Nicotto Town



この想い、届きますように(12月大会用)

 「ねぇ、ママ。今日もお話して?」
 夜。
 自分用のベッドに潜り込んだ花音はいつものように母親に寝物語を頼む。
 「そうねぇ。今日はどんな話がいいのかしら?」
 「んとね~、ほら、お姫様が氷になる話。」
 それを聞いた母親が微笑んだ。
 「まぁ、花音。あれは氷になる話じゃないわよ?」
 「でもでも、氷だもん」
 花音は頑として引かない。
 母親はコホンと小さく咳払いをしてから話し出した
『昔々、あるところに笑わないお姫様がいました。あまりにも笑わないので「氷の精」に魅入られたのだと評判でした。
 あわてたのは王様です。なにしろ、お姫様は王様の唯一の子供だったからです。
 「なんとか、笑わせることは出来ないのか?」
 笑わないお姫様の様子に胸を痛めたれた王様が、国の魔法使いに相談に行きました。
 「お姫様が笑わないのは心の底にウサギを飼っているからです。」
 魔法使いのいうことが理解が出来なく、王様が詳しく教えてくれるように頼みました。
 「ウサギは知っての通り、寂しいと死んでしまう動物です。つまり、心の中でウサギを買っているお姫様は心が死んでしまっているのです。」
 そう言った魔法使いは、一つだけお姫様の中にいるウサギを追い出すことができる方法を伝授しました。』
 そこまで静かに聞いていた花音だが「伝授」という言葉が分かりません。
 「ねぇ、ママ。伝授ってなに??」
 「そうねぇ、お姫様を笑えるようになる方法を教えるって事かしら?
 少し噛み砕いた話に頷いで、花音は先を急かせた。
『王様は国に、”お姫様の中のウサギを生き返らせ、満足させるウサギを連れてきたものに、姫と結婚する権利をやろう。』
 「権利って??」
4歳の花音には難しい言葉ばかりです。ついつい脱線してしまうのだが、母親はにっこりと笑って返事を返す。
 「う~ん…。お姫様と結婚してもいいよって王様が言ったってことね。」
 「うんうん、それで?」
『国中の男たちがお姫様の前にウサギをもってきたの。お金でかき集めた小さいウサギや茶色いウサギ、耳の長いウサギなど、いろいろね。でも、お姫様が笑うことは決してなかったの』
 そこまで話すと、母親はベッドに寝ている花音のおなかをあやすように。眠りを誘うように優しく叩いた。
『王様が「もうダメだ」と諦めたときに、一人の男の人が「雪で出来たうさぎ」を持って来たの。王様もお姫様を笑わせようとやってきた男たちもみんな笑ったの。こんなのはウサギじゃないって。――-でね、花音ちゃん。お姫様はこのウサギを見るなり、泣き出しちゃったのよ。』
 「ママ。笑わないとダメじゃないの?泣かせっちゃったらメ―なの。」
『そしてそのお姫様は、その男の人が持って来た雪で出来たうさぎを手に取ると、にっこりと笑って見せたの。
 「私が求めていたのは、お金にモノを言わせて集めたウサギではなく、真心のこもったウサギでした。」
 ってね。
 雪で出来たうさぎは翌日にはただの雪と赤い目に使われた南天の実だけが残ったのだけれど、それからは、お姫様は笑顔で過ごすようになり、雪で出来たうさぎを持って来たその男の人と幸せに暮らしました   おしまい』
 
 それまでわくわくと話を聞いていた花音は、この話が終わるころにはすっかり夢の中に入り込んでいました。
 母親は、花音が寒くないようにしっかり布団をかけてやってから、一階のリビングまで下りて行った。
 
 「やぁ、お疲れ様。わが姫君はしっかり夢の中かな?」
 リビングには、仕事から帰宅し、くつろいでいる夫の姿がある。
 「えぇ、おとぎ話を話したら、もうすっかり夢の中、よ?」
 「それじゃぁ、シャンパンを開ける前に、ちょっと外に出てみないか?」
 いつまでたってもいたずら好きな夫の笑顔に母親も笑って見せた。
 「毎年、同じものだとそれはサプライズにはならないわよ?」
 そういいながら、エスコートされるままに玄関へと向かった。

 「ではでは、お姫様。今宵のプレゼントでございます」
 玄関の塀の上には一列に並んだ雪で出来たうさぎが所狭しとならんでいる。
 
 明日にはきっとただの雪と赤い目に使われた南天の実だけが残っていることだろう。だが、それは母親にとっては何にも代えがたいクリスマスプレゼントだった。

 このおとぎ話が花音の両親の話だと花音がしるのは、もう少し大人になってからだろう。
 だが、お金では買えない素晴らしいものがあるのだと、花音には知ってほしい。
 そう思う夫婦の願いは、何年もの時を経てかなえられることだろう。
 そう信じている二人だった

#日記広場:自作小説

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2011/12/25 01:07
ひゆきさん

いつもありがとうございます。
お母さんの心を溶かしたのはお父さんの雪うさぎでしたって話でした。
実は、この話も仕事をしながらごそごそ考えていた話でしたw
(頭の中で、でしたけど・・・)
ラストはその時考えていたのとは全く別物になってしまいました^^

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2011/12/24 23:49
お姫様の心を雪うさぎが溶かしたんですねw
その昔、お母さんの心も
お父さんがくれた雪うさぎで溶かしたってことでしょうか?
毎年、雪うさぎのプレゼントだなんて
お父さん、かわいいですね♪
花音ちゃんの「メーなの」もかわいかったです☆

とっても素敵なお話でした❄




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