タイムリミット~前編~
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/11 00:56:01
「イヤー、ホント兼成は時計に詳しいんだなぁ~。もうあきらめかけてたのに。親父の形見、直してくれてありがとうな。」
「いやいや、また何かあったらいつでも来いよ。」
そういうと、俺は友人の背中を見送って、ほっとため息をついた。
今回の時計はなかなか手ごわかったが、直せてよかった。今ではもう手に入らないタイプのものだったからな。
俺の名は常盤兼成(ときわかねなり)。職業は、フリーのルポライター。時計屋の主人だと思った人もいるだろうか?
確かに、実家は時計店だった。もう、5年も前に潰れてしまったけど。
自分で言うのもなんだが、俺はいわゆる「時計マニア」。
いろんな時計を調べるのが昔から好きで、暇さえあれば昔の時計の構造を調べてみたり、オークションでプレミアものの古い時計があれば、大金をはたいて手に入れている。
そんなこんなで、俺は古くて今では使われていない時計も直せるようにもなっていた。親父の遺留品の中に、そういった時計の資料がたんまり残っていて、部品もかつての店の伝で手に入れることができたからだ。
ある日、俺は久々にばあちゃんの家を訪ねた。最近手に入れた時計の話をしていると、
「お前は、本当に、昔から時計が好きなんだね~。なら、ここはひとつ、おばあちゃんの時計にまつわる話しを聞かせようか。」
「え?ばあちゃんの時計?」
昔、じいちゃんはイギリスに行く機会があり、そのお土産に懐中時計をくれたという。
じいちゃんが亡くなってからも、その時計を大切に使っていたが、ある日動かなくなって、修理に出した。
ところが、当時海外の時計というのは相当珍しいものだったらしく、その時計屋の主人が譲ってほしいといって聞かなかったそうだ。
もちろん、夫の形見だから譲れないといって、修理をお願いしたらしいが、結局、修理に出したきり、その時計は戻ってこなかったという。
「おじいちゃんの時計が戻ってこなかったときは、本当に残念だった。もしあのころに戻れるなら、修理に出さないようにしたいねぇ。」
「そんなことがあったのか・・・。」
その数日後、俺は記事の原稿用紙を出版社に送ってから、郵便物をチェックした。
「ん?なんだこれ?」
差出人の名前も住所も書かれていない、切手も貼っていない変な封筒があった。中に何か入っている。
取り出してみると、それは、懐中時計だ。が、針が動いていない。一緒に入っていた手紙を読んでみた。
「時計をこよなく愛するあなたへ。あなたは時の番人に、この時計の使用を許可されました。この時計を使えば、あなたが行きたい時代へタイムスリップすることができます。制限時間は1時間。あなたの行きたい時代を時計に言ってください。」
なんだか信じられない内容だ。そんなSFやファンタジー見たく、タイムスリップなんかできるのか?
SFとかでけっこうあるよなぁ。主人公がタイムスリップして、過去を変えたり未来を見たり。
「それが本当なら、ばあちゃんが、じいちゃんの時計を取られちまったって言う時代に戻って、時計を取り返すこともできたりしてな。」
と、不意にそういったとの時だった。
(キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ)
「な、なんだなんだなんだ~~~~!?」
突然、止まっていたはずの時計の針がものすごい勢いで回り始めたのだ。回転の向きは普通と逆周り。
よく見ると、周りの景色もなんだか巻き戻しみたいに動いている。
「おいおいおいっ!マジかよ!?」
時計の回転が止まった。時間はジャスト1時。
ふっと、周りの景色が所々変わっていることに気がついた。
なんというか、全体的になんというか、古い感じのする景色だ。時代で言うと、おそらく大正時代ってとこだろう。
「もしかして・・・、本当に、ばあちゃんの若い時にタイムスリップしちまったのか?」
タイムトラベルというと、前に読んだクロノスという名前の
戯曲がとても好きです(*^ ^*)
そこでのタイムマシンはタイムスリップできる代わりに未来へ飛ばされてしまう不完全なもの。
それでも事故で失った愛する人を失わないために、何度もタイムスリップする‥
というような感動的な話でした。
もう機会があったら読んでみてくださいね♪
後編待ってます(^.^)