オトシブミ ②
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/02 11:51:46
「あった、自然薯のつるだ。」
父さんが声を上げた。
そこにはハートの様な形をした葉っぱが付いている、植物のつるが地面に刺さっていた。
父さんは用意してきた長い棒のような物で、穴を掘り始めた。
棒の先には、ちょうど羽子板のような形をした鉄が付いていて、更にその先は刃物の様に鋭く研がれているようだった。
父さんはその棒で、どんどん深い穴を掘っていた。
しかし、父さんが彫っている場所は、さっき見付けたつるとは50センチほど離れている所だった。
「ねー父さん、じねんじょってなーに?」
「芋・・・だ。」
「お芋?焼き芋にするの?」
「バカか!さつまいもじゃねえよ。とろろ芋だ。お前好きじゃないか、とろろご飯。」
「え?とろろ芋ってこんな風に採るんだ!」
「いや、売ってるのは農家が育ててるヤツだ。コレは自然薯って言って天然の芋だ。最高級だぜ。」
「そうなんだ・・・じゃあ何でそんなに離れている所を掘るの?」
「自然薯ってのはな、長い芋なんだ。土の中でどんな風に曲がってるかわからん。だからまずは少し離れた所を掘って、それから芋に近付けて行くんだ。そうしないと芋を折ったり傷付けてしまったりするんだ。」
「・・・ふーん」
「望!お前もやってみろ、深く深く掘るんだ!」
羽子板のような刃の付いた棒で、土を深く掘って行く。
少し掘ると僕はすぐに疲れてしまい、父さんに代わって貰った。
やがて穴を芋づるの方に近付けて行き、次第に芋が姿を現す。
傷付けぬ様に、折らぬ様に、慎重に、そして丁寧に・・・
僕たちは1時間ほどかけて、1メートルはあろうかという大きな自然薯を手に入れた。
「やった~!」
2人とも汗と泥にまみれた恰好だった。
苦労して掘った自然薯を僕に持たせ、僕たちはキャンプ地に帰ってきた。
実は僕には、もうひとつの収穫物があった。
芋づるを見付けている時に拾った、オトシブミという葉っぱが丸まったものだ。
僕は2つの収穫を、大切に持ってキャンプ地に帰ってきたのだ。
僕たちはテントからタオルを持ち、川の水で濡らして絞った。
汗と泥にまみれたシャツを脱ぎ、タオルで身体を拭いた。
替えの下着に着替え、新しい短パンを履いた。
僕は飯盒で米を研いだ。
米研ぎはいつも家でやっているから、得意である。
父さんは墨を起こし、今日の収穫物の自然薯の皮を剥いた。
飯盒を炭火にかけ、その間にすり鉢で自然薯を丁寧にすった。
すりあがった自然薯の半分に、めんつゆ用のだしで味を付けた。
残りの半分は、火にかけた鉄板に油をしいて、お好み焼きの様に焼いた。
もう一品は、自然薯をお刺身のように切り、そのまま生醤油を添えた。
ご飯が炊き上がった。
今夜のメニューは、とろろ芋、自然薯の鉄板焼き、自然薯のお刺身、の3品だ。
僕はご飯にとろろをかけて食べた。
鉄板焼きはおしょうゆを付けて、かぶりついた。
お刺身も、生醤油で食べた。
どれもとても美味しい料理だった。
食べている途中、カポッという聞き慣れた音がした。
父さんがカップ酒を開ける音だった。
「あ、父さんお酒持ってきたの?ずるい!」
「あ、バレたか・・・じゃしょうがねーや、お前も、ホラ!」
父さんは僕に炭酸飲料を放ってくれた。
「父さん、ありがとう!」
「おお!」
「ねー父さん、今日は野球聞かないの?」
「ああ、今日は俗世間を忘れる日よ。」
「ふうん・・・あ、そーだ、さっきのさ・・・コレ!」
「なんだ、オトシブミかぁ、持って来ちゃったのか?」
「うん、後で父さんに聞こうと思ってさ。コレ、何?」
「オトシブミってのはな、昆虫の名前だ。甲虫類でな、カブトムシみたいに硬い羽で覆われてるのが甲虫類だ。オトシブミはその仲間だ。」
「え?コレがそんなムシなの?」
「いや、それはな、オトシブミって虫の卵が入ってる揺り篭だ。この虫のメスはな、卵を産む時にな、そういう揺り篭を作ってその中に産卵するんだ。そしてな、孵化した幼虫はその揺り篭の葉を食べて成長してそのままさなぎになる。この虫はな、母親が作ってくれた揺り篭の中で、成虫になるまでずっと暮らすんだ。」
「そーか・・・なんかいいなぁ、羨ましいな、オトシブミ・・・」
僕は迂闊な事を言ってしまった。
たった一人で僕を育て、こんなにも愛してくれてる父さん。
それでも僕は、母さんの愛も欲しいと思っていたなんて・・・。
そんな事を思っていると、父さんは僕に突飛な事を言い出したのだ。
「おい、望、まだ眠くないか?コレから母さんに会いに行かないか?」
つづく
ええ、そこは続きをご覧いただければとっ!
