伝えたい言葉4 前編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/06/05 15:45:29
「すまないねぇ。仕事中に呼び出したりして。」
そう言って口火をきったのはこの部屋の主である滝野毅だ。
「いえ。店長の許しも出ましたし、それはいいんですけど…。」
胡散臭そうに言葉を返す綾奈に毅は満足そうに頷いた。
「私は滝野毅といって、この滝野財閥の一応、会長をさせてもらってる。君は澤井綾奈さんだね?実は、君に折り入ってお願いがあってね。」
「お願い、ですか?」
(滝野財閥の会長が?この私に??)
その問いが顔に出ていたかのように毅はにかっと笑って見せた。
「そう。実は、先日私付きの秘書が寿退社してね。」
(それが、私と何か関係があるっていうの?!)
そんなことが頭をよぎる。普通に考えてこんな大きな会社の特に会長付きの秘書の退社と綾奈のような一般人とはどう考えても結びつくわけがない。
「―――ははっ。君は何でも顔に出るみたいだな。『自分とはまるで関係ない』と思っていることがそのまま顔に出ているぞ。」
「えぇ。素直なだけが取り柄ですから。」
「うんうん。そうだね。素直な事は本当にいいことだ。人間の美徳の一つだよ。私くらいの年になると中々素直に自分の気持ちを表すのは難しい。周りも段々そうなってくる。私の周りはほんの一握りを除いて自分の利害関係で仮面をかぶっているものが多い。まぁ、それが決して悪いことだとは思わんがね。」
毅は一人悦に入っているように頷いている。
「まぁ、それは置いといて。お願いというのは、退社した彼女の代わりに私の秘書になってくれないかと思ってね。」
はい?なんですと??
「…あの、もう一度おっしゃっていただけますか?」
話が突然とんでもない方向に行っているようで、綾奈はもう一度問いかけた。
「君に私付きの秘書をしてもらいたいと思っていると言ってるんだよ。給料は大学卒業生の入社1年目と同じくらいしか初めの内は出せないがね。」
それだって、綾奈が1ヶ月稼ぐ給料を軽く上回るだろう。
「給料面は後は夏・冬のボーナスと決算賞与くらいだな。―――だが、そう悪い話ではないはずだが?」
悪いどころではない。最近特にすぐ下の弟諒一が家計を心配して、大学進学を諦めて『働きたい』言いだしたくらいだ。1ヶ月の給料が上がる上にボーナスが出るとなると諒一がもしかしたら大学進学を考え直してくれるかもしれないとも思う。…だが、
「一つお伺いしてもいいですか?」
「何だね?聞きたいことがあるならちゃんと初めに聞いておく。これも社会人にとっては大切なことだ。」
「はい。何故、そんな高待遇で私を迎えようということになったんですか?それも滝野財閥の会長がこんな見ず知らずの一般人の私のことを。『あしながおじさん』運動でもされてらっしゃるんですか?」
聞きようによってはかなり無礼な言い方かもしれない。だが、こんな降ってわいたようなうまい話には必ずウラがあるとしか思えない。
「『あしながおじさん』運動か。上手いこと言うね。でも、そうだね。不思議に思っても仕方がないかもしれない。だが、これは私にとっては慈善事業とかでは全くないんだよ。―――そして、君に白羽の矢が立ったのも全くの偶然でもない。」
「では、理由を教えてくださいますか?」
毅はしばらく眉間に指を当てたまま、考えるようなそぶりを見せる。
「今君が『一般人』といったけど、まさにその感覚を持っている人が近くにいてほしくてね。」
「それは、私でなければいけない理由ではないと思いますが…。」
その言葉に毅はにっこりと笑って見せた。
「そうだね。言うなれば『将来への投資』かな?」
何故、そこで疑問形?
っていうか、将来への投資って何??
そう思わないでもないが、そこは敢えて突っ込まないでおこうと思う綾奈だった。
「ただし、さっきも言ったがこれは全くの慈善事業とかではないんだよ。」
そら来た、とそう思った。
「君には今住んでいる家を離れてマンションに移ってもらいたい。」
顔の前で両手を組み、毅はそこに自分の顎を乗せた。
「―――愛人になれ、とおっしゃるんですか?」
嫌悪感を露わに問いかける。そういう生き方をしている人がいるのは知っているし、それを真っ向から否定するほど真っ白な人間ではないが、綾奈はそういう関係になるつもりなど全くと言っていいほどない。
「え?あ、違う違う。私は「愛妻家」だからね。奥さん以外ははっきり言ってどうでもいいって思ってるよ。―――後は、長男の嫁もなかなかいい子でね。」
そのまま自分の家族の女性がどれだけ素晴らしいか、を30分ほど披露してくれた。

























コメントありがとうです。
この滝野会長、企む企む企む人ですw
いい人なんですけど、周りは大被害って感じですかね。
黒川さんの尻に惹かれてたりしますw
綾奈は世間知らずなまだ21歳なので、会長に言いたいことをはっきり言えるんですよw
未来に綾奈のことも自慢話の一つに入ってくるのでしょうか(笑)
楽しみにしていただけると嬉しいですw
話では難しいことを言っているのに、少々おどけた面もあって・・・思慮深そうで・・・
まさに「社長」って感じですね!
なんとなく黒川さんと馬が合いそうな気がしますww
「あしながおじさん」運動っておもしろいですねb
この社長との対話の中でそう言える綾奈さんもすごいと思います;;
社長さん、愛妻家・・・;; 長男のお嫁さんの自慢もするということは、
綾奈さんも気に入られているようですし、もし、いつか綾奈さんと雅也さんが結婚したら、この長い自慢話の中に綾奈さんの名前も挙がるのでしょうか? と、変な想像を繰り広げております←
この二人の会話、好きですbb
コメありがとうございます。
ちょっといい感じだった二人の間に割って入ってきたのは、
一応、財界の大物な感じの人です。
ちょっとえ??って思っていただけるとしてやったりな気分です。
3は2回に分けても入らないので3つに分ける予定だったりします。
また楽しんでいただける作品でありますように。
意味ありげな人ですからw
『将来の投資』徐々に明らかになっていくと思いますw
頑張って早めに中編をUPしたいと思いますv
綾奈さんと雅也さん
なんかいい感じだったのに!
きっと2人の間に亀裂が生じたり・・・あぁぁ!><
この滝野毅って何気に意味ありげな感じがします。
『将来への投資』って??
続き、楽しみにしてますw
素敵なものをありがとうございます。
ただ無駄に長いだけの小説です。
でも、まだ始まったばかりなので、完結できるように頑張っていきたいと思ってますw
いつも、丁寧に読んでくださってありがとうございます。
自分で一度見直しなのに気付かなかったです。
ダメぢゃん、私!!
こんな私ですけどどうぞ見捨てずによろしくお願いします
見習いますw
「素直」と「事」の間にある「に」は必要ないと思います^^;