危うさ。(空を仰ぐ2の続き)
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/01 00:14:44
危うさ
ボクは存在しているのだろうか?今、この思考を考えているのは「ボク」と呼べるのだろうか?今のはボクじゃなくて、ラルクゥ。怠け者の君なのかい?
……。返事は無い。眠っているみたいだ。じゃあ、ルゥ。やっぱりボクなのだろうか?
「ボク」なのか?それとも「リルル」なのか?
それとも、それとも…「死使」なのか。
お前は誰だ?決められぬなら破滅するしかない。
「ボク」はルゥ・アプサラスだ!オレはリルル・ガランドだ!
器は誰のものか?交代で使う。ラルクゥのモノでもあるし、グラシャのモノでもある。
そしてフェンリルのモノでもある。何よりもルゥ。リルルのモノでもある。
ニナが…ルゥと呼んでくれる。ルゥを主軸として交代で使う。
「おい!おい、リルル」
「うん?何だ…どうしたスコット?緊急事態か」
「いや…そうじゃないけどさ。お前、大丈夫か?さっきから何度も呼んでいるのにぼーっとして。何よりもこれから危険な場所に入るんだぜ。あのフィルに。」と、スコットは言う。
スコットが言うように、フィルの町が輪郭を帯びて見え始めていた。
「そうだな。マントを深く被り、潜入する」
それでもボクは気を引き締めるということなど、できはしない。
エメラルド・ツリーオブライフ。そう、こういう時は本で読んだ伝説上の生命の樹でも思い浮かべながら歩く方が性にあっている。
その方が落ち着く。それに飽きたら蜘蛛をイメージするのもいい。冥界の主と呼ばれる大きな蜘蛛でもいい。瞳の色は自分と同じ。ルビーアイズ。赤い目だ。
ボクは機械のように動ければいい。油を差して動く機械のように。
思考がボクを落ち着かせていく。
フェンリル…終焉をもたらす鬼よ。
今回は君の力は借りなくても良さそうかもしれない。
それとも強行突破が必要な時が出てくるかもしれない。
君はどう思う?フェンリル?
「ラー」がいる。あの町のどこかに「ラー」がいる。大いなる意志を継ぐ者がいる。
はは。それは答えになってないよ、フェンリル。
お前には感じることはできないか。それもいいだろう。ルゥ。状況は思っているほど良好なわけでは無い。生贄には黒騎士の心臓を喰らえ。それで力を貸してやる。
おいおい。その黒騎士に勝てないのだぞ。
マントを有効に使え…隠れ、チャンスを狙い、奪い取れ。
レヴァンティンは黒き器。白き器の片割れ。「ラー」がここにいる。
「ラー」に会うためならどんなことでもしよう。
わかった…肝に命じる。
大きさの違う石がバラバラに床に埋め込んである。その石床の上をボクは歩いた。
怖いながらも、恐れながらも・・・。
何を信じていいのか、何を疑えばいいのか。
それさえもわからない。泥沼に足をつからせて
扉をこじあけて、光を探して闇の中を手探りで歩く。
そうしていないと、怖くて一歩も動けなくなりそうで。
ボクは目をつぶるのをがまんして、闇を凝視して歩いた。
ここはどこだ?どこなんだって、心で叫びながら歩いた
黒騎士たちは見えていないのか、こちらを振り向こうとすらしない。
それでもボクたちは黒騎士たちに出会うたびに立ち止まり、震え、時を過ごした。