「…ポチ」
みなわの声に反応して、フェレットがふるふると首を横に振った。
「じゃあ、チビ」
フェレットがふるふると激しく首を振る。
「キキキ（いい加減にしろ）」
「だって、どんな名前を言ってもいやだっていうんだもん」
みなわはフェレットに名前を付けている。
なかなか決まらなのは、フェレットがどの名前もいやだと首を振るからだ。
「じゃあ、マリリンってのは？」
ふるふる！
「もう～！やだ！ピーちゃん決めてよ」
「キー！？」
フェレットがおれを見る。
え～！俺が付けるのかよ！？
名前なんか思いつかない。
俺に思いつく名前と言えば…。
「キキーキイ」
さっき外で見たオリオン座を思い出して、俺はあてずっぽうでそう叫んだ。
すると、フェレットのやつが大きく頷いた。
「リゲルか～。ピーちゃんよくわかったね」
ふん！俺はたださっき空を見てきただけだ。
「言われてみれば、リゲルだわ。…ん？」
俺とみなわは同時に視線を感じて振り向いた。
「あんたも、名前がほしいの？」
オオカミが大きく頷く。
「じゃあ、ポチ」
ふるふる！
「え～、じゃあチビ」
ふるふる。
みなわ、ポチとチビ以外に思いつかないのかよ～！
「ピーちゃん！」
また俺か～！
俺の名前のストックなんか、たかが知れてるんだ。
あと思いつくと言ったら、おうし座の…
「キキキキ（アルデバラン）」
「ややこしいな～アルデバランってアルでいい」
オオカミが頷いた。
「よし、これでＯＫ」
部屋の隅から、騒々しい抗議の声が上がった。
ピヨピヨピヨ！
俺は、みなわを見もせずに、
「キキキーキキ、キキ（ポチとか、チビとかはだめだぞ）」
と言った。
「じゃあ、ピーちゃんが好きにつけてよ」
なんで、なんで俺がこいつらの名付け親にならなきゃならないんだ？
俺は大きく深呼吸をして考えた。
どうせみなわには考える気がないんだ。
結局俺が押し付けられるとしたら、さっさとやっちまおう。
「キキ（ララ）」
ヒヨコは大喜びで、勝利の声を上げている。
ちょっとだけ、満足感があることに気づいて、俺は複雑な気分になった。