Nicotto Town


テスト公開


アラブの春でイランが失う影響力


 【ベイルート】シリアのアサド政権を頑強に支持しているイランが、アラブ諸国の間で急速に信頼を失いつつある。「アラブの春」といわれる民衆蜂起が中東・北アフリカ全域で高まるにつれて、イランは外交政策上のジレンマに陥っている。

 政治アナリストたちは、イランの中東における立場は、アサド・シリア大統領を支持することで一層難しいものになると予想している。だが、アサド大統領を見捨てれば、イランはシリアという足場を失うことになる。

 カーネギー国際平和財団の中東部長ポール・サレム氏は「イランは多くのソフトパワーと信頼を失ったが、シリア情勢はそれを一段と悪化させている」と述べ、「中東では新しい革命や尊敬される英雄が登場しており、イランは過去のものとなった」と語った。

 反政府活動家によれば、シリアでは30日、治安部隊が各地でデモ隊に発砲し、13歳の少年を含む7人を殺害した。この日はイスラム教の最も神聖な祭りの1つである「イード」(ラマダン=断食月=明けの祭り)で、デモ隊がモスクから外に出て行進した際に発砲事件が発生した。

 一方、リビアのカダフィ政権崩壊に対するイランの公式の反応は慎重なものだ。イランは、リビア人民の勝利を控えめに称賛する一方で、反政府勢力のトリポリ進撃を支援した北大西洋条約機構(NATO)軍の軍事作戦を非難した。

 イランの政府当局者は、同国が支援するイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの指導者と同様に、アラブ蜂起に対して選択的なアプローチをとっているようにみえる。例えばエジプトなどの反政府運動を「イスラムの覚醒」として称賛する一方で、シリアの暴動をイスラエルと西側がそそのかした陰謀として糾弾するという具合だ。

 イランとシリアは長年、ヒズボラやパレスチナのイスラム原理主義勢力ハマスとともに、アラブ諸国の民衆の支持取り付けのため、反イスラエル・反米姿勢をとり、それを国内の動揺を封じる盾にもした。イランはこうした抵抗勢力のリーダー格を自認していた。

 中東地域におけるイランの力は過去10年間で著しく拡大した。その資金と、イラク、レバノン、シリア、アフガニスタン、パレスチナ地区における政治・武装集団との連携のおかげだ。同盟国はイランの影響力拡大を支持した。これに対し、サウジアラビアなどスンニ派主導のアラブ諸国はイランを脅威とみなした。

 シリアはイランの最も古くて最も戦略的な中東の同盟国だ。シリアは8年間続いた1980年代のイラン・イラク戦争でイランを支持した唯一のアラブ国家だった。

 シリアはまた、西側諸国がテロリスト集団とみなすヒズボラとハマスをイランが支援し、資金供与するのを手助けしている。西側諸国は、イランはシリアを通じてヒズボラに武器を供与しており、この取り決めが中東地域におけるイランの影響力を維持し、イランにとって核開発プログラムをめぐる西側との交渉での有力な駆け引き材料ともなっていると指摘している。

 中東地域では長年、イランの最高指導者ハメネイ師は尊敬すべき宗教指導者としてあがめられ、アハマディネジャド大統領とヒズボラ指導者ハッサン・ナスララ師は人民の英雄として称賛されてきた。彼らは世論調査で2009年まで最も人気のある指導者のトップに位置していた。

 しかし7月に発表されたアラブ・アメリカン・インスティチュート(AAI)によるアラブ6カ国の世論調査結果によると、イランの人気度は劇的に低下している。調査はアラブ人4000人以上を対象に6月の当初3週間で行われ、設問にはイランが中東で平和と安定に寄与しているかという問いが盛り込まれた。

 その結果、エジプトではイランに好意的な回答を寄せたのがわずか37%で、2006年当時の89%を大幅に下回った。サウジでは、85%からわずか6%に急低下、ヨルダンでは75%から23%に低下した。

 米コロンビア大学のイラン専門家ハミド・ダバシ教授は「『アラブの春』を受けて、シリアとイランの間の協力関係全体が深刻な問題に直面している」と指摘している。


http://jp.wsj.com/World/Europe/node_298116

#日記広場:ニュース




月別アーカイブ

2025

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.