伝えたい言葉9 中編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/12 02:21:46
パタン。
大きな音を立てないように会長室を出た綾奈は先に部屋を出ていた黒川の視線を受け立ち止まる。
「あの…。」
「分かっているとは思うが、会長の戯言に付き合う必要はない。君は会長のペースに乱されずに仕事をしてくれたまえ。今日は私はこのまま社長のに同行させてもらうことになっている。TH物産との会食も多分間に合わないだろう。今日は君一人になってしまうがよろしく頼む。」
「私、がですか?」
「TH物産の会長とうちの会長は大学の同窓生だから、気心が知れている。心配はいらない。―――それより、会長が会議に出席するよう万事整えてくれ。君に気を付けてもらいたいのは、会長が脱走しないようにしてもらいたい。会長室の裏出口には鍵をかけている。会長が部屋から出るには今私たちがいる秘書課を通らなければならないので、大丈夫かと思うが。」
実は以前、会長室の裏出口から会長が仕事を抜け出したという前歴があるのだ。そのことは入社早々綾奈は黒川に説明を受けていた。それ以降、会長室の裏出口の鍵は黒川が管理しているのだ。
本当なら今回も黒川自身がTH物産の会長との会食に同席したいのだろう。だが、そういうわけにもいかないようだ。
「わかりました。10時に会議、12時に会食ですね。」
「あぁ、その後の社長との会議には同席できるがそれまでは、君一人だ。」
綾奈が自分の仕事用の手帳に書き込むのを待ってから黒川は自分の席に着いた。
(―――ふぅ。結構大変だわ、この仕事。)
それは綾奈が覚悟していた『大企業』に勤めるからではないところが少しおかしかった。
綾奈が会長付きになってから毎日のようにある『今日はどこに行こうか?』コールには少し辟易しているのだ。それがあるからと言って他の秘書たちに変な目で見られることは決してないのだが、その時に同席している黒川の温度が一気に低くなるのがいただけない。それに、そんなことを言われても綾奈自身が困ってしまう。そのことを知っているくせにわざと言う毅は心底意地悪だと思ってしまう。
「…でも、会長。私の言うことなんて聞いて下さるのかな?」
会長室の入口でぼさっと立ったままつぶやく綾奈の肩をぽんっと叩いたものがいた。綾奈の教育係の小山真紀だ。
「ほらほら、ぼさっと立ってないで席に座りなさいよ。」
「あ、小山さん。」
真紀のその瞳はすごく楽しそうだ。
「―――大変でしょ?会長の専属秘書は。」
「はい、思ってたのとは全然違いますが・・・。」
そう正直に答える綾奈に真紀はますます楽しそうだ。
「まぁ、あそこまで会長がかまっているのも珍しいけど。」
「そうなんですか?」
「えぇ。会長の愛妻ぶりはすごく知れ渡ってるからみんな何も思わないけど、でなかったら変な勘繰りをしちゃうくらいかも。」
笑いながら言う真紀に綾奈はふぅ~っと大きく息を吐いた。
「ですよね。」
下手をすればセクハラではないかと思うのだが、特に嫌な気はしないので(大変困るのだが)とりあえず放っておく。
「っていうより、お気に入りのおもちゃを見せびらかしたい子供みたいな心境でしょ。」
「おもちゃ、ですか?」
一気に疲れた顔になる綾奈に真紀はくすくすと笑い返した。
「ま、たとえは悪いけどそんな感じに見えるわ。」
その言葉には大きく頷くものがある。視線を斜め前に向けると、苦笑をする雅也と目が合った。真紀との会話が聞こえたのだろう。と、同時に何故かすまなそうなしぐさを見せた。
(?なんでだろう?)
今の話を聞いたところで、雅也がすまなさそうな視線を返す謂われはないはずだ。

























いつもコメントありがとうです。
会長は過去に会社を抜け出したどころか海外逃亡をしたことがあるんです。
その分、息子である社長が大変な目にあったりしてます。
小山さん…。
助けられないんですよ、やはり相手は会長なので;;
会長と黒川さんの板挟み、
綾奈はホント大変な目にあってます…。
過去に会社を抜け出した前科があるんですか!
おもしろすぎます!!w
っていうか
小山さん助けてくれないんですか?
会長が綾奈さんの言うことを聞くとは思えないですよ・・・。
雅也さんがすまなそうな仕草をするってことは・・・
ますます会長との関係が気になるところですね!
会長と黒川さんの板挟みで
気の毒な綾奈さんですが
また続きを楽しみにしています☆