食べ物の大切さと感謝を教えるのは、父親の役目かと思ってたりします・・・。
最後にビックリのセリフ。
子供の時にとれたて食材に触れられるって大切だと思う。食べ物の大切さも分かるし。
え?顔だけ?
そそ、まるで仙人の様に、俗世間や煩悩を忘れて過ごす事が大事です(爆
オトシブミの件はこの先も出て参ります。
この2人の2日間に、オトシブミがどの様に関わってくるのか・・・
是非とも次回も読んでくださいね!
美味しいですよ~自然薯。
今回ももう少し触れようと思ってたんですけど、あまり触れられませんでした。
すっただけの自然薯は、本当に箸で摘めるんですよ!
これから望み少年は、父と一緒に大勝負をします。
おったのしみに~!
オトシブミの話いいですね。
虫も母親の愛情ってあるんだな~
食べてみたい~vvv
これからどうなるんでしょ~??
続き楽しみにしてます!
大自然の美しさ、大きさ、醜さから、父と子が何を掴んで行くのか・・・
父との絆を深め、母の愛を再確認し、少年が一歩成長してゆく姿が描ければと思っています。
オトシブミは私が幼い頃昆虫博士だったもので、習性はよく知っていたりします。
ゆりかごという表現も、昆虫図鑑に書いてあった事なんですよ。。。
続きをお楽しみに~!
普段はゲームばかりやってる少年を、父親がちょっと無理やりアウトドアに連れて行っている設定です。
丸大ハムのCMの様に、たくましく成長して欲しいですね~。
少年が父の愛を再確認し、不思議な体験によって幼い頃に死に別れた母と触れ合えるという物語にしようかと思っています。
続きをお楽しみに~!
残り2回となりました。
あ、ここで目頭とか言ってはいけませんよ~。
最終回は思い切り泣かせてみたいと思います。。。
青木ねぇ・・・
追い込まれると当てるだけのバッティングになっちゃってますね。
それと、前のようにカットしていい球を待つ姿勢が失われているようです。
彼らしさが戻ってくるまで、もう少し時間が必要でしょうね・・・。
自然薯、美味しいですよね~。
あの粘りは、長芋等とは比べ物になりません。
香りもアクも強いので、料理次第では美味しくなりますね~。
望クンはウチの息子よりも少々逞しく書いてみました。
好奇心に至っては、息子と同等の物を持っていると思います。。。
女性の親子関係は、よく友達同士になるって聞きますね。
男性の親子はやはり、師弟関係なんでしょうか?
私の父は尊敬できる父ではなかったので、勝手に理想を追って見たいと思います。
自然の中で俗世間を忘れる・・・
父と子の絆を深めれそうで
オトシブミ・・初めて聞いたし、
ゆりかごって表現きれいですね
続き楽しみにしてます^^
っていうのが、浮かんできました・・・^^
息子さんは、お父さんの姿を、大きく思っているでしょうね^^
これから、息子さんが、もっと大きくなるにつれ、
男の子は、男親を、ものすごく意識して育っていきます。
いい関係が築けていて、微笑ましく、羨ましく思います。
ちょっと目頭が熱くなってきた・・・
いいな~、父と息子^^
キャンプに連れて行ってくれるお父さんって羨ましいな。
望くんもたくましく成長しそうなお話、続きが楽しみです~~(^ー^)ノ
オトシブミ、調べてみます~
母親と女の子ならどんな物語になるでしょうか?
今回のはね、父と子とのふれあいの中で死んだ母の面影を、子がちょっと不思議な体験の中で垣間見る。
そんな感じで展開して行きます。
最終日に子供が体験する大勝負に、母がどのように関わるのか・・・
楽しみにしていてくださいね!
って、、私・・まだ全然見えてこないんだけどwww
お母さんに会いにどこに会いに行くのかしら?^^
続き待ってますね~♪
いえいえ、ウチの父はこんな事を教えてくれる父ではなかったですね。
ギャンブルは教えてくれましたが・・・。
芋掘りの技術などは、私が叔父貴に教わった事でございます。。。
wildで素敵なパパさんです。