Nicotto Town



無常素描


猛暑でバテ気味ゆえ、気持ちも降下中。
前売りチケット買ってあるからな。
エイっとばかり、行ってきました。

『無常素描』
東日本大震災発生から一ヶ月のち
日付も場所も音楽もナレーションもない。
ひたすら車の中から、素描を重ねるごとくカメラを回した
いわば記録に近い映画です。

情感に痛い映画と思っていたけれど
実際は淡々でした。

阪神大震災の一番大規模な焦土は、車で10分も走れば終わります。
ところが、東日本大震災は延々と続くのです。

ずっと車が走り続けているのに風景は変わらない。
瓦礫。瓦礫。瓦礫。
壊れた堤防、海、海、海。

ほとんど人いない。
チュンチュンと鳥が鳴いている。
人工物はすべて元の原型をとどめていない。
現代美術のようだ。
また違う鳥が鳴く。
チーチー。
山は確かにある。海もある。
人はいない。
鳥は鳴く。
瓦礫を見ながら車は行く。

過疎の地域だったんだ。
改めて実感する。
都会育ちのわたしには一番遠いところにある
風景だった。

広い広い海沿いの大地に、
高齢者と高齢にさしかかった僅かな人々が
牛を飼い、鳥を飼い、コメを育て
野菜を作っていた。

ずっとずっと昔から
東北はそんな地域だったのだ。

映画の中で玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)さんが語る。

彼は福島の僧侶でもあり、作家で、
震災復興構想会議委員も務めている。

東北被災者が世界から称賛を浴びたのは
経済原理から遅れた地域、違った生き方をしていたからこそ
守られていたものがあったことに対してだろうと。

復興会議で災害に負けない先進的な世界をつくろう。
では、違うと思うんです。

山を削って家を建てる。
じゃあ山の神さまはどこに行くのか。
やっぱり神さまは一番上。

神仏を尊重して、天災を受け止めるのが
自然に対する態度。
荒れたら、今まで進んできた道の何がおかしかったのかを
思うしかないんです。

経済原理優先とは違う生き方に変わることじゃないかと思いますね。

玄侑さんは作家として、震災前から長編を書き始めておられた。
何が起こっても書き続ける生き方もあるだろが
ベースが坊さんなんですね。
わたしの言葉で、何かが実際に動くとなれば、そっちに使った方が
有効だと思うし。そうシフトすることでストレスもない。とも。

その地に生きる人の声は
しんしんと身に入ってくる。

途中、かなり方言のキツイお年寄りがいて
全く分からなかったのだけれど
それゆえに、哀しみと痛手が伝わってくる。

観終わって、思ったのは人がいないということだった。

被災地に救援復興の人がいて、ブルドーザーも動いている。
そんな風景を想像していたが
球場より広い場所に、ブルドーザーが一台動いていればいい方で
人影すら見えない場所だらけだった。
でも、鳥は穏やかに鳴いている。

人って何だろう。
そう感じた。

阪神の時は人口密集地だった。
その映像を見ると、今でも涙が出てくる。
知らぬ場所はないからだ。

その場に、確かにいたであろうわたし自身の記憶が
ジクジクと痛みだす。

今被災地におられる方々は
ご自身の明日を取り戻す為に突き進んで欲しい。
他は考えなくてもいい。

余裕のある人間が考えなければいけない。
日常に呑み込まれ、あの風景が当たり前になってしまわないように。

その膨大な距離感を感じさせてくれる映画でした。

東京に近づけば近づくほど、車も人も増えていくエンディング。
そして原発の在り方。

人って何だろう。
同じ問いかけと、鳥のさえずりだけが
耳に残りました。

日本を巡回中です。

http://mujosobyo.jp/trailer.html


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2011/07/20 13:04
西の魔女さん★コメントありがとうございます。

過疎なの。過疎地だったってことを
忘れていた気がするんです。

もともと都会ほど人脈も企業もない場所だったから
個人でやるには、ほぼ無理だってことなんだろうなぁと。
そして、人がいない。
あまりにも広大な土地面積の被害なんです。

