『七夕祭』 (初夢の続きは外伝4)
- カテゴリ:自作小説
- 2011/07/07 19:52:39
「やっぱりちょっと苦しいな」そう思いながら、松梨は浴衣の帯を撫でた。
薄い紫に朝顔を描いた浴衣は祖母からの贈り物だ。
浴衣は涼しくて良いのだが、みっちりと母親に帯を絞られた。
「綺麗でいるって大変なのよっ!」母は笑いながらそう言った。
「いけないわ、そろそろ始まっちゃう」
少々歩きにくい裾を気にしつつも、お祭り会場へと駆出すと
コロンと石畳が鳴った。
メイン会場前は、浴衣を着た人々で賑わっていた。
なぜなら子供たちによる七夕の劇が始まるのだ。
織姫役には、梅子も選ばれていた。
「悟、まだ来てないのかな?」
辺りを見回すたびに、松梨の鼓動はどきどきと高鳴っていた。
浴衣姿で彼と会うのは初めてだ。
そして、最後になるかもしれない……。
「引越し…か~」
この夏を最後に、この土地を離れることは決まっていた。
けれど、松梨はそのことをまだ誰にも告げられずにいた。
「離れたくないよ……」
とうとう劇は始まってしまった。
着飾った梅子は、とても綺麗だった。
けれどちょっと自信なさげで、ツンとすました彦星と噛み合わないのか一歩引いてしまっていた。
台詞のやりとりも少しずつ遅れてしまい、沈黙の時間も多くなった。
その姿は自分と重なっってみえた。
がんばれ梅子! 思わず立ち上がって応援してしまう。
「ん?」
劇が続いているというのに彦星に何者かが近づいていった。
こんなシナリオだったっけ?
松梨は首をかしげた。
近づいて来た人影は、彦星の手を掴むとどこかへ引っ張ってゆこうとしていた。
梅子はというと、突然の出来事にただ立ち尽くすばかりだった。
「なにしてるの! 彦星取られちゃうでしょ! がんばりなさいよっ!」
松梨は人の波を掻き分け、声を上げながら前に飛び出た。
そして気づいてしまった。
あ、私も同じだ……。
すっかり竦んでしまった松梨の目の前を光の矢が通り過ぎた。
直後、パーンパーンパーンと場違いに明るい音が聞こえてくる。
打ち上げ花火が次々と空で大輪の花を咲かせていた。
観客たちの視線も一斉に空へと向かう。
するとそれまで立ち尽くしていた梅子が叫んだ。
「彦星様、私のことをまだ好きでいてくださるならば、共に逃げましょう」
完全なアドリブだった。七夕の劇にそんなシーンは存在しない。
梅子の顔は真っ赤だった。
彦星は、意外そうな顔をして、じっと彼女を見つめた。
観客たちも、乱入してきた人さえもじっと息を止めたまま見守る。
やがて、彦星は織姫の手を取るとそのまま右側の幕から出て行った。
「ウワァァァーーー!!!!」
辺りからは喝采が起こり、劇は無事(?)終了した。
「松梨!」
声に振り返るとバツが悪そうに頭を掻く悟がいた。
「遅れてごめんな。この人ごみで、全然見つからなくて」
よく見ると悟の手には、花火の燃えカスが握られていた。
「この騒ぎの元凶はあなただったのね?」
「なんか、劇が変な感じだったからさ……」
「劇が台無しになったらどうする気だったのよ!」
「いやいや~うまくいったじゃん!」
得意げに鼻を掻く悟に、松梨は何も言う気に慣れなかった。
「まずは何から食べる? ああ~梅子も見つけてやらないとだけど見つかるかな?」
歩き出そうとする悟の浴衣の袖を松梨は掴まえた。
「その前に……えっと……ちょっと、話があるんだけど」
願いを掛けた短冊と笹の葉が涼しげな午後の風に揺れていた。
私にはできない表現で、うらやましいって思います。
参考にしてもいいですか?
嫌だったら、言ってください。
これも、「次はどうなるの?」と気になります。
でも、ナイスな演出で盛り上がって何よりですね^^
文末がまぁ~た意味ありげで、読み手の心を擽りますねぇ~♪
本編も外伝も 楽しみにしてますぉ~!
風邪の調子はどぉですかぁ?夏風邪は厄介ですからね・・・お大事にね^^
乱入とかしないもーん。(^ー^* )フフ♪
どうぞお楽しみください!
わかる人にはわかるかもしれませんが
彦星はレッキー 乱入者はぷ~さんです。