「外」の世界
- カテゴリ:小説/詩
- 2011/10/10 19:24:44
宇宙は本当にひとつなのか
村山 斉
講談社
ブルーバックスのシリーズでは珍しく出版後、3ヶ月以上経っても、
新聞に広告が載るほど人気がある本書。
SFの世界では「パラレルワールド」というアイディア自体は、それほど
珍しいものではない。
だが、それが事実かもしれない、としたら?
宇宙論の世界は、観測も難しいので、理論や式の解釈一つで大きく
宇宙の構造が変わってしまう世界だ。
それだけにSFと現実の境界線がはっきりしない世界でもある。
好きな人には、そういう所が魅力の一つでもあるだろうし、興味のない
人には、胡散臭い話とあしらわれてしまう。
本書では前半で、これまで分かってきた宇宙論を解説し、後半で
タイトルにあるとおり「多元宇宙」の説明をしている。
そもそも何故、「他の宇宙」とかいう考えが注目されてきたのだろうか。
それは計算の間違いを認める事(=理論のほころびを認める事)と
宇宙の「外の世界」を認める事を天秤にかけた結果である。
相対性理論や量子力学の理論にほころびがある、という可能性は、
ありえないことではないが、これまでさんざん「追試」を受けてきたので、
ちょっと考えにくい。
対して、「外の世界」は、それっぽい観測結果が見つかっている事も
あるので、こちらを考えた方がよさそう、と考えられたから。
「“暗黒流動”を観測、宇宙論を覆す?」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=9725235
「暗黒流動、“宇宙の外側”の証拠を発見」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100323001
「多元宇宙論が検証可能に?」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110810002
「多元宇宙」が事実にせよ、間違っているにせよ、まさに
「事実は小説より奇なり」
だ。
大昔は「妖怪」が引き起こしていたものが、「xxx」が引き起こす、
と使う用語が変わっただけではないか、という話でした。
未来の人は「xxx」のところにどんな言葉を入れているでしょうか。
実測して確めたと言う事自体が、少ないから。
こうしてみると、古代インドの人が、
この世は大きな亀さんの背中に大きな陸地が載っているのだ・・と、
考えたことも笑えないわ。
いずれ30世紀の未来の人は、21世紀の私たちの宇宙観を聞いて
大笑いするのでしょうね。