迷宮 10 前編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/12/27 01:23:17
翌朝。 昨日の自分の行動がとてもはずかしくって、孝也と顔を合わせるのが気詰まりな玲は、孝也が出社してから起き出して来た。
「おはようございます。」
朝の10時も過ぎた頃なので、孝也の両親も夏季も朝ごはんをすっかり食べ終えていた。
「あ、おはよう。玲さん。―――身体の方はもう大丈夫?」
そう問いかけてきたのは夏季だった。 玲に向かってそう微笑みかけてくる彼女は、昨日と同じくらい素敵な笑顔だ。
「あ、はい。すみません、ご心配をおかけして・・・。」
玲はそう言って深く頭を下げた。
「もう孝也さん、出社しちゃったのよね。玲さんの具合が悪いって言うのに・・・。」
夏季がそうぶつぶつと文句を言っている。
「そ、そんな・・・。大丈夫です。それに、お仕事ですから・・・。」
玲がそう返事をする。―――夏季はその玲の返事に嬉しそうに微笑んだ。
「よかったわ。孝也さんが選んだのが玲さんで・・・。」
「え?」
どういう意味か図りかねたように問いかける玲に、夏季はニッコリと微笑んだ。
「孝也さんが婚約したっておじ様に連絡を貰った時に、はじめすっごくビックリしたの。でね、思わず『会わせて下さい』ってお願いしちゃったの。」
夏季はそう言うと、舌を出した。
「ゴメンナサイね。すっごく大切な従弟だから、もしヘンな子に引っかかってたらって思うと居ても立っても居られなくってね。―――でも、玲さんみたいに可愛らしい子で本当に良かったわ。孝也さんの見る眼に間違いがなかったんだって。」
夏季はそう言うと、玲を残してリビングから出て行った。 一方、 孝也はいつもどおりに起床し、出社していた。
(ねむ・・・)
孝也は心の中でそう呟きつつ、社長室の机に座った。
昨夜。
あまりに不意打ちな玲の行動に、孝也はほとんど眠れず、会社に出勤となったのだ。 玲のほうはというと、いつもは孝也とともに朝食を取っていたのだが、さすがに今日は現れなかった。
(恥ずかしい・・・のか?)
そう人知れず問いかけてみる。
だがそれは、孝也にとっては嬉しい傾向だ。 なんといっても、『Kissして恥ずかしがってくれるぐらいには意識をしてもらってる』って事だからだ。
そんな埒もない考えが頭の中に浮かび、口元を緩める。 今までは『意識さえしてくれなかった』のだから、玲の中での彼の位置がかなり進歩したのではないだろうかと、勝手に思っている。
「―――でも、玲に俺の気持ちがばれたのか・・。」
そう思うと、少々バツが悪いように感じられたりもする。別に自分の気持ちを押し隠すつもりは毛頭ないのだが、やっぱり玲に知られたことには気恥ずかしくも感じるのだ。
(ま、別に悪いことしてるわけじゃないけどね。)
そう結論付けることにする。 どちらにしてもいずればれていただろうし、彼女に隠さないといけないと言うことでもない。
だけど・・・。
(今夜帰ったあと、その玲と顔を合わせることを考えると少し楽しみにも思える。)
何といっても昨夜の玲のKissは、孝也にとっても衝撃的ではあるがそれ以上に、玲のほうが自分の行動にショックを受けていたようだったから。 幸せな時間に浸っていた孝也がその時間から追い出されたのは、それから僅か、5分後だった。
「・・・た、孝也っ、この馬鹿息子っっ。お前、玲ちゃんに何をしたんだ~!!」
そう言って社長室に飛び込んできたのは、この会社の会長、滝野 毅だった。
「何って、そっちこそ何言ってんだよ?」
孝也はいつにない慌てた様子の毅を横目で見つつ、問いかけた。
(俺は、何もしてないっての。)
昨日のことを思い出しつつ、答える孝也に毅は、大きな音を立てて、机の上に片手を広げた。
「何もしてないってのか?え?? この手紙を見てみろ。」
毅はもう片方の手を孝也の方に突き出す。その手には、一枚の白い便箋が握られていた。
「なに?」
孝也は今一意味が飲み込めないものの、その便箋をひったくり眼を通した。 そこには女性らしい丁寧な文字がつづられていた。
























