タイムリミット~後編~
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/12 16:55:11
とりあえずどうしようかと思ったが、ひとまず、ばあちゃんを探してみることにした。
今と建物や道の構造が違うので、自分の家の近くでも、どこがどこなのかさっぱりわからない。
人に聞いても、昔の言葉遣いは今と微妙に違って、わかりづらい。
おまけに服装がこの時代と今じゃ全然違うもんだから、変な勘違いをされて、何者だと聞かれるやら警察が出てくるやらでパニックになる始末だ。
何とか切り抜けて、ようやくばあちゃんの家を探し出すことに成功した。
「えっと・・・、おっ!あれだな。若いときのばあちゃん。」
若いときのばあちゃんがそこにいた。初めて見るが、かなり美人だ。
「はぁ~。」
ばあちゃんは、時計を見てため息をついている。どうやら、あれがじいちゃんからもらった時計のようだ。
すると、ばあちゃんが家から出てきた。あの時計を持っているということは、どうやら修理に出しに行くようだ。
(まずい!このまま修理に出したら、時計屋の主人に取られてしまう。何とかして止めないと・・・。)
「あ、あのっ!」
「はい?」
俺はとっさにばあちゃんに声をかけた。
「え、えっと、あの・・・・その・・・。」
いざとなると、なんて言っていいのかわからなくなってしまった。
「あ、あ、あのっ、その時計・・・・。」
「これですか?」
ばあちゃんは時計を出した。
「その時計、これからどうするんですか?」
「?動かなくなったので修理に出すんですが?」
えっと、えっと、どうやって止めよう・・・。
「その、あの、ちょっと見せてもらえませんか?」
精一杯考えても、この言葉しか出なかった。
「いいですけど・・・、そんなに珍しいですか?この英吉利の懐中時計。」
と、ばあちゃんは時計を差し出してきた。
俺はその時計をまじまじと見つめた。かなり特徴のある時計だ。昔のものだからなぁ。
(あれ?まてよ・・・、これどっかで・・・・。)
と、次の瞬間、あたりの景色が早く動き始めた。まるで、テレビの倍速みたいだ。
「げっ!もしかして・・・。」
あの懐中時計を見ると2時。タイムリミットがあることをすっかり忘れていた。
気がつくと、まだ、ばあちゃんの家の近くにいた。けど、周りは見慣れた景色。どうやら、現代に戻ってきたようだ。
送られてきたあの不思議な時計は、いつの間にかなくなっている。
「はぁ~。結局、過去に戻っても無駄足だったか・・・。ん?いや、待てよ・・・。そうだ!あの時計!」
俺は急いで家に戻って、パソコンを起動させた。そして、インターネットのオークションサイトにアクセスした。
「これだっ!!」
じいちゃんの形見の時計がそこにあった。
そこは、アンティーク専門のオークションサイトで、時計もたまに出ていた。
その時計は、俺が数日前に手に入れようとしていた時計だったのだ。
「やっべぇ!!別の希望者が出てきている。残り時間は・・・後1分!?」
これにもタイムリミットが!!俺は急いでより高い値段を打ち込んだ。
数日後、無事落札できたあの時計が届いた。資料を引っ張り出して、何とか修理に挑戦してみた。
さすがに、昔の外国製の時計だけあって、資料は少ない。けど、親父の仲間の力を借りて、3日間をかけて何とか修理に成功した。
修理を終えた翌日、ばあちゃんに届けに行った。
「まぁ・・・。ありがとうね、兼成。ようやく戻ってきたねぇ。おじいさん。」
仏壇のじいちゃんの遺影を見ながらばあちゃんはつぶやいた。
心なしか、俺には遺影のじいちゃんが、一瞬微笑んだように見えた。
思い入れのある時計…素敵です(^ ^
過去から持ってくる~じゃなくて、オークションで見てた時計だったんですね。
上手ですね♪楽しかったですよ(^.^)