愛犬の様子がおかしい。


藤原道長が可愛がっている白い二匹の犬。

今日もいつものように犬を連れて法成寺へ訪れたのだが

門に入ろうとした時、２匹の犬が吠えてきた。

ましてや牙を立てては自分の服の裾を噛み付いてくる。


おや、これは一体どうしたことか？

利口な犬達なので飼主に吠えたり服とはいえ噛み付いてくるなんて珍しい。


やめてくれる気配もなくずっと吠え続ける犬。

服の袖を掴んで引っ張ろうとしている犬。


（もしかしてお前達・・・私をここから進むなということなのか）


「これは、これは道長殿。賢い犬に助けられて幸せ者ですね。

「晴明！！」


声がしたので振り返ってみると

ちょうど牛車が止まっており窓からは友でもある陰陽師・安倍晴明が顔を覗かしていた。

優雅な仕草で扇子を広げ口元を覆った。笑っているのであろうか・・・


「晴明・・・もしかしてずっと見ていたのか？」

「はい。それはもう微笑ましい光景をずっと見ておりましたとも。
　
　私が声をかけるまで全然気付かれないなんて、道長殿は・・・アレですなぁ。」

「ええい！うるさい！！で、晴明！私に一体何か用があるのか！！

　茶化すのが目的ならばさっさとどこかに行ってくれ！！

　私はこのような所用でお前にかまっている暇はないのだ！」


そう。晴明に構っている暇はない。

どう２匹の犬達を宥めて大人しくさせるかで精一杯なのだ。


「やれやれ。」

ため息をついた晴明はのそのそと牛車を降り、

そんまま門前で立ち塞がっている道長を尻目にさっさと門をくぐって立ち止まった。

目を閉じ大きな深呼吸をした晴明はゆっくりと口を開いた。


「やはり、呪いがかけられていますね・・・」

「それは何とΣ(ﾟдﾟ;) 」

どこに呪いがかけられているのかは既にお見通しのようで

２・３メートル歩いたかと思えば、突然しゃがみこみ素手で穴を掘ると土器が出てきた。


「ほらこれ。この土器から呪いがかけられています。

　フフフｗ良かったですね道長殿。犬達は呪いの気を察知し

　道長殿にこれ以上行くなと貴方を守ろうとしていたのですよ。」

「お前達･･･」


晴明が土器を見つけてからは急に犬達は静かになった。

いつものように大人しく愛嬌のある犬に戻る。


「ありがと～お前達～私を呪いから守ろうとしてくれたのだな！」


あまりにも嬉しさに目頭が熱くなる。

犬達を抱擁するとこの思いが犬達も通じたのかしっぽを振りながら道長の顔をダ舐めてくれた。


「はいはい。仲の宜しいことでｗ私は呪いのかかった土器はこちらで処分しときますね。」


晴明の声はもはや犬とじゃれあっている道長の耳には届いていなかった。


後日、この呪いをかけた陰陽師は晴明によって捕まったらしい。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　晴明神社に記されている表示
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ウィキペディア　参考



　～　補足　～

安倍晴明

921年2月21日～1005年10月31日

平安時代に活躍した陰陽師
（陰陽師とは古代日本の律令制下におて中務省の陰陽寮に属した官僚の１つ。
　陰陽五行の思想に基づいた陰陽道によって占術・呪術・祭祀を司っている）

”今昔物語”・”大鏡”など歴史物語に安倍晴明の名が記されており、数々の伝説を持っている。


以前、晴明神社内で掲げられている表示を参考に作らせて頂きました。

安倍晴明は同じ誕生日なので近しいものを感じております。
誕生日占い的に
安倍晴明も想像力豊で気になる物・興味があるものは真っ直ぐ貫き通すという所があるのでしょうか･･･気になるなぁ