その頃、城の地下道でピーちゃんはとんでもないものを見つけていた。
大勢の人間が地下牢に閉じ込められていたのだ。
その中の一つに、赤間道士がいた。
「ピーちゃん、たすけて！」
「キキキ、キキ？（何やってんだ、そんなところで？）」
「助けてください！明日の朝食のカボチャスープにするって言われたんです！」
「キキキ？（だれに？）」
「この城の城主に！」
「キキキ、キキ、キー（お前のせいで、俺たちはとんでもない目に合わされたんだぞ）」
「ごめんなさい！謝りますから、助けてください！
「キー（待ってろ、みなわに言ってくる）」
ピーちゃんが急いで部屋に戻ると、部屋はもぬけの殻だった。
「キー！（みなわ！）」
ピーちゃんは、かすかに聞こえる音楽を頼りにパーティー会場を探した。
行く手に、オオカミとフェレットが見えた。
「キキ（何してるんだ？）」
アルとリゲルはクレオンが怪しいことを必死に説明した。

三匹がいるのは会場を見おおせる場所だった。
華やかな部屋には、楽団が音楽を奏でて、飲み物がいっぱい並んでいた。
クレオンがグラスをみなわと相変わらず大きな荷物を持ったジムに手渡し、乾杯している。
みなわがグラスに口をつけたのと、ピーちゃんが『飲むな！』と叫んだのは同時だった。
グラスの飲み物を口にした途端、ジムとみなわは床に倒れた。
クレオンの笑い声が城に響きわたった。
「やっと手に入れたぞ！これで宇宙は俺のものだ！」
使用人たちが、みなわと、ジムと、荷物をを運んでいく。
三匹は後を追った。
二人は荷物ともども地下の牢獄に放り込まれた。
赤間道士の嘆きの声が、よく響く通路にこだました。
赤間道士の声が消えると同時に、みなわはガンガンする頭をさすりながら目を覚ました。
「何よこれ！？どうなってるの！？」
すぐ横でジムも目を覚まして、きょろきょろしている。
「なんか、やばいみたいですね？こういう時はいつでも女神が助けに来るんですが…」
三匹は地下牢の入り口に忍び込んだ。
アルとリゲルは、ピーちゃんを見た。
「キキー（鍵を探すんだ）」
小さなリゲルとピーちゃんはすぐに鍵を探し始めた。
アルは、大きな首を傾げてしばらく考えていたが、はっとして走り去った。
「シャー」
リゲルは鍵の束を見つけると、小さな口にくわえて急いでみなわのところへ持って行った。
「ワー！ぬいぐるみじゃなかったんですか！」
ジムが思わず大声で叫んだ。
「シッ！大声を出さないの！第一そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。この中から鍵を見つけ出さないと！」
そういうと、みなわは大きなカギの束から合うカギを探すため、一本一本カギ穴に差し込み始めた。
そこへ、アルが走って戻ってきた。
口には、タコの袋をくわえている。
ジムも自分の荷物を開けて中身を確かめた。
「よかった、瓶は割れていないみたいだ」
ピンクの液体の入った瓶を手に、ジムはほっと胸を撫でた。
「合った！出て！」
みなわは牢から出ると、ほかの牢の鍵もあけ始めた。
「キキキー！（早くしろ）」
「みんなを置いていくわけにはいかないわ」
「キー（わかってる）」
次々と扉が開き、大勢の人間と赤間道士が外に出た。
「早く城の外に出て！」
みなわは、タコの袋を下げてみんなと一緒に城の外へ走って逃げだした。
外に出た瞬間、目の前にクレオンが立っていた。
「その袋をよこせ！」
「いやだと言ったら？」
クレオンが手を上げると、武器を持った兵士たちがみなわたちを取り囲んだ。
みなわは、その中の数人の男に見覚えがあった。
ドナウ河畔のビルで、みなわを襲った男たちだった。
「無駄だ、ここから逃げ出すことはできない」
勝ち誇ったクレオンの声が、夜空に響いた。
圧倒的な数の兵士が、ジワリと包囲を詰めてきた。
リゲルがみなわの腕にしがみついて「シャー！」と吠えた。
アルが、今にも飛びかかろうとして牙をむく。
逃げ出した人々はみなわの後ろに身を隠すようにかたまる。
ジムだけが、「女神が来るんだけど…こんな時」と呟きながら、辺りをきょろきょろ見回している。
みなわは、クレオンをにらみつけて一歩前に出た。
「降伏するのか？命だけは助けてやってもいいぞ」
「降伏なんて、死んでもいやよ！」
クレオンがふりあげた手を下した。
兵士たちが時の声を上げて襲い掛かってきた。
その時、一陣の風が吹き、大きな羽ばたきの音が聞こえた！
みなわは、昂然と胸を張り夜空を見上げた。
満月の空に巨大なメガ王女の姿があった。