ヘンな叔父さん♪
- カテゴリ:小説/詩
- 2011/12/03 18:05:29
これはペンです
円城 塔 新潮社
「これはペンです」と「良い夜を持っている」の2編からなる。
どちらも少々、難儀な肉親を描こうとする物語。
「これはペンです」では姪が叔父を、「良い夜を持っている」は、
その叔父が自分の父親について描いている。
ただし、描こうとしている当人の内面に迫ろう、としているのではなく、
客観的に分析しようとしているかのようだ。
意地の悪い例えになってしまうかもしれないが、サルの群れの中の
特定のサルの行動を追っているかのよう。
どちらの話でも具体的な人物の名前は出ず、「姪」「叔父」「父」「母」
としか呼ばれない。
そういう点からも普通の小説、というより論文でも読んでいる感じがする。
「これはペンです」に出てくる叔父は、本の中の表現を借りれば
「書く動機を欠き、書く方法だけを探し続ける」
(一見、意味があるようで、まるで意味がない)論文を自動生成する
プログラムを作ったり、ケガをしたらしたで、自分の血をインク代わりに
手紙を書いたり、と捉えどころがない。
様々な手段で書く事により、それらの中に自分自身が現れてくるのでは、
と信じているようだ。
そして、姪は、それより早く叔父を見出そうとしている。
やっていることからすると、この叔父は天才なのだが、自分の肉親には
いてほしくないタイプ。
離れた所から観察する分には面白いかもしれないが、近くにいると迷惑
な気がする。
「良い夜を持っている」は「これはペンです」に出てきた叔父が主人公。
ある教授が父親の症候群を研究した結果をまとめた本を自分(叔父)なりに
「翻訳」して、父親を描こうとしている。
叔父が描こうとしている父親は、異常な記憶力の持ち主。ただ、その記憶
の方法は、一般人とはかなり異なっており、時系列がゴチャゴチャだったりする。
会社員として、普通の会社では仕事はできないが、子供の面倒を見たりなど、
親として役割は(おおむねだが)果たす事はできる。
叔父は意図的に奇妙な行動をしているが、父親は自分にしてみれば、ごく
当たり前の行動をしているだけで罪はないが、近くにいたら扱いにくいという点
では変わらない。
この父親にして、この子供あり、というところだろうか。
観察対象として面白そうです。
対峙出来るキャラですね、このお父さん。
隣家にいたら、ワタクシもじっくり観察しそうです(汗)。