まだ途中
- カテゴリ:マンガ
- 2011/10/15 21:06:37
あの日からのマンガ
しりあがり寿
エンターブレイン
「あの日」とは、東日本大震災が発生した 2011/03/11 のこと。
朝日新聞夕刊に連載されている4コママンガ「地球防衛家の
ヒトビト」と「月刊コミックビーム」「小説宝石」に掲載された震災
及び原発事故がテーマの短編が収録されている。
テーマがテーマだけにマンガのネタにしてしまっていいのか、
とも思うが、作者は「”たとえ間違えているとしても、今、描こう”
と思いました」と覚悟の上だ。
作者自身、震災1ヵ月後、ボランティアに行っているので、被災地の
状況や避難生活をしている人達の暮らしぶりの描き方には、実感が
こもっている。
印象的なのは、建物の被害もあまりない地域から、津波の被害に
あった地域に入った時の様子。
「とつぜん、なにもなくなった・・・」
という一文と、その後、瓦礫を描くコマが4コマ続く。
その落差を思い浮かべると、ゾッとするものがある。
それから、東京へ帰るので、別れの挨拶をするシーン。
「みなさん、今日、これからは?」
と聞くと
「今日、これからも何も・・・
ず~~~~~っと復興です」
という答え。
遠い昔に終わった事のように思えてきてしまうが、被災地の人に
とっては、まだまだ「途中」でしかない。
それでも4コママンガの方は、「エッセイマンガ」のような感じで
多少ほのぼのとした感じはあるが、短編の方はかなり痛烈な
皮肉が込められている。
エネルギーシフトをした結果、暮らしは不便になったが、キレイな
夜空を取り戻した、という話や放射性物質を擬人化したブラックな話、
延々と議論ばかりしていて、事態を少しも前に進めない鳥のいる森
の話などなど。
様々な意味で胸に突き刺さるものばかり。
短編の中で、一番、印象的なのものは最後に収録されている
「そらとみず」
この短編には、セリフらしいセリフは出てこない。悲しい話なのだが、
ラストに救いを感じるものだった。
震災から時間が経ったが、まだ何も終わっていない、という思いを新たにした。
間違っていてもいいから動く、という選択をできる人は実際には、
わずかですね。
自分も立ち止まってしまうタイプなだけに、こういう人の行動には
驚かされてしまいます。
この時期に、敢えて、こういう漫画を書ける人は、
それなりに、明確な哲学と信念がある人だと思うわ。。。
「地球防衛家のヒトビト」が笑わせる路線で、短編が皮肉路線と
なっていて、それが交互に編集されているので、バランスにも
配慮している印象でしたが、それだけに突き刺さる部分は、グサッ
ときます。
>チェリなの★さん
個人では、大きな事まではできないと思いますが、少し考えれば
無意味だと分かるウワサには加担しない、というのも支援の
一つでは、と思います。
何が自分にできるか・・・です。