「契約の龍」(4)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/08 14:24:22
セシリアの熱は下がったものの、まだ動かせる状態ではないので、もう二・三日療養所に入院する事になった。ということをクリスが知ると、
「ぜひともお見舞いの品を届けたい」
と、それはそれは熱心に言うので、夕食前の自由時間に療養所へ向かうことになった。
「待たせてすまない」
そう呼ぶ声に振り返ってみて、言葉を失った。
整った顔立ちなのは知っていたから、「化けた」という感想は誤りなんだろうが、やっぱり「化けた」としか言いようがない。
そこには見事なまでに可憐ないでたちに身を包んだクリスが立っていた。
ゆったりとした淡い色のブラウスに、ふんわりと広がるスカート。足元に目をやれば、ローヒールだが、華奢なかかとの靴。日が暮れると冷え込むので、長袖の上着を手にしている。もう片方の手に持っているのは……
「えーと……その服、よく似あってる、と思う。けど、その袋は?」
これが「お見舞い」なのか、派手なバラ模様の大きな布袋の口を、ピンクのリボンで括ってある。大きなちょうちょ結びの左右が不均等なのは、わざとなのだろうか?
「容器だ。お見舞いを裸で持って行ったら、汚れるだろう?」
……口調は、変わってないなー。惜しい。
療養所にはまだ案内していないので、先に立って歩きはじめる。
「あー……お気遣い、どうも。でも、そんな袋、どこで手に入れたんです?リボンも」
「王宮の、それはそれは親切なご婦人が、使い切れないほど持たせてくれた。持ち切れなかったので、王宮においてきたのもだいぶある」
「親切なご婦人?」
「マルグレーテ王妃、のことだ。子どもがいないから、っていうんで、ずいぶん可愛がってもらったんだけど…」
「けど?」
「あの人の子どもに生まれなくて、ほんとによかった、って思う」
なんだ、その感想は?王妃の子ども、と言ったら、正当な王子か王女だろうに。
振り返って顔を見ると、どうやら冗談だったらしい。顔が笑っている。
というか……笑ったとこを初めて見た気がする。
なんて言うか………めちゃめちゃ可愛い。「力あるモノ」たちがつい引き寄せられてしまうのも、わかるような気がする。
「あ…いや、冗談だぞ?確かに、着せ替え人形扱いはちょっと迷惑だったけど、親切にしてもらったのは本当だから。これが誰に由来するかわかっていたと思うのに」
そう言って胸を押さえる。その下にある「金瞳」の由来するところ…
母親が王族でないのははっきりしているから、それは父親から受け継いだもので。
クリスの父親である可能性のある王族といえば、一人しかいない。
「まあ、王妃の心中は、他人にはわからないからな。ところで、見舞いの品っていうのは?」
「内緒。そのうちにわかるだろうから、おたのしみに」
プレゼント──重要アイテム……物語の鍵をにぎるものかな。
クリス 可愛いですね♪ お見舞いの品はなんだろう わくわく☆