンテナにひっかかった。
「『今は』男の気配は皆無、なのか?」
言外に昔は?と問いかける。
「少し前までは、ウチの営業一課で顔を会わせていた男がいたくらいです。」
「あぁ、彼ね。」
速水の言葉に小さく頷きながら、もう一度資料を見直す。
「彼くらいかな?―――では、問題なしって事で次の行動に移るとしよう。」
満足げな毅の顔は、どこか策士に見えるなぁといやに緊迫感のない感想を速水は覚えた。勿論、毅にそれとわからないくらいには無表情のままで。

























コメントありがとうございますღ
>雅也さんにはあまり自由がないのでしょうか??
うっ、鋭いです。
実は雅也はとっても不自由なんですよ。
思わずドキってしました。
これから期末テストの勉強ですよね
頑張ってくださいねw
私も文章をまとめまらなくって苦労しっぱなしです^^;
なんか、怖いですね><
雅也さんにはあまり自由がないのでしょうか??
やっぱり雅也さんは綾奈さんが気になってたんですね!(満足気に言うな←
「自分分析」・・・すごい言葉ですね。
あれだけの文章の中で雅也さんのたどってきた人生の大方の予想がつくなんて、文章の書き方に尊敬しちゃいます///
私はいつもまとめるのが苦手でごちゃごちゃになるので;;
次回もたのしみにしてます^^! 今日は落ちなので、また明日以降読ませていただきます!!
プライベートは何であれ、やはり敬語は大切でした。
いつもダメダメな文章を校正していただいて本当にありがとうございます。
目上の上司がいる場合は敬語で話さなければいけません(現実ではこのような言葉遣い一つだけで辞めさせられる人もいます^^;)
この場合は「らしく」でしょう。(「、」を消す必要はないです^^;)