オトシブミ ①
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/01 16:03:51
大人って、どうしてあんなに遅くまで起きていられるんだろう。
僕は毎晩、夜8時になると眠くなり、9時には眠ってしまう。
父さんは毎晩、野球中継を見ては大騒ぎしている。
何であんなに夢中になれるんだろう。
しかも、汚い言葉ばかり言ってるし。
「父さん、僕もう寝るよ。」
「何だよ、夏休みなんだからたまには起きてろよ!父さんと野球観よう。」
「やだよ、眠いし、父さんお酒臭いよ」
「けっ!かわいくねー。とっとと寝ちまえクソガキがっ」
「・・・」
「まーだ起きてるのか、野球みねーなら早く寝ろ!バカ、ボケ、カスッ!」
「カスって・・・」
いつにも増して口が悪い。
今日は東京乳酸菌飲料野球部が負けているのだろう。
全国区新聞社野球部や、関西ローカル電鉄野球部が勝っていると、もっと機嫌が悪くなる。
僕は父さんの機嫌が良くなる様に、乳酸菌飲料野球部に勝って欲しい。
切実な願いなのである。
こんな父さんなのだが、まだ10歳の僕は父さんがいなければ生きてゆけない。
6年前に、母さんは病気で死んでしまったから。
そして父さんも、口ではあんな事言ってるけど僕を愛してくれている。
その事は決して口には出さないけど、僕は良く知っている。
いつも僕の事を優先して考え、行動してくれている。
口が悪いのが玉に瑕だけど、それでも僕は父さんが大好きなんだ。
その夜、僕が布団に入るとまたあの口調で父さんがやってきた。
「おい!望(のぞみ)!明日わかってるだろうな、ちゃんと準備は出来てるんだろうな!」
「うん、出来てるよ。」
「てめーゲーム機なんかもってったら、俺がオークションで銭にしてやるからな!」
「わかってるよ。持って行かないよ・・・。」
明日から父さんとキャンプに出かける事になっていた。
夏休みの予定として、父さんが唯一組んでくれたイベントだった。
あまり行きたくは無かったけど、父さんが張り切っているので仕方がない。
たった一泊のキャンプだけど、次の日は母さんとの思い出の場所に行くと言っていた。
僕にはそこがどんな場所なのか、父さんは言ってくれない。
行けばわかるさ・・・
僕はそう思い、その夜も9時に眠ってしまった。
翌朝早く、僕たちは出発した。
車に荷物を載せ、群馬県の山間に僕たちは向かった。
「ねえ父さん、どこのキャンプ場に行くの?」
「キャンプ場?いかねーよ、そんな所!自然の川でキャンプをするんだ。」
「え?じゃあ昼ご飯は?コンビニで買うの?」
「バカかオマエは!何しに行くんだ?キャンプだろが。テントを張って墨を起こして米を炊くんだ。それ以外は現地で調達するんだ!」
「へ~サバイバルだね。濱口みたいにするの?」
「こら、アイツと一緒にするな!ヤラセだろ、ありゃ!」
車は山道を進み、途中車一台がやっと通れる道を下って行った。
やがて水が流れる音が聞こえたと思ったら、小さな川が見えてきた。
川原へは車がようやく入れる場所があり、その横にテントを張る。
ここ一週間以上は雨が降ってないし、明日まで雨の心配も無いらしい。
だから鉄砲水などの心配も無いし、降雨による川の増水の心配も無い。
父さんはそういった危険までしっかり調べていた。
テントを張り終えると、父さんは長い棒みたいなものを車から降ろしてきた。
「望、これから食料調達に行く。ついてこい!」
そう言うと、棒を担いで山の中にさっさと入って行った。
僕は慌てて父さんについて行った。
慣れない山道を、必死について行く。
父さんはさっさと僕を置いて行く。
しかし、ある程度距離が出るとどうしてか僕は父さんに追いついて来る。
きっと父さんが、ペースダウンしてくれているのだろう。
そしていつもの口調だ。
「コラ!早く歩け!このグズ野郎!めんどくせーからオマエ埋めて帰るかな。」
全く父とは思えない言動だ。
必死に後を追いかける僕は、ようやく父さんが立ち止まる場所に追いついた。
はぁはぁと息を切らす僕に、父さんは言った。
「あの葉が自然薯の葉だ。」
父さんが指差した場所は、他の木の葉が生い茂っていて、どの葉が何の葉なのかさっぱりわからないでいた。
父さんは荷物を降ろし、今度はその葉が生えている場所を探し始めた。
僕も一緒になって探した。
僕は足元に落ちている、葉っぱが丸まった物が気になった。
ちょうど僕の親指の先ほどの大きさに、葉っぱが丸められて落ちていた。
「父さん、何だろう?コレ」
「あ?そりゃアレだ、オトシブミだ。」
「オトシブミ?」
10歳の夏、僕は父さんと2人きりで山の中に居た。
本当に僕は、知らない事がたくさんあるんだと実感した日だった。
つづく
すみません><
気を使っていただいて・・・。
いえ、ワシもこんなもんっすよ。。。
ええ、次の記事をどうぞご覧ください。。。
はーい、続きUPしましたよ~!
