伝えたい言葉14 後編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/12/06 00:44:03
「あれ、さっきどなたか来られたんじゃなかったの?」
のんきに尋ねるのは当然綾奈だ。この部屋の空気を読むなどという長けた技は、悲しいかな、持ち合わせてはいない。
いつもならここで堰を切ったように問い詰めてくるのは諒一なのだが、ここは真剣に怒っている叶斗にその権利を譲ることにする。
「これ、忘れものだって届けてくれたよ、親切な人が。」
そう言って、先ほど雅也から預かった茶封筒を綾奈の両手に乗せた。
「え?あぁっ!!」
そう叫ぶと髪を乾かしていたタオルを放り出して中身を確認する。
「よ、良かった~っ。明日の会議で使う書類だったの。昨日家で見つからなくって、貴方たちが帰ってから心当たりを探そうと思ってたところだったのよ。」
「心当たりって?」
「会社を出た時には持ってたのは確かだから、家じゅう捜索してそれでもなかったら―――。」
「なかったら?」
「龍野さんにお伺いしいしようかなって…。」
また一度、部屋の気温が下がる。
「その“龍野さん”が持ってきてくれたよ。部屋に忘れてたってね。」
「そうなの?明日お礼を言わなきゃね。」
「それは僕が十分言っておいたから大丈夫だよ。それより、姉貴と“龍野さん”ってどういう関係なのさ?」
「どういうって?」
「毎日夜8時ごろ。このマンションに居てるって言ってたけど、この部屋じゃないんじゃない?」
「…なんで突然、そんな話になるわけ?」
「パイナップル入りの酢豚、このマンションに来てからだよね?」
「いやに拘るわね、パイナップル入りの酢豚に。」
呆れ顔の綾奈に叶斗はガシッと綾奈の両腕をつかんだ。
「大事なことだよ。―――きっと親父が生きてたら同じ質問をしていると思う。」
綾奈は『親父』の言葉に少し顔をしかめた。
「そんなこと聞かないと思うわよ。―――確かに酢豚にパイナップルを入れるようになったのはこのマンションに来てからよ?」
それがどうかしたの?と問う綾奈に、叶斗ではなく諒一が問いかける。
「それって、あの男の為かよ?」
「あの男?」
「“龍野さん”だよ、兄貴が言っているのは。」
「龍野さんの為っていうより、何となくよ。」
「何となくって?」
冷静に突っ込みを入れるのはいつだって叶斗だ。
「ほら、今日食べたら肉が柔らかかったでしょ?パイナップルをいれるとそんな相乗効果があるみたいなの。だから入れるようになっただけよ。」
「じゃぁ、あの男の為じゃないんだな?」
「もう、しつこいわね。私はそろそろ部屋に戻るからちゃんとお風呂に入って栓を抜いておいてね?」
綾奈はそう言うと、さっさと自分の部屋へと入っていった。
その場には消化不良な二人がポツンと残されたのだった。
「どうする?」
「―――しばらく様子を見るしかないんじゃない?それに“龍野さん”の事ももう少し聞き出さなきゃだよ、兄貴。とりあえず、相手がどう思っていようと姉貴にはそんなつもりはないみたいだからね。」
「向こうは完全にその気、だぜ。ただの同僚だと思ってるだけの女を毎晩家に呼ぶわけはないからな。」
その辺の男心っってものが姉貴には分からないんだよ。俺はその“龍野さん”に同情するけどね。」
「まぁ、その辺は姉貴だから、ね。」
「それにしても、毎晩8時ごろにアヤがこの部屋にいないことをよく知ってたな?」
それが本当に不思議そうに問う諒一に叶斗は不敵な笑みを浮かべた。
「女性の一人暮らしは危険だからね。毎晩バイト帰りにこっちにちょっと寄り道してたってわけ。」
「―――それでアヤの一人暮らし後のお前の帰宅が遅かったのか。っていうか、それ軽くストーカー入ってないか?」
「家族だから、ストーカーじゃないよ。それにしても明日、“龍野さん”とかいう人の部屋番号もしらべなきゃ、だぜ、兄貴。」
不敵な笑みを浮かべる叶斗に、諒一はうすら寒いものを感じるのであった。

























コメありがとうございます。
綾奈は素で気づいてません。
因みに叶斗がちょっとブラックが入っているのにも気づいていなかったりします。
弟くんに同情されてしまう雅也…。
可哀そうかも(*>艸<)
弟くんは、どうなんですかね?
綾奈の周りに男の影が!!
っていうのが初めてなので
多分、吟味するんじゃないでしょうか^^
ここで「伝えたい言葉」の起承転結の起が終わるので
これからは先に「迷宮」をUPしていこうかなって思ってます。
深くかかわっている物語なので
先に完結している方をUPしようかなと…。
また楽しみにしていただけるよう頑張りますね
部屋に戻った後、取り乱してるんでしょうか?
でも、ホントに素であの調子のような気もしないでもない・・・?
叶斗くんがスカされてるような?(^^;
敵方であるはずの弟くん2人が同情するほどの
綾奈さんの鈍感ぶり(^^;
雅也さん、苦労しそうですね~( ̄m ̄*)
ところで
弟くんたちはどうしたいんでしょうか?
綾奈さんに近寄る男の影を排除したい?
でも、幸せになってほしいと思ってますよね。
まずは雅也さんの吟味ってとこでしょうかね・・・。
続き、楽しみにしています☆