伝えたい言葉 11
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/03 09:00:11
「今日の仕事はどうだった?」
「相変わらず会長は黒川主任に怒られてました。」
雅也の問いに綾奈は苦笑を返す。
805号室。最近は夕食はよほどの用事がなき限り綾奈はここで雅也と食事を共にするようになっていた。
きっかけは、綾奈の「夕食作り」だ。
今まで3人暮らしで、弟二人だったので必然的に綾奈が夕食作りをしていたのだが、いつもの要領でついつい3人分作ってしまうのだ。―――作ってしまったのは仕方がないが、捨ててしまうのももったいない。そこで綾奈が思いついたのは『おすそ分け』だった。
部屋番号は雅也から直接聞いていたので、余ってしまった夕食をたっぱに入れて持って行ったのが最初だった。
(いきなり、持っていくのは失礼かな?)
とも思ったのだが、作りすぎたものは仕方がない。隣とはいえ、黒川に持っていくのにはかなり勇気がいる。それに引き替え、雅也だとかなり気楽に持って行ける。と、思ったのだ。
でも、思い立ったのはやはり突然で、相手は綾奈の言動に慣れている諒一や叶斗とは違うのだといことも自覚はしている。
(やっぱり、迷惑よね…。)
同じ職場の同僚で、以前から面識があったくらいの女性にいきなり「夕ご飯を作りすぎちゃって…。」と持って行ったところで、迷惑だと思うのでじゃないかというと一瞬躊躇した。だが、
(持っていくだけ、だもんね?)
雅也が困った様子を見せれば、すぐにでもおすそわけを持って帰ればいいだけの話だ。
(だって、作りすぎちゃって、捨てちゃうよりはずっといい筈よね?)
今日作ったのは、『肉じゃが』だった。―――そう、「男の人が彼女に作ってほしい料理ベスト5」に入る料理であることはたまたまだ。決して狙ったわけではない。
(そうよ。たまたま、よ。)
たまたま今日作ったのが肉じゃがで、たまたま作りすぎたのだ。
(どうしよう…。「こいつ、狙ってるな」とか思われたら。)
そんなことを思うと、どうしても雅也の部屋のインターフォンを押すことができない。―――そして、805号室の玄関前で行ったり来たりする不審者一人出来上がりだ。
「あれ?澤井さん?」
綾奈より2時間ほど遅れて帰宅してきた雅也が、自分の部屋の玄関前でおすそ分けのたっぱを持ってウロウロしている綾奈を見つけたのが一昨日のことだった。
* * * * *
「しかし、びっくりしたよ。仕事から帰ったら澤井さんがうちの玄関前でたっぱを持って泣きそうな顔をしてたんだから。」
実際は困った顔、である。
「う…。―――あの時は本当にどうしようかと思ったんですよ。」
あの時は、綾奈が玄関前に居るのを見てびっくり顔を一瞬したものの、優しく微笑みかけてくれたのだ。それは、しばらく忘れていた「他人を頼れる安心感」を綾奈に思い出させた。
「「おすそ分けなんですけど、ご迷惑ですよね?」って言うんだもの。しっかりたっぱを持っているのに。」
今でも忘れられないのか、綾奈と並んでダイニングテーブルに座っている雅也はおかしそうに笑う。
「―――もぅっ。忘れてくださいよ、そんなこと。」
「忘れられやしないよ。あんな可愛くて泣きそうな顔を。」
「むぅ。…龍野さん、そんな甘いセリフ、女の人に会うたびに言ってるんですか?」
そんな軽々しく言うセリフじゃないです、と綾奈はぷいっと横を向く。
「言ってないよ。」
「信じません。それに、誤解されちゃいますよ、相手の女に人に。『あれ、私のこと好きかも?』って。」
綾奈の言葉に雅也は心底困った顔をする。
「だから、誰にでも言っているわけじゃないよ。」
それでも疑い深げな綾奈の視線に雅也はぽりぽりと頬を掻く。
「参ったな。」
その雅也の心底困った顔に綾奈は許してあげることにする。
「私は誤解なんてしないからいいですけど、今後こんなことを軽々しく何とも思っていない女の人に言っちゃダメですよ。」
行儀悪く箸を持っていない左手でピシっと雅也を指さし言い切った。
「信用ないなぁ。」
夕食のエビフライをつつきながら苦笑を返した。
「龍野さんのそういうところは信用できないです。―――優しすぎですよ?」
いろいろ相談に乗ってくれますし、と綾奈は止めていた食事を再開する。
「―――誰にでも優しいわけじゃないのにな。」
「?何か言いました?」
どうも綾奈には声が小さすぎて聞こえていなかったらしい。
「いや。それより美味しそうな晩飯をいただくとするかな。」
その言葉に綾奈は満面の笑みを浮かべた。
805号室は今日もすこしだけこそばゆい、温かな空気で満たされていた。

























確かに、黒川さんにおすそ分けをするのは勇気がいりますよねw
はい、「こいつ、狙ってるな」とちょっと思った人ここに一人です←ぇ
雅也さんも苦労しますよね・・・綾奈は限りなく鈍感ですから;;
早く二人が結ばれるといいです>< 見ていて(読んでいて?)もどかしいです(
でも、「可愛い」とまで言われたのにそんな・・・(((
今回もおもしろく、微笑ましく、ときおりもどかしく(
読ませていただきました^^
次回も楽しみにしています☆
いつもありがとうございます。
そして心のままのお言葉嬉しいです。
いきなりびっくりな展開ですみません。
なんかイロイロさくっと抜けてるじゃないか?
いきなり展開しすぎじゃない??
などなどあると思うんですが、
彼女は男女の機微には疎くって
手料理がいかに独身一人暮らし男のハートにうったえるかとか
全然気づいてない子なんです。
雅也はそれが分かってるからなかなか踏み込めないんです(^^A
更新まで間が空いてしまってすみません。
今度はもう少し早めにお届けできるよう頑張りますねw
いつもありがとうございます。
早速手直しです。
いつも的確な指摘をありがとうございますw
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
と思ったら
一気に展開しててビックリです!(゜Д゜)
雅也さんと雅也さんの部屋で一緒に食事ぃ~!?
しかも、綾奈さんの手料理ぃ~~!??
なんだこの甘い雰囲気わーーー!!
ぎゃーーー!!!(T∇T)
・・・失礼しました。
やー、いい感じですねーw
いい感じww
もー、気があるのは分かってんですよっ。
雅也さん、言っちゃえばいいのにぃ~ww('-'*)
っていうか、綾奈さん、誤解してますから!
早く気付いて!!
次回も楽しみにしています☆
『びっくりした』を修正したほうがいいでしょう。
びっくり顔にすることによって、その瞬間の綾奈の驚きぶりが表現されます。
『した』まで入れると伝えたい綾奈の驚きぶりが消えてしまいます。