ええ、もちろんフィクションですよ~。
やっぱ私の持つ良き父親像ってのも、こういった感じのワイルド系なんですよね。
最後まで生き残る術を持つ、サバイバル術を備えた逞しさが、父には必要だと思います。
「優しさ」ってのは、何も上辺だけではなく、どんな形であれギリギリな所で垣間見れる優しさも
それが伝わりさえすればいいって思います。
そういった形の優しさであれ、受け取る側の感性が乏しければ、伝わる事はありません。
息子には、そういった感性を研ぎ澄ませて欲しいなって思います。
頑張れ乳酸菌飲料!今年は悲願の優勝だ~!
口は悪くても、色々と体験させてくれる父親って素敵だと思いますよ。
優しいだけでアウトドアで炭も扱えない父親ってどうなんだろうって思います。
頑張れ、東京乳酸菌飲料野球部!!
一昔前は、Tはそれほど気にならなかったんですけどね。
最近のファンの加熱振りは、ちょっと嫌気がさしますな。。。
ええ、父ちゃんは頑張ってナンボですからねぇ~
ええ、口は悪いが人はいい・・・
実はモデルは犬のお父さんだったりして。。。
次回、お父さんからオトシブミについての説明があるはずです!
ええ、赤い野球部は2番人気らしいです。
乳酸菌チームと同じ匂いがしますよね、赤チーム。。。
オトシブミ・・・
詩的ですかね?
ま、その辺りも次回、お父さんが説明してくれるはずです!
招き猫ワールドってどんなやん!
てか、名前だけ聞くと何か楽しそうな場所ですねぇ・・・。
全部で4回を予定しております。
お楽しみに~。
はい、その通り。
完全フィクションですよ~!
私はこんなにガラが悪くありませんから。。。
続きは明日にでもUPいたします!
どんな想像をしたのかなぁ?
ま、ちょっと長いので、お暇な時にでも読んで笑ってやってください。。。
だからフィクションだってば~!
ま、当たらずしも遠からずと言う感じで・・・。
明日、続きをUPします!
いえいえ、フィクションですから~。
でもまぁ、モデルになっているかもです。。。
ええ、この続きでオトシブミの説明もしますから。
楽しみに待っていてくださいね。
ええ、アウトドアはいいですよ~。
楽しいし、色々と勉強にもなりますから。。。
ガールハントは・・・私の専門外ですので、教えられないですね。
どうか、勝手に取得して欲しいですねぇ。
な~に言ってるんです?
完全にフィクションですってば。
実在する個人、団体とは一切関係はございません。。。
オトシブミ・・・
調べたんだぁ~真面目だねぇ~。
父ちゃん頑張れ♪
オトシブミってなんでしょう。
オトシブミ・・・何か詩的な響き!
続き、楽しみにしてます♪♪
情景が目に浮かびます・・・。
続編。。。また読みにきます^^
続きが読みたいです^^
続きまってます!
東京乳酸菌飲料野球部はスワローズですよね?
初めてききました(@_@。
たくましく育ちそうな感じですね
でも、アウトドアって憧れちゃう~
ボーイスカウトとかガールハント・・じゃない
ガールスカウトとか・・・何か生きていく為に
役だちそうだもん^^続き待ってま~す(゚◇゚)ゞ
「オトシブミ」って本当にいる昆虫なんですね。
思わず・・何かと思って調べちゃったww
続き・・楽しみにしてます^^