この世界の片隅に
- カテゴリ:マンガ
- 2009/05/09 00:30:42
好きな漫画、とお題がでているわけですが。
GWに出かけた時に買ってきていた『この世界の片隅に』(こうの史代/双葉社 全三巻)の下巻を、読んでしまった。
好きだというのとはちょっと違うけど。
読んだからには書かずにはいられない、けどなぁ。
キッツイ話だ。
戦争を扱っているだけじゃない、穏やかに、さらりと怖さが潜んでいたりする。
若夫婦がそれぞれ、相手の心通わせた相手を知ってしまい、気遣うとか、気遣われたことに怒り泣きするとか。
日常のなかの心の亀裂や、闇や、感情が、優しさやおかしさと共にひょいと提示される。
作者は『夕凪の街 桜の国』で注目されるようになったけど、評価の高さは題材のせいじゃない。
当たり前な人々の日常の哀歓、その機微を描けるからこそ、その視線で見た悲しさ・恐ろしさをも読者は突きつけられる。
作中では、広島で育ち呉に嫁いだ、絵が好きな「すず」の日常が描かれている。
下巻の帯には「完結」とあるし、物語では終戦が近づいている。
終戦が来る、ということは当然その前に来るものがあるわけで。
数日、怖くて読むことができなかった。
『夕凪の街 桜の国』とは違って直接描写はされなかったけど、いや、原爆が落ちる以前に、もう、キッツくて、しんどくて、でも日常に微笑い、人の優しさが胸に染み……
とにかくも、傑作だと思う。
終戦の日の、最後のひとりまで闘うのじゃなかったのか、いまここへまだ五人もいるのに! まだ左手も両足も残っているのに!! というすずの言葉は、つまり戦争がはやく終えられるのなら、失われなかったはずのモノを悼み、返せと求める慟哭だ。
暴力に屈しない、とつぶやいていた主人公が、暴力で従えていたから暴力に屈するのか、と「国の正義」の正体を知らないまま死にたかった、という言葉が切ない。
2回目に読んで、居なくなってしまった人、失われた風景、出会った子の過去を描き、終戦の日に泣くすずの頭をなでたのが、逝ってしまった右手だと気づいた。
やさしい。本当にやさしい。
鬼ぃちゃんも「鬼イチヤン冒険記」のなかではワニと所帯をもって幸せになっているし。
(カバー下にいたエプロン着たワニ見て泣き笑いしそうになった)
やさしさがこんな形で描かれなきゃいけない世の中には、もうなって欲しくない。
痛快さや波瀾万丈、キャラクターを求めるならお勧めしないけど、大人向きのしみじみした話、抜群に上手い漫画が読みたい人は、ぜひ。
『夕凪の街〜』とは違い、『この世界の片隅に』のテーマは「戦時下の日常」だと思います。
人類史に残る大きな惨禍だけでなく、日々死がそばに、当たり前にある、でも人々が生きて暮らしている、そんな日々の。
細やかな感情描写が出来る作家さんだからこそ、胸に来てしまうものがあります。
速度に乗って読んでしまう方なので、再読して気づくことが多かったです。
こっち方面は気力充実時じゃないと、正直辛いですが、なごみ系の話が多い作家さんです。
妻に先立たれた男性と周囲の日常『さんさん録』、ひょんなことから結婚してしまった若夫婦の話『長い道』なんかお勧めです。
ながつきさん
おぉ……出身を同じくする方がこんなにも(わたしも生まれは広島県だったり)。
流行等とは無縁の作風なのでご存じなくても不思議はないかも。
『夕凪の街 桜の国』が賞をとって、各所でとりあげられて少し知名度が上がったようです。
映画にもなりましたが(田中麗奈さんが出てた模様)、未見です。
『夕凪の街〜』の内容の濃さからして、かなりの調査がなされているように思います。
当然書名は知っているでしょうし、この作品の題名はその本から取った可能性もあるかと。
細やかな描写、優しい人々、しかしゆるぎなく現実を見つめる視線——お勧めの漫画家さんです。
機会があればぜひ手にとってみたいです。
被爆ルポを集めたもので「この世界の片隅で」という古い本があるのですが、
ひょっとして漫画のタイトルはこの本から?アマゾンで検索したら絶版でした。あらら。
祖母は対岸の島で救護に当たりました。
祖父は、何日か後に市内に行った様ですが いまだ何も話したがりません。
この県に生まれると、皆そうですが
写真、映像、語り部さんのお話、、、如何に惨いことが起こったのかを
物心付かないうちから 毎年インプットされつづけます。
「夕凪の街 桜の国」は、辛く 一読しかできませんでした。
作家さんとしてとても魅力的に感じましたし、力量にも惹きつけられました。
伝え続けなくてはいけないことだとも思います。
自分の覚悟と精神面のタフさが回復したら、読んでみたいです。
『夕凪の街 桜の国』とはちょっと違う辛さです。短距離走と長距離走みたいな。
覚悟はいるけど、それだけの価値はある作品だと思います。
読むのが辛い内容のようなので、気力体力の充実したときに、アンテナが向いたら手にとってみたいですね
夕凪の街 桜の国でも、充分に辛かったので、読むのに かなりな覚悟がいりそうですが