絶望的な状態なんですが
なんでしょうね。。映画を観て思うのは
それじゃないんです。。

そこに自然はあるんです。
人間の為にではなく、自然とはそういうものだ。
その中に人間が住まわせてもらっているという共生の感覚が
感じられたというのかなぁ。。
空気ですね。。

その感覚が失せてしまった都会人の
特に街育ちのわたしには、ある種の驚きがあったんです。

人の暮らしとは何だろう。。
その問いが生まれてくるんですね。
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2011/07/19 12:57
どんなに絶望しても、鳥は鳴いている。
急がなきゃならないこともあるんだろうけど
今は、鳥のさえずりを聞きながらだね。

現地に余裕があるはずもないんだから
悩みや希望や行く末の不安や
とめどなく湧き出す思いの受け皿がしっかりしてなきゃならないと思う。

鳥の声を聞きながら、振り返ればそこに
ゆったりと広げられた国家の支えの掌が、大きく上に向けられて待っていたら
どんなに安堵するでしょう。

それが、無い物ねだりなのが、なんとも残念です。
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2011/07/18 23:22
honeyさん★コメントありがとうございます。

あぁ…伯母さま、お亡くなりになられたのですね。。
お葬式というより、人の死が日常的になってしまった
現実があるのだとお察しします。
ご冥福をお祈りします。

神戸もそうなのですが、日本は四方を海に囲まれた島国。
海に近い平地に街が出来、後は山になっている。
そんな地形が多いですよね、

今回の巨大な津波は、平地をすべて奪い去ったようです。。
あの距離の広大さは尋常ではない感覚が残りました。
車で実際に走ってみないと、その被害は決してわかりはしないと
現地に行かれた方が言われています。

津波の人的被害を免れたのは、過信せず避難した町や村だったそうです。
大きな堤防を造り、水門などを造り、まさか超えはしまいと過信した地域の
被害が大きかったと。。自然への惧れる心を忘れないこと
それこそが自然災害に見舞われやすい地域の、自然と共生して行く街の在り方だとも
玄侑さんは言っておられたように思います。

原発とは何だろうと、わたしは今思っています。
危険すぎるものを人は造ってしまった。
その災害の果て、こうなることは明白だったのに一部の人を除き
誰もその可能性を考えなかった。
その違和感が、自分をも含めて拭いさることができません。。

原発撤退を決めた国ですね。
フェアな視点だろうと思えます。。
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2011/07/18 23:11
カルカンさん★コメントありがとうございます。

ニュースで報道されている映像には、どこかに人が映ってますよね。
それが全くない地域がほとんどだというところが
衝撃でした。

救援の人も、復興活動を行っていると思われるトラクターなどの機器も
全くない静けさだけがあるんです。瓦礫と鳥の声。海と山と。

それが真実に近いのだろうと。。
関西に住んでいるわたしには東北はやっぱり遠いです。
一度も行ったこともないし、その距離感と意識の違い
今回の震災はどういうものだったのかを、ほんのさわりだけ
教えられたような気がしました。。

まさに人にとって文明とはどうあるべきなのかを
問いかけられている災害で会ったように思えてきます。
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2011/07/18 21:18
前にも書いたかもしれませんが、
父の故郷が石巻で、
ニュースでは復興しつつあるように報道されているのかもしれませんが、
現実にはあの規模の地方都市の旧市街がほぼ全滅してしまったので、
都市計画からやり直さなくてはならないに違いありません。
もっと狭い地域や、高台のある湾などは逃げ場がありますが、
福島県北部から宮城県南部にかけては平野が広がっていて、
逃げる先もないのです。
津波は車よりも速いですし。
そもそも地震で道路が壊れていたりして、まともに走れない……

