Nicotto Town



伝えたい言葉13 前編

 「アヤ」
 「姉貴」
 綾奈マンションの最寄駅。いつもの待ち合わせ場所に行くと、笑顔で片手をあげる二人の姿がある。1週間ぶりの澤井家の集合である。
 「お待たせ。久しぶりね。」
 「アヤ、一人暮らしになって太ったんじゃね?俺たちがいなくなったからって、好きかってし放題になってんじゃないのか?」
 嬉しそうに綾奈の髪をくしゃくしゃにする諒一に対し、叶斗は綾奈の持っているバッグを代わりに持つ。いつものことだ。それぞれの綾奈に対する愛情表現だ。
 「で、今日の夕食は何がいいのか決まったの?」
 二人に挟まれ綾奈は嬉しそうに問いかけた。 
 「エビチリ、ハンバーグ、カニクリームパスタ。」
 「オムライス、酢豚、春巻き。」
 そう答える二人に綾奈は思わず吹き出してしまう。
 「何よ、それ。子供みたいなリクエストね。しかも、二日間で食べきれないじゃない。」
 「まぁまぁ。それだけ姉貴の手料理に飢えているんだってば。」
 「アヤ、このまま買い物に行くんだろ?」
 二人に引っ張られるようにして、綾奈は歩き出す。両親を亡くしてからたまにある至福の時だ。
 (いつまでもこのままでいたい。)
 そんな思いが綾奈の中にある。だが、それは同時に無理なことだということも承知している。いずれ諒一にも叶斗にも彼女ができ、綾奈のそばから離れていくことになるだろう。
 (だけど、それまでは…。)
 この居心地のいい空間を大切にしたい。そう思うのだ。


 駅近くのスーパーで買い物を済ませた三人は、そのまま綾奈のマンションに帰宅する。荷物持ちは勿論諒一と叶斗だ。
 「姉貴、早く開けろよ。―――重いっ。」
 「これ何日分の買い物なの?一人暮らしには買いすぎじゃない?」
 ドキッとする。
 いつも雅也の部屋で料理をするときは、自然と材料代は雅也もちなのでやや心苦しく思っているのだ。諒一と叶斗という荷物の持ち手がいるので、今日は月曜以降の買い物も済ませたのだ。
 (材料が余ったからって言ったら受け取ってくれるよ、ね?)
 『買い物に行ってきます』というたびに一緒についてきてお金を払うのだ。『買ってきました』というと、レシートを必ずと言っていいほど提示させられ、お金を払うのだ。
 (でも、今日はこの土日分とまとめて買ってるもの。大丈夫。)
 くふふとわらう綾奈の耳元で諒一ががなる。
 「アヤ!早く開けろよ。重いってば。―――なに、笑ってるんだよ、気持ち悪い。」
 「あ、ごめんね、諒一。すぐ開けるわ。…って、気持ち悪いって何よ?!」
 「姉貴。思い出し笑いって、傍から見てるとおかしいから。」
 にっこりバッサリ切り捨てるのは勿論叶斗である。
 「それより開けろってば!」
 急き立てられるように綾奈はバックから鍵を取りだして急いで鍵を開けた。
 「もぅ。せっかちだから、二人とも。―――さぁ、どうぞ。部屋はいつものところに布団を用意してるからそこを使ってね。」
 綾奈よりも先にドタバタと部屋に入ろうとする諒一と叶斗に綾奈は後ろから声をかける。
 「わかってるって。」
 「了解。いつもの部屋だよね。」
 勝手知ったる姉のマンションだ。もう何回も来ているので、そんなことは分かっているとの答えだ。
 「買い物袋は冷蔵庫の前に置いててね。」
 今のままの勢いでは、自分たちの寝る部屋に買い物袋を置いてきそうだと綾奈は苦笑交じりに忠告する。綾奈がキッチンに到着するころには二人して買い物袋を片付けてくれている最中だった。
 「ねぇ、姉貴。」
 「何?どうかした?」
 買ってきたお肉などを冷蔵庫に入れる手を止め綾奈が振り返った。
 「これ、何に使うわけ?」
 一緒に買い物袋の中身を片付けてくれていた叶斗が取り出したのは缶詰である。そこには大きくパイナップルと書かれている。
 「何に使うって酢豚に入れるのよ、勿論。」
 「酢豚~?」
 当たり前のように応える綾奈に、今度は綾奈の後ろから奇声を発したのは諒一である。
 「何よ?」
 野菜室をごそごそと片付けていた綾奈はトマトを片手に振り返った。
 「姉貴、酢豚にパイナップルなんて入れたことないよ、ね?」
 半分は諒一に確認するかのごとく問いかける叶斗に、諒一も大きく頷いた。
 「「そんなにパイナップルが入った酢豚を食べたければ、外に食べに行きなさい。」」
 「って言ってた。」
 と、二人の声が重なった。
 「え、あ、そう?―――ほら、久々に二人にふるまう酢豚だから。」
 「『パイナップルはフルーツであっておかずじゃないわ』って言ってたぜ、アヤは。」
 「そうそう。どんなに食べたいって言っても聞いてくれなかったし―――最近、何かあった?」
 リビングでテレビを見ていた諒一も、テレビを消してキッチンに来ている。その隣には叶斗もいて、二人して綾奈を疑わしげな瞳で見つめている。

#日記広場:自作小説

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2011/11/06 00:07
月黒さま

酢豚にパイナップル、私も外でしか食べたことないですよ~

私は自分の作品を見てると昔のが書けてたって落ち込むこと多々です><
いつもありがとうございます。

綾奈の気持ちには綾奈自身より弟たちのほうが敏感な気がします^^
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2011/11/06 00:01
ひゆきさん

弟くん二人は、まるで父親のように綾奈の行動を厳しくチェックですよ~v
「ひとり暮らしには買いすぎじゃない?」
のツッコみに綾奈は
「おほほほ・・・。」
とかわしていたいはずか
「実は…。」
と正直に話すかは次回に持ち越しでお願いします^^

酢豚のパイン入り、実はここで使うつもりでした。
いろんな方にお答えいただいてうんうんって一人で頷いてました。

次回は後編なので早めにUP出来ますように(って他人頼みか><。。)

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2011/11/05 23:13
酢豚にパイナップル…。食べたことないや^^;

最近自分の作品読み直して、思わずニヤニヤしてます。サークルの管理人:月黒です☆

二人は綾奈の変化に気づいているかな??(ドキドキ)
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2011/11/05 23:04
綾奈さんは弟くんたちが大好きなんですね。
弟くんたちもまたお姉さんが大好きなんですねw
とても微笑ましい光景が浮かびました('-'*)

弟くんたちのチェック、厳しいですね~!
ひとり暮らしには買いすぎじゃない?
のツッコミには答えていませんが・・・
どうしたんでしょうかね?

酢豚のパインは雅也さんが好きってことですか。
ほぉ~www
以前、ブログに酢豚のパインについて書かれていましたが
このネタのためなんでしょうか?

さてさて
綾奈さんはどう答えるんでしょうね?
はぐらかす?
カミングアウト??
次回も楽しみにしています☆




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