Nicotto Town



伝えたい言葉4 中編

 コホン。
 今まで、綾奈の一歩後ろで成り行きを見ていた黒川の咳ばらいが聞こえてきた。そこで初めて綾奈は黒川の存在を思い出した。
 (そうだった。二人きりじゃなかったんだ。)
 それまで空気に徹していた黒川だが、話が余りにも違う方向に進んでいるのを見かねたのか、声をかけてきた。
 「会長、話が逸れてらっしゃいます。」
 「おっと、そうだった。マンションに移ってもらいたいっていうのは、私の秘書になるとやはり帰りが遅くなる事が多くなるし、終電がなくなってしまうかもしれないんだ。そこで、社宅であるマンションに引っ越してもらいたいんだよ。ちょうど後ろにいてる黒川君も同じ社宅に住んでいるからね。帰りも気にせずに仕事に励んでもらえるってわけだ。勿論、社宅に入ってもらうのはこちらの都合だから、家賃はいらない。あ、管理費・共益費・光熱費等々はいただくことになるけどね。―――どうだい?悪い話ではないだろう?」
 「はぁ…。」
 悪いどころか、こんな高条件の職場なんてそうそうないだろう。っていうか、全くないと言ってもいい。

 それから1時間半の話し合いの末、毅に半ば押し切られるようにして、綾奈の滝野コーポレーションの入社が正式に決まったのだった。
 

               *       *       *      *      *


 「え?じゃぁ、その話を受けてきたっていうのか?」
 「なんか、胡散臭げだよ、それ。」
 滝野コーポレーションへの就職が決まった事とその一部始終を弟二人に話した時の反応は二人とも似たり寄ったりだった。
 因みに先に言葉を発したのは長男の諒一、高校3年生。後に発したのは叶斗、高校2年生だ。
 「「怪しすぎるよ…。」」
 呆れ顔の二人の言葉が重なった。
 「分かってるわよ。でも、こんなに条件のいい話ってないし…。」
 「何か裏があるに決まってるだろ!!」
 「とにかく、もう受けちゃったわけなんだろ?」
 「そうよ。それに、あんな大企業の会長さんなんだもの。変なことはないわよ。」
 (大企業の会長が姉貴に目をつけたことからしておかしいから。)
 そう言いたい叶斗だが、綾奈が一度決めたら周りの話など全く聞かないことは百も承知だ。
 「分かったよ。―――ただし、何かあったらすぐに俺たちに相談すること。いくら年下で弟だからって頼りにならないなんて考えないでね。」
 「かっ、叶斗!!お前、この話に賛成なのか?」
 「姉貴は一度決めたら絶対にその決定を覆さないじゃないか。短大を辞めたのだって結局反対しても無駄だったんだから。」
 そういうと、綾奈の作った晩御飯を口の中に掻き込んだ。
 「それで、俺たちはいつ引っ越せばいいわけ?」
 そっちの方が問題だと叶斗がいう。引越しの準備とかあるわけのだから、当然といえば当然の問いだろう。
 「あ、諒一と叶斗は、引っ越さないのよ。」
 「は?」
 「え?」
 二人のリズミカルに動いていた手が、止まった。
 「だから、引っ越すのは私だけ。―――だって、あんたたち学校があるじゃない。」
 このアパートと綾奈が引っ越すことになる社宅は駅でいえば各駅で7駅ほどしか離れていないのだが、学区が違うのだ。
 「そんな、学区のことなら、学校に言ったらなんとかしてくれるだろ?」
 「最悪、転校するしさっ」
 そんな二人に綾奈は大きく顔を左右に振る。
 「これは、私が勝手に決めた就職先と社宅の話でしょ。諒一と叶斗に迷惑をかけられないわよ。…それに、『一人で引っ越してくること』も条件に含まれてるのよ。」
 ((ますます、怪しいじゃないか))
 そう言いたいのだが、綾奈が決めてしまったということが問題だ。綾奈が決めた=覆らないのだから。

#日記広場:自作小説

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2011/06/26 22:53
沙月♦しゃむさん

>社長~
いえいえ、気にしないでくださいね。
社長は息子がなってるので会長になりました。

誰もが「怪しい」って指摘する条件を飲むあたりが
まだまだ世間知らずな21歳って感じでしょうか^^

弟、これからももちろん出てきますよ~
で、雅也との関係が進むにつれて障害になる、予定です。
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2011/06/26 19:52
「一人で引っ越す」なんて条件・・怪しすぎるにもほどがありますよ∑∑
・・・すみませんm(_ _)m

黒川さんと滝野さんの関係、やっぱりおもしろいですw
滝野さんの話がそれるたびに黒川さんが無表情の顔と声で「話がそれてます、会長。」と言って、
「おーそうだった」と滝野さんが言いそうな・・・(何勝手に言ってる←

なんて頼れる弟なんでしょう>< こんな弟がほしいっ!(

あ、あと以前滝野さんのことを「社長」と書いてしまったのですが、「会長」だったのですね;
すみませんでした;;;
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2011/06/07 00:39
〉ひゆきさん

綾奈はあんまり頭で考えず、突っ走るタイプでしたΣ(゚口゚;
弟二人に支えられてお姉ちゃんをやってるかんじ??

雅也と綾奈、今のところ全然ラブ度がない感じになってきました(*¨) ....

こんな話ですが、読んでいただけると嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いします

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2011/06/07 00:35
〉月闇さん

明らかに何かがあります
彼は企む人だから~
今書いているところでも明らかになってなかったりします(;´▽`A``
9話目突入しているのに…ヾ(- -;)。

ややこしいことを言ってすみません。
このままのスタイルを貫こうかと思います。
どうぞよろしくお願いしますw
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2011/06/06 23:19
綾奈さんは突っ走るタイプなんですね(^^;
弟さんもすごくしっかりしてるから
もっと頼って頑張りすぎないようにしてほしいですw

それにしてもひとりで引っ越すことが条件って・・・
怪しすぎますね・・・(-ω-)

雅也さんは綾奈さんが同じ会社に入社したことを知ったら・・・
しかも、会長の秘書とか・・・
どういう反応をするんでしょうか?
今後の展開もとても楽しみです☆
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2011/06/06 09:19
一人で引越しって…^^;
明らかに何かあるって思うよ;´Д`)


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