闇に閉ざされて
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/21 23:51:37
フィオルという男のつづきです。
闇に閉ざされて
怯えている・・・。ただ同じことが起きるんじゃないかって、根拠も無く、怖がり、がたがた震えている。
視線は下を向き、手は頭に乗せて、ぶつぶつつぶやいている。かっこ悪い。ほんとかっこ悪いけど・・・動くことすらできないんだ。
ヨシュアを救うためとか、きっとヨシュアは待ってくれているんだとか・・・いろいろ考えては罪を感じるんだ。どうしようも無く。今、動けない自分に。怖くて、ベッドから立ち上がれない自分に。罪悪感を感じている。
ヨシュアを助けたい・・・。でも、魔王をうまく倒せなくて、ヨシュアを死なせてしまったら?フィオルのように。
別れを受け入れることができるのか?そもそもうまく倒すってなんだ?どうやって?わからない。
怖い。ボクは旅をすればするほど、フィオルのように人を死なせて行くだけじゃないのか。ボクは誰も救えない・・・無力な人間じゃないのか。
ボクは・・・。ボクはどうすればいいんだ?
あああ、ぐるぐると巡っている。同じところを?
一体どれくらい日が過ぎたのかすらわからない。
ただ怖いんだ。どうしようも無く・・・不安になるんだ。
ボクはどうすればいい。
このまま死者の声に身を任せ、首をつって死んでしまおうか・・・それともメイリィのように崖から飛び降りて。
あああ、それもできない。そんなことをすれば、ボクは罪悪感で自分が狂ってしまう。
メイリィをどうして助けることができなかった。
手を伸ばせば届く距離にいたのに・・・。
ボクはメイリィの死を・・・最後の瞬間を眺めることしかできなかった。
弱く、脆く、儚い。
そして・・・優しく、強く、輝いている。
何だ?この思考はボクのものか?
誰かに教わった・・・。そう、誰かに。
茶色のドアが開き、白銀のイブニングドレスを着たニナが入ってきた。
腰まである長い金髪が、彼女を美しく魅せているのか、その青い瞳が美しいのか、ボクにはわからない。
「ルゥ・・・具合はどう?」
「弱く、脆く、儚い・・・。」
「強く、優しく、輝いているわ・・・ルゥ。あなたの中の不思議な人がそう教えてくれた。もう一人の人格?まだ見たことの無い人格だったわ・・・それも女性だった。サラって名乗っていた。ふふ。ワタシも教えてもらえて自信を持てたもの」
「・・・「もう一人のボク」ではなく、「もう一人の彼女」が?」
「ええ。彼女はこう言ってたわ。ワタシが「弱くて、ダメな人間なのよ」って嘆いていたら「ではお前は強くて、賢い人間なのだな」って・・・」
「意味がわからない・・・」
「そうね・・・ワタシもそう思った。そしたら・・・あなたは。いえ、彼女はこうも言ったわ。「一つの状態を受け入れるは・・・その反対も受け入れるということ。それがZEROという考え方だ。人間は弱く、脆く、儚いのならば・・・強く、優しく、輝いているのだ。わかるな」って。これならわかるでしょ」
「ZEROという考え方・・・。『サラ』。そんな人格はボクも知らない。いや・・・何かとても大切な人のような。黒曜石のナイフ、ルビーアイズ、黒き翼、黄金のヴェール。何だか、とても懐かしい人のはずなのに・・・。わからない」
「ルゥ・・・。無理をして思い出さない方がいいわ。フィオルの葬儀も終わったわ。それにスコットも落ち込んでいるのよ。今日は舞踏会があるって言うのに・・・あなたも塞ぎこんでいるし、スコットもダメ。ワタシはあなたのおかげで・・・立ち直れたのに。・・・一人で今日は静かに過ごすわ」
そう言ってニナはボクの横に座った。
手を握ってくる。
「彼女・・・サラは不思議なことを言っていた。「ルゥは必ず塞ぎこむ。怯える・・・いつものようにな。そうなった時にワタシを呼べと、伝えてくれ。ルビーを嵌め込んだ柄。黒曜石で作られた刃(やいば)それが二本。ジャックフロスト。ワタシたちはそう呼んでいた。そう言えばわかる。ジャックフロストだ。」ってワタシには何のことかさっぱりだけど・・・わかる?ルゥ」と、ニナはボクの瞳を覗きこんでくる。
ボクはニナの青い瞳を見つめてから、恥ずかしくなって、目をそらすように視線をどこかへ移動させてつぶやいた。
「ジャックフロスト・・・」
トカゲ女郎がくれた・・・そう。「ワタシたちの武器だ」・・・。
ルゥ・・・過去が作り出した「未来」など断ち切ってしまえ。
「真の未来」は「ジャックフロスト」が教えてくれる。
そうして来ただろう・・・。ぶーちゃんに会えたのもそうだ。
信じろ!無心に!
君は・・・サラ・ヴァーナード。
そうだ・・・それは鬼だった頃の名前。
人に名を告げる時はその名を告げるんだ。
さあ、お前の名前を言ってみよ
ああ。。きっと私もそう言うだろうなぁ。。
そして、そか。。
サラちゃんもなのね。。(´`人
サラちゃんのルゥへの意識への介入は、読んでる側への潜在意識にまで無抵抗に入ってくるよう。。(´`人
あの後、舞踏会へ行ってしまうあたりが、サラちゃんぽいのね。。( ´艸`)
なぜかシンデレラがいて、ガラスの靴を落とすのを見たりして。あはは。。( ´艸`)
・・・何の話じゃっ? くぷぷ。。( ´艸`)
不安で震える心。。無力感。。
それらの心理描写が、それらを体験してきたりるぽんと重なりました。。
そしてまた、この世界では消えてしまったように見える人たちが、
たしかに「生きている」ことを、「知って」いるところも。。
体験してきたすべてを作品の中に表現するって、すごいことだよね。
それこそ、自分のオンリーワンの「作品」だよね。
自分のこれまでの「すべて」が生きてる。。
ストーリーを超えて、作品そのものに「生命(いのち)」を感じます。。