伯母は避難生活の疲れか、4月の末に亡くなりましたが、
いまだにお葬式どころではないのです。

こういったことにプラスして原発問題。
今回の地震では、極端でもなんでもなく、
東北日本太平洋側の、半分近くが失われてしまったのです。

急速な復興の前に、
地域にあった都市計画と、
着実な町づくりが必要だと思っています。

原発は、ツイッターでも見ていない限り、
情報を追うのが難しくなってしまいました。
どれが正しくて正しくないのかも、よく分かりません。
でも、確からしい情報、というのもあるに違いありません。
牛肉問題が明らかになったのも、
誰かが情報をリークしたからかもしれなくて、
同じようなことが他にもたくさん起きているのかもしれません。

お出掛けするときにマスクしようかどうしようか決める目安にしているのは、
やはりこのサイト。なぜかドイツ。
http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif

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2011/07/18 18:48
ニュースなどで報じられてきた
場面以外の場所など淡々と映像
として流れていくですかね。。。
下手な言葉を添えるよりも、そ
のままを見て、感じたことが全
て といったメッセージを感じ
る映画みたいですね^^
震災以降すこしづつ日本の伝統
的なことが、見直されてきたよ
うなきがします。。
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2011/07/18 01:26
KINACOさん★コメントありがとうございます。

仮設住宅ができても、入居を拒否している人がいるんだそうです。
電気代や食費などが実費になるからと。。。
難しい問題です。
本当にささやかなささやかな暮らしをしていた人たちが
再建の道を絶たれてしまう。。

それにね、原発施設で働く人々の情報も
めっきり入ってこなくなって、これも気になっています。
誰かが命がけで後始末をしていることを
人は忘れたいと思っているかのようで。。。

故郷の存在は大きいよ。
ジャン・ギャバン主演の『望郷』全く分からなかったけど、小さい時。
今なら痛いほど分かる。

米国のCNNニュース映像で神戸の街が燃えている映像で
どれだけ故郷を愛しているのか
思い知らされた。

帰る場所は心のよりどころ。。
国内難民を出す。
このことに、わたしは涙してしまいます。。
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2011/07/18 01:20
歌穂さん★コメントありがとうございます。

まず驚いたのは、人がいなかったことです。
瓦礫と山と海と、鳥の鳴き声。
凄惨とは逆の、のどかさです。
自然の厳しさと隣り合わせの暮らし。
それをまざまざと肌身で感じる映像でした。

視覚から入る情報の確かさでしょうか。
それほど広大な被災地であり
かつ、過疎地でもあったのだと。。
知っているはずなのに、知らなかったことを
思い知らされました。

そして、人の暮らしとはなんだろうとも。

暑い夏ですものね。
被災者の声も遠のいて行く日常に
少しばかり懸念があるんです。
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2011/07/18 01:15
アッシュさん★コメントありがとうございます。

あらまぁ。。日中、外におられたんじゃないですか^^;
外は灼熱ですよ。。目が眩む。。
水分を摂って、身体を冷やし、休んでくださいね。
無理しないで^^;;

ニュースメディアでは伝わらない現実
いわば空気感、真実、現実を記録せねばならない
そんな思いがあるのだと感じました。

通常モードになっていくことは、仕方がないと思うんです。
みんな、たやすい日常を生きている訳ではありません。
それぞれの生活があって、それを守らねばなりませんから。

たぶん、行政の力がもっと発揮されなければ
民間が動けないんだろうとも思います。
実際は何もできないことが、多いのが現実。
哀しいけれど。。

アッシュさんも無理しないでくださいね^^
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2011/07/18 01:06
おおくま ねこさん★コメントありがとうございます。

被災地にお住まいの方は、自分のことに専念して良いんだと思います。
いろんな意味で、共に泣き悲しむ時期が過ぎれば
みんな同じではいられません。
とても辛いことですが。。

