捜索
- カテゴリ:自作小説
- 2011/07/10 23:44:02
今日は休日出勤の日だった。
寒い日で、夜明け時から灰色の雲が空を覆っている。
こんな日は、とても布団が恋しい。
羽根布団のふわんとした軽さと暖かさが、1人暮らしの佐奈にむかって、もっと寝てもいいんだよと誘惑する。
「でも、昨日の仕事の残り、仕上げんと…」
佐奈の脳裏に、山積みの発注書が浮かんでくる。
今日はあれを片付けるために、休日出勤をすることにした。
あれを入社1年未満の後輩たちに任せるわけには…
「そんなん、無理~」
そう気合を入れて、彼女はベッドから飛び出した。
寒い部屋の中、仁王立ちで気合をいれる佐奈、23歳。
入社2年目で、すでに最も女子社員の古株になっている不幸体質のOL。
何が不幸かって、それを不幸とも思っていない性格が、すでに不幸かもしれなかった。
いつもの通勤スタイルでマンションをでると、空から白いものが舞いおりはじめていた。
「なんや、積もりそうやなあ、雪」
ぶるっと肩を震わせて、佐奈は大きく1歩を踏み出した。
出勤して会社の正門の鍵を開け、事務所に向かう。
今日は佐奈だけが出勤だ。
一階の製造工場も、工場事務所も人気がなくがらんとしている。
そのまま、まっすぐ二階にある営業部屋と受注センターに上がった。
今日は更衣室に荷物をおかず、そのまま自分のデスクに向かう。
エアコンのスイッチを入れ、デスクの上に積み上げた書類の山を仕分け…ようとして、一枚のメモに気がついた。
貼り付けられたメモを取り上げ、ざっと目を通す。
「佐奈ちゃん、お隣ん家の虎縞の猫が、一階の工場に迷い込んでいます。確か明日出勤するっていってたよね、追い出しといてね、よろしく。 工場長★」
「はい?」
いつもあれこれと無理を聞いてもらっている、ナイスミドルな、工場長の笑顔が浮かぶ。
「お隣の家のにゃごですか、そーですか~~!」
(一晩、そのまんま放置したんかい~~~工場長~~!!)
ぐしゃりとメモ用紙を握りしめ、回れ右をして階段を駆け下りた。
片手に箒、片手に塵取りを握りしめ、そのままの姿で1階から2階まで掃除道具で音を鳴らしながら捜索を開始する。
音に敏感な猫を驚かせるのは忍びない。
忍びないが、潜んでいる場所から追い出さないと。
今日から三連休だ。
外はすでに吹雪と化している。
そのまま3日間、水も餌もない、この寒々とした会社の中に猫をほおっておくなんて。
「そんなん、絶対あかん!」
.佐奈は仕事そっちのけで数時間捜索した。
が、猫の気配はまったくしない。
しかたなく、一旦捜索を打ち切った。
幾度も階段を上がり降りしたので、膝ががくがくと笑っていた。
昼休み、念のため近所のスーパーに、ドライフードの小袋と猫用の煮干しを買いに走った。
こうなったら、餌でつるか、3日分の餌と水を用意するしかない。
そう腹をくくって、仕事に…やっと本来の目的、自分の仕事に取り掛かる。
PCの電源をいれ、自分のデスクに座った時だ。
すぐ近くで「ん~~なぁああ~~」と、情けない猫の声がかすかに聞こえてきた。
「…やっぱり、おるやないの~~!!」
佐奈は再び仕事を後回しにして、猫の捜索に立ち上がった。
今回は最終兵器、煮干とドライフードを投入だ。
煮干をふりながら、声のした受注センターを隅々まで練り歩く。
この姿をみたら、後輩の女の子たちはどう思うだろう?
そんな考えが頭を掠めたが、見られるはずもない。
佐奈は開き直った。
捜索開始30分後、煮干に釣られて彷徨いでてきた星を確保。
思いっきり暴れてくれたので、両手も顔にも引っかき傷ができた。
それでも、この寒い工場で連休を過ごさせるより、自宅に帰したほうが絶対にいいに決まってる。
暴れる猫を抱きかかえ、佐奈はその足で隣の家にその虎縞の猫のつれていった。
「連休あけたら、工場長をとっちめんとなあ」
そう呟きながらも、佐奈の顔はなぜか晴れ晴れとしていた。
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実はこれ、八割がた真実ですよw
続きはありませ~~んw
Yureさま
ドキュメンタリー捜索…昔のタツノコプロの戦争アニメのよう…(古w)
かおりんさま
ほぼ、ノンフィクションですw
主人公の行動は、もっと過激だったけど^^;
猫はじっと潜みますからw
らてぃあさま
そうですか^^;
我家のお猫さまの下僕をしてると、どうしてもこうなるw
沙羅さま
この後から、主人公はこの猫に殴る蹴るされるようにw
工場長のお仕置きは…内緒www
で、その後の工場長には、どないなお仕置きが待ってはったんやろうねぇww
猫の捜索って結構大変なんですね。
寒い中お疲れ様・・・って声を掛けてあげたいです♪