フィオルという男 (青く輝く鳥のつづき)
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/16 23:44:50
死を選ぶことは罪ですか。
ボクはおそるおそる・・・口をぱくぱくと、動かしてみた。
行動と意識がつながらない。声は出なかった。
ダクトおじさんが「こちらにいるのがフィオル様です」と、告げてからどれくらいたっただろう?時を動かさなくては。
ボクはもう一度口を動かした。
「・・・あなたがフィオル様なのですか?」
ボクはやっと声を絞り出し、それだけを口に出来た。
男、いや、フィオルはスコットを横にどけてから話し始めた。
「私は見てのとおり、白髪だ。これは血を流しすぎたせいだ。気にするな・・・白き聖剣は私の身体の中にある。今となっては私の命そのものだ。私はこれのおかげで命を永らえた。黒騎士たちの執拗な攻撃にも耐えることができた。白き聖剣の名前は知らない・・・私は残念ながら持ち主にはなれないらしい。ゆえに手放す。それは私の「死」を意味する。言っていることはわかるな」と、フィオルは言う。
「ボクはすでにレヴァンティンを持っている・・・あなたが持ち主に選ばれないのなら、スコットが選ばれるのではないのか?」と、ボクは感じたことを口にする。
「いあ、それならすでにスコットに移動させている・・・。だが、白き聖剣は首を横に振るばかり。これは私の勘だが、お嬢さん・・・あなたに期待している。さもなくば、我が妹、アマテラスかだ。こちらに来て私の手を触ってくれないか」
ニナはボクの方を見る。
「うん。お願いする」と、ボクもつぶやく。
ニナは意を決したのか、それでもゆっくりとフィオルの腕に触れた。
触れた瞬間、青い稲妻が見える。
「きゃっ!」と、ニナはすぐに手を離し、後ろへ倒れていく。
「!!」と、ボクはニナの肩を支える。
「カラドボルク・・・それが白き聖剣の名前」と、ニナはつぶやき、意識を失った。
「どうやら、お嬢さんを選んだようだ・・・白き聖剣にどんな力があるのかは私にもわからん。ただ私の身を回復し続けてくれたことだけしかな。私は持ち主ではなかったしな・・・。それよりも・・・白と黒がこれでそろった。二人で大陸南西の地下神殿へ向ってくれ。それで魔王は「力」を失う。だが・・・向こうもそれは承知の上。そこで待ち構えていることだろう。だが・・・行く前に魔王の星を壊す企みを止めて欲しい。北に・・・。雪の国レコムンドを解放して欲しい。そうすることで怖ろしい兵器の建造を止めれるはずだ。もしも間に合わなかった時は、大陸南西の地下神殿へ向え・・・。アマテラスも知っている。いあ、王家なら誰でも一度は聞いたことのあるおとぎ話さ。あれはホントだったと、伝えてくれ。ダクトじぃ・・・今までありがとう。私は・・・少し休むよ」
それがフィオルの最後だった。
メイリィと同じ嬉しそうな顔だ。
満足げな・・・まるで何かを成し遂げたような。
いや、成し遂げたのだろう。
「死」を前にしてあれだけしゃべれたのだ。
偉業に違いない・・・。
頬を伝う熱いモノを拭こうともせず、ボクはただフィオルを見つめた。
またするりと、「命」がボクの手の平をすり抜けていった。
いや、助けようと・・・救おうと考えること自体がおこがましいのかもしれない。
「死」を選ぶことは罪ですか・・・
ほんとは「死」にたくなかったの・・・
メイリィがそうであったように・・・フィオルもそうだったのかもしれない。
ダクトおじさんを含め・・・スコットと、ボクは大声をあげて泣いた。
身体が動きたくなるまで・・・ボクたちは泣き続けた。
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- おおちゃん
- 2011/10/17 06:57
- またこれからが大変な事になりそうじゃね…
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