Nicotto Town



伝えたい言葉10



 「―――珍しいわね。黒川主任も同席でKisaragiコンツェルンに行くなんて…。」
 綾奈と同じように雅也たちの背中を見送っていた真紀がぼそっと呟いた。
 「そうなんですか?Kisaragiコンツェルンって大企業ですから、当然じゃないんですか?」
 「え?あ、そっか。澤井さんは知らないのよね。―――滝野財閥とKisaragiコンツェルンは親戚関係なのよ。」
 「え?そうなんですか?」
 「えぇ。滝野社長の奥様がKisaragiコンツェルン総帥のお孫さんなの。」
 滝野社長の奥様、つまり先日会った玲が、ということになる。
 「玲さんが、ですか?」
 「『玲さん』って、知り合いなの?」
 心底不思議そうな真紀の言葉に綾奈は躊躇いつつも頷いた。
 「―――はい、先日ちょっと…。」
 「あ、そうなのね。ま、とにかく。親戚関係なのにわざわざ主任がついていくほどの用事って何なのかしら?いつもKisaragiコンツェルンに行かれる時は龍野くんだけなのに。」
 (ってことは、今回は特別な用事ってことよね。この間お会いした玲さんからは『夫婦仲が危機』という感じは受けなかったんだけど。)
 変に勘ぐるわけではないが、縁戚関係にあるのにわざわざ秘書課主任がついていくのである。普通の用事ではないのだろうか?
 「まぁ、とりあえず、私たちは自分の仕事をしなきゃね。澤井さん、もう少ししたら会長が会議にご出席されるのでしょう?」
 「あ、はい。―――会議室の準備をしてまいります。」
 会長が出席する会議の会議室の準備は綾奈の仕事になっていた。滝野コーポレーションには会議室は大小合わせて6部屋用意されている。その時々で使う部屋は勿論違うのだが、人数によっても机の配置を変えているのだ。
 今回は重役のみの会議なので小さい会議室でいいのだが、普通の配置では毅が「皆の顔が見えない」というので、四角形の配置を好むのだ。
 「いってっらっしゃい。10時近いから、会議室の机の配置を変えたらすぐに会長をご案内しなきゃいけないわよ。」
 「はい。行ってきます。」
 綾奈の返事に真紀は頷くと、明日の会議で使う資料を作成するために視線を再びコンピューターに戻した。綾奈は会長の毅付きの為資料の作成にはタッチしていないが、「いつか小山さんみたいに重要書類を任されるくらいになりたい」と常日頃思っている。
 綾奈にとって真紀は、理想の先輩像なのだ。

 
               *       *       *      *      *


 「ん。これでいいかな。」
 綾奈は第2会議室の机を毅の好む四角形に配置し、ついでに部屋の片隅に置かれている花の水も変えた。
 9階にある会議室は、以前掃除に来ていた時には訪れることのなかった部屋だ。
 思わぬ形で秘書になり、仕事を少しずつ任されるようになってから入ることを許されたこの会議室の一部屋一部屋に豪奢ではない花が部屋の片隅に置かれている。
 殺風景な部屋を見て、綾奈が黒川に言って花を生けるようにしたのだ。
 綾奈が直接会議に出ることはないのでわからないが、時には殺伐とした話をすることもあるだろう。そんな時に部屋の雰囲気だけでも和やかな雰囲気であってほしいからだ。
 今日は重役ばかり十数名の出席と聞いている。なので、本当に小さな小さな四角形に机を配置にした。本当にこんな人数で四角形に配置する必要があるのかと思うのだが、何事にも鷹揚な毅がこれだけは譲らないのだ。
 (でも、嫌いじゃないかも。)
 それはちゃんと相手の顔を見て話をし、話を聞こうという姿勢の表れだ。それが分かるだけに綾奈は会議のたびに毅の好む形へと机を移動するのだ。

 もう一度確認の為に会議室を一望する。その時部屋の四隅にもほこりが落ちていないか確認してしまうのは以前していた仕事のなごりかもしれない。
 「よし、完璧。」
 部屋がきれいに整ったのを確認してから綾奈は会議室を後にする。
 そろそろ、10時近い時間。これから始まる会議に出席してもらうために、毅を迎えに行く時間になっていた。
 エレベーターで上がろうかとも思うのだが、9階から10階へと上がるだけなので階段を使う。
 (運動不足だもんね。)
 コンビニとビルの掃除をしていた以前と滝野コーポレーション会長の秘書では運動量が全然違うのだ。ちょっとした運動にはなるが、そんなことに気を遣う綾奈であった。

#日記広場:自作小説

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2011/08/25 00:11
沙月☆しゃむさん

いつもありがとうございます。
綾奈は上司には恵まれてないんですけど(?)
ちょっと困っちゃたん上司なので
その分、同僚に恵まれてるのかな('v'*)♪
次回も楽しんでいただける内容をお届けできるといいんですが^^
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2011/08/24 19:01
真紀さん本当にいい方ですね。
私にとっての理想の先輩像でもあります((

今回も楽しく読ませていただきました^^
会話も自然ですし、主人公の考えや思いが手にとるように分かって・・

(なんだか、訳の分からない感想になってしまってすみません><)

次回もたのしみにさせていただいています^^
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2011/08/23 21:08
月黒さん

いつもありがとうございます。
どんな陰謀が眠っているのか、
明らかになるはずです、(多分)

楽しみにしてくださると嬉しいですw
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2011/08/23 21:05
ひゆきさん

いつもありがとうございます。
綾奈は会議室とかのセッティングとか頑張ってます。
重要書類を任されるように、なるんでしょうか(笑)

玲さんの実家なんですよ。
これがどうかかわってくるのか
楽しみにしてくださると嬉しいですw

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2011/08/23 00:30
まじめにステプお届け隊.:♪*:・'゚♭.:*・
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2011/08/21 15:29
同行させた、ということは…。何かしらの陰謀(いい意味?)が蠢いている可能性が…。
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2011/08/20 22:57
Kisaragiコンツェルンは玲さんの実家
インプットしました(`・ω・´)

わざわざ黒川さんが同行するって
なにかトラブルが起こっている?
もちろん、仕事の話・・・ですよねぇ・・・。

会議室のセッティングをして
会長を迎えに行った綾奈さん。
会長は脱走したりしてないでしょうか?(´∇`;
会議室のセッティングばかりでなく
早く重要書類を任されるようになるといいですねw

また、続きを楽しみにしています♪




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