Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


闇に閉ざされて


フィオルという男のつづきです。



闇に閉ざされて

 怯えている・・・。ただ同じことが起きるんじゃないかって、根拠も無く、怖がり、がたがた震えている。

 視線は下を向き、手は頭に乗せて、ぶつぶつつぶやいている。かっこ悪い。ほんとかっこ悪いけど・・・動くことすらできないんだ。

 ヨシュアを救うためとか、きっとヨシュアは待ってくれているんだとか・・・いろいろ考えては罪を感じるんだ。どうしようも無く。今、動けない自分に。怖くて、ベッドから立ち上がれない自分に。罪悪感を感じている。
 ヨシュアを助けたい・・・。でも、魔王をうまく倒せなくて、ヨシュアを死なせてしまったら?フィオルのように。

 別れを受け入れることができるのか?そもそもうまく倒すってなんだ?どうやって?わからない。

 怖い。ボクは旅をすればするほど、フィオルのように人を死なせて行くだけじゃないのか。ボクは誰も救えない・・・無力な人間じゃないのか。

 ボクは・・・。ボクはどうすればいいんだ?

 あああ、ぐるぐると巡っている。同じところを?

 一体どれくらい日が過ぎたのかすらわからない。

 ただ怖いんだ。どうしようも無く・・・不安になるんだ。

 ボクはどうすればいい。

 このまま死者の声に身を任せ、首をつって死んでしまおうか・・・それともメイリィのように崖から飛び降りて。

 あああ、それもできない。そんなことをすれば、ボクは罪悪感で自分が狂ってしまう。

 メイリィをどうして助けることができなかった。

 手を伸ばせば届く距離にいたのに・・・。

 ボクはメイリィの死を・・・最後の瞬間を眺めることしかできなかった。

 弱く、脆く、儚い。

 そして・・・優しく、強く、輝いている。

 何だ?この思考はボクのものか?

 誰かに教わった・・・。そう、誰かに。

 茶色のドアが開き、白銀のイブニングドレスを着たニナが入ってきた。

 腰まである長い金髪が、彼女を美しく魅せているのか、その青い瞳が美しいのか、ボクにはわからない。

 「ルゥ・・・具合はどう?」

 「弱く、脆く、儚い・・・。」

 「強く、優しく、輝いているわ・・・ルゥ。あなたの中の不思議な人がそう教えてくれた。もう一人の人格?まだ見たことの無い人格だったわ・・・それも女性だった。サラって名乗っていた。ふふ。ワタシも教えてもらえて自信を持てたもの」

 「・・・「もう一人のボク」ではなく、「もう一人の彼女」が?」

 「ええ。彼女はこう言ってたわ。ワタシが「弱くて、ダメな人間なのよ」って嘆いていたら「ではお前は強くて、賢い人間なのだな」って・・・」

 「意味がわからない・・・」

 「そうね・・・ワタシもそう思った。そしたら・・・あなたは。いえ、彼女はこうも言ったわ。「一つの状態を受け入れるは・・・その反対も受け入れるということ。それがZEROという考え方だ。人間は弱く、脆く、儚いのならば・・・強く、優しく、輝いているのだ。わかるな」って。これならわかるでしょ」

 「ZEROという考え方・・・。『サラ』。そんな人格はボクも知らない。いや・・・何かとても大切な人のような。黒曜石のナイフ、ルビーアイズ、黒き翼、黄金のヴェール。何だか、とても懐かしい人のはずなのに・・・。わからない」

 「ルゥ・・・。無理をして思い出さない方がいいわ。フィオルの葬儀も終わったわ。それにスコットも落ち込んでいるのよ。今日は舞踏会があるって言うのに・・・あなたも塞ぎこんでいるし、スコットもダメ。ワタシはあなたのおかげで・・・立ち直れたのに。・・・一人で今日は静かに過ごすわ」

 そう言ってニナはボクの横に座った。

 手を握ってくる。

 「彼女・・・サラは不思議なことを言っていた。「ルゥは必ず塞ぎこむ。怯える・・・いつものようにな。そうなった時にワタシを呼べと、伝えてくれ。ルビーを嵌め込んだ柄。黒曜石で作られた刃(やいば)それが二本。ジャックフロスト。ワタシたちはそう呼んでいた。そう言えばわかる。ジャックフロストだ。」ってワタシには何のことかさっぱりだけど・・・わかる?ルゥ」と、ニナはボクの瞳を覗きこんでくる。

 ボクはニナの青い瞳を見つめてから、恥ずかしくなって、目をそらすように視線をどこかへ移動させてつぶやいた。

 「ジャックフロスト・・・」

 トカゲ女郎がくれた・・・そう。「ワタシたちの武器だ」・・・。

 ルゥ・・・過去が作り出した「未来」など断ち切ってしまえ。

 「真の未来」は「ジャックフロスト」が教えてくれる。

 そうして来ただろう・・・。ぶーちゃんに会えたのもそうだ。

 信じろ!無心に!

 君は・・・サラ・ヴァーナード。

 そうだ・・・それは鬼だった頃の名前。

 人に名を告げる時はその名を告げるんだ。


 さあ、お前の名前を言ってみよ


アバター
2011/10/23 23:13
「優しく、強く、輝いている。。」


ああ。。きっと私もそう言うだろうなぁ。。
そして、そか。。
サラちゃんもなのね。。(´`人

サラちゃんのルゥへの意識への介入は、読んでる側への潜在意識にまで無抵抗に入ってくるよう。。(´`人

あの後、舞踏会へ行ってしまうあたりが、サラちゃんぽいのね。。( ´艸`)
なぜかシンデレラがいて、ガラスの靴を落とすのを見たりして。あはは。。( ´艸`)
・・・何の話じゃっ? くぷぷ。。( ´艸`)


不安で震える心。。無力感。。
それらの心理描写が、それらを体験してきたりるぽんと重なりました。。

そしてまた、この世界では消えてしまったように見える人たちが、
たしかに「生きている」ことを、「知って」いるところも。。

体験してきたすべてを作品の中に表現するって、すごいことだよね。
それこそ、自分のオンリーワンの「作品」だよね。
自分のこれまでの「すべて」が生きてる。。

ストーリーを超えて、作品そのものに「生命(いのち)」を感じます。。



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.