最終的に社会的弱者が取り残される結果になってしまいます。
それよりもコミュニティとして成立していた生活の場が
元に戻せないという痛手を背負ってしまいます。

今にして思えば、自分の家の再建もあったので
仮設住宅暮らしを余儀なくされた叔母に会いに行ったのは一度きりでした。

もとあった家からずいぶん遠く、雨が降るとぬかるむ土の上に建っていました。
叔母も家を再建できたかれど、苦労が重なったのか、夫が先立ち
晩年、病になって亡くなってしまいました。

みんなどこかしら、痛みを引き摺って生きてきたんだと思います。
それに触れるのが、重くて無口になっていったのでしょう。

暮らしを取り戻す。笑っていいと思える。
そんな生活を建て直せねばなりません。
それでも心の空白は残り続けます。

命の喪失とは、それほど重いのだろうと。
哀しみの重さも計りしれません。

どうしようもないけれど、
それぞれの生活は、その人自身が取り戻すしか
方法がないのが現実です。

被災地ならば、現実を見つめすぎるのも
潰されかねない気がします。

起こってしまったことは変えることができないですもんね。
元気な人は前に行かねばなりません。
そうでないと、地域が活性化できないしね。。

政治の混迷ぶりなど
距離が離れれば離れるほど
人の意識が薄くなるのも仕方がないのだと
わたしは思います。

それがあるからこそ
生きてゆけるのだとも。

世界で起きた惨事も忘れられるごとく
時間は前にしか進みませんね。

それでも、ずっと先に取り戻せないほどの打撃を受けた
広大な大地が手つかずのまま残されていることを
忘れずにいたい。

距離の分だけそう思うので
本当は暗くなるので観に行きたくなかったんですが
難しい宿題を課せられた子どものような気持ちで
足を運んだというのが本当のところです。。

でもね、観てよかった。
空気がわかりました。



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2011/07/18 00:45
生きるという基本的なこと
それを追わねばならない日々。。。

東京は、大して近い距離でもないのに、放射能の恐怖を口に出す。
もっと危険だろうヒトは、もっともっと基本的な望みだ。

福岡に帰ってきて、ここではないと思い、熊本に帰って
やっと安心し、被災地を想い、どこに帰る場所があるんだろう。
すっとずっと流浪の民のように、自分を思ってしまうのではないかと
そうふと心がいたんだ。

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2011/07/17 22:41
もうそんな記録映画が公開されてるんですね。
被災地域の広さが感じられますね。

4ヶ月が過ぎてでも、遅々として進まぬ復興。
まわりの自然は確実に時が過ぎてるのに、人は止まってるような気がします。
アバター
2011/07/17 20:30
本日も軽い熱中症で、頭痛中ですw
記録映画なんですね。
事実をただ、ありのままに。
その場の景色を切り取って提供。
って、スタイルですね。
あれから4ヶ月以上経って、被災地でないところのヒトは、俺を含めて平常に戻っちゃってますよね。
被災地はまだまだこれからなんですけど。
思い出したように、コンビニで募金してます。
そんぐらいしかできんですから。
ま、黒猫手毬さんも、暑さにやられないように、ご注意ですーw
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2011/07/17 17:52
本当に暑くて、体力も気力も奪われがちな日々ですね。
そんな中でも、現実を見つめる映画を見に行く黒猫手毬さんはすごいなぁ。
私は、いつも現実から逃げてばかりだ。

映画のエンディングの様子、実感として判る気がします。

ご存じのように我が家のあたりもがれきの山にはならなかったけれど、少なからず被害はあって、まだ目に入るあちこちの屋根にブルーシートがかかったままです。

先日、久しぶりに電車で東京に出たのですが、車窓の景色の中からそのブルーシートの数がだんだんとヘリ、やがてなくなり(都会には瓦屋根の家屋の数が少ないと言うのも理由の一つなんでしょうけど)、そして電車は都会の終着駅へと滑りこみました。

同じ沿線を地元から北上すれば、逆にドンドンとシートが増え、やがて瓦礫を目の当たりにするのですよね。
1本の道、1本の線路で繋がっているはずなのに、今まで以上の距離をどちらにも感じる日々です。




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