未だ色褪せない少し不思議(SF)な物語 その2
- カテゴリ:マンガ
- 2011/09/18 00:11:53
藤子・F・不二雄 少年SF短編集=2 [絶滅の島]
藤子・F・不二雄
収録作品は以下の通り。
この巻では「怪奇」というような話が多い。
「ポストの中の明日」
「おれ、夕子」
「流血鬼」
「ふたりぼっち」
「宇宙からのおとし玉」
「アン子、大いに怒る」
「絶滅の島」
「山寺グラフィティ」
「世界名作童話」
中でも特に印象に残った作品について。
「ポストの中の明日」
未来が見えてしまう主人公。
ある日、主人公が見たものは自分達が青木が原樹海で遭難する
未来だった、という話。
未来が見えれば、どんなに楽だろう、と思う事がよくある。
が、見えた未来が自分の望むものでなかった場合(事故にあう、
病気になるなど)どんな反応をするだろう。
「まだ、そうなると決まったわけじゃない」とタカをくくって、無視する
かもしれない。
結局、未来が見えない時と同じ事をしている気がする。
「おれ、夕子」
自分の子供の死を受け入れられない大学教授の父親が自身の
研究を利用して、娘を取り戻そうとする哀しい話。
死んだ人間が生き返る、という点ではスティーブン・キングの
「ペット・セマタリー」が思い出される。
「ペット・セマタリー」の主人公は「呪われた力」と知りながら、
利用してしまうほど暴走してしまうが、こちらの作品の父親は、
自分の技術が別の人間を犠牲にするものであるため、踏み
とどまる事を決意する。
別の巻の「未来ドロボウ」でもそうだったが、他人の犠牲の上に
成り立つテクノロジーを手にしてしまった人物は、自らそのテクノロジーを
封印している。
果たして現実の世界では、どうだろうか。
「流血鬼」
ゾンビ映画を見た時、自分以外の人間が全部がゾンビになって
しまったら、逃げ回るより、ゾンビになった方がラクでは?と思う
事があった。
それがそのまま作品になったようで驚いた。
「絶滅の島」
ある日、突然、やってきた異星人の攻撃により、あっという間に人類は、
わずかに少数が生き残るのみとなってしまった。
そもそも異星人が地球に攻めてきた理由というのは・・・
立場を逆転したら、という発想の作品。
異星人が攻めてきた理由が理由だけに、しかもその理由は自分達も
使っているので、文句を言えた筋合いではないので、落ち着かない気分になる。
「山寺グラフィティ」
この巻の中では一番のお気に入り。
山形県の山寺に残る民間信仰を題材にした作品。
これまた死者が話に絡んでくるが、怖い話ではない。
別に「呪われた力」「禁断のテクノロジー」や「霊能力」など使わなくても、
死んだ者と「対話」する方法は存在する。
死んでしまった親しい者を忘れたくない、という人の情が垣間
見える心温まる物語。
舞台化されたのは知りませんでしたが、そういった点が宮本亜門
の琴線にも触れたのでしょうか。
「流血鬼」はたしか、宮本亜門の演出で、
舞台でのお芝居にもなったという覚えがあるけど・・、
間違ってたらゴメンナサイ。