迷宮 10 後編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/12/27 01:24:03
『おじ様、おば様、そして孝也くんへ
今まで、本当にお世話になりました。こんな形で黙って出て行くことを許してください。
今回の突然の孝也くんとの婚約は、窮地に陥った私のために、孝也くんにお願いをして、偽の婚約をしてもらったんです。
おじ様とおば様には本当に申し訳なく思っています。すみませんでした。
そして、孝也くん。いままで本当にありがとうございました。
これからは、偽の婚約者の私ではなく、孝也くんの好きな人と幸せになってください。
夏季さんにもよろしくお伝えください。
祖母には私のほうからちゃんと説明しておきます。 如月 玲』
そう、したためられていた。
「・・・玲っ!!」
「おい、孝也。どういうことだ?! 偽の婚約っていったい?!」
そう問い詰める毅には一言も応えず、孝也はまっすぐ社長室の入り口を睨んだ。
「・・・親父。今、暇?」
「お前、何言って?」
「悪いけど、少しの間、社長業を頼むよ。」
そう言って毅の返事を待たず、孝也は走って出て行った。
「どこ行くんだ?」 扉が閉まる直前に、毅は孝也の後姿に問いかけた。
「親父の義娘を迎えに行ってくる。」 そう不敵に笑うと、今度は後も振り返らずに走っていく。
「しっかり捕まえて来い。」
それが、放蕩親父から馬鹿息子へのエールだった。
「――――そ・・すい。玲は?」
孝也はKisaragiコンツェルン総帥の部屋に入るなりそう尋ねた。 如月邸には先ほど電話をして、不在である旨確認を取っている。玲が如月邸にいないのであれば、祖母であるカヤノの傍に居ると考えるのが妥当であろう。
「おぉ、孝也。よく来てくれた。丁度電話しようと思っていたところじゃよ。」
慌てた様子の孝也に比べ、カヤノのほうはいたって呑気にそう応えた。
「総帥、玲は?」
先ほどよりも、もう少しはっきりと孝也は発音した。
「玲か―――先ほど、玲から全部聞いたよ。玲が困っているので、お前に無理矢理偽の婚約者の件を頼み込んだってね。本当にすまなかったね。」
カヤノはそう言って頭を下げた。
「それ、玲が言ったんですか?」
「そうだよ。お前に申し訳ないことをしたって言ってね・・・。」
そう返事をするカヤノは、少し疑わしげに孝也を見やった。
「・・・違うのかい?」
「―――玲に無理やり偽の婚約者の件を持ち込んだのは私です。私が玲にそうさせたんですよ。」
そう言ってまっすぐカヤノを見つめた。
「それで、玲は?」
その返答にカヤノはゆっくり首を横に振った。
「ここにはいないよ。」
「・・・どこに行ったんですか?」
「さぁねぇ。ただ、夕食は一緒に取ることになってるから、夜までには家に帰ってくるはずじゃがな。」
そう応えるカヤノは、なぜか嬉しそうだった。
「総帥。玲との今夜の夕食の権利、私がもらってもいいですか?」
そう、問いかけた。
「玲は私のこと、多分、誤解しているんです。だから、もう一度はっきりさせてから、―――俺の家へ連れて帰る。」
それは孝也の一人称がカヤノの前で『私』から『俺』へと変わった瞬間だった。
孝也はそう一方的につげると、カヤノの答を待たずに踵を返した。
今では玲の昨夜の行動も、彼女の想いも何もかも孝也には理解できた。
玲が孝也のことをどう思っているかも、玲が孝也の好きな人が誰だと思っているかも・・・。 玲が孝也のことを好きでなかったのなら、昨夜、彼女からKissなどしないことは、ずっと彼女を見つめてきた孝也だからこそ、十分にわかっていた。だからこそ、
(あの馬鹿っ)
孝也は心の中で玲を罵った。
(何で、俺が好きなのが、夏季「姉」さんなんだよ?!俺が好きでもないやつと婚約するなんて本気で思ってるのか?)
そう玲に直接言ってやりたかった。そして、自分が本当に好きなのは誰か、伝えるのだ。
孝也はそう決意した。
今度こそ本当に、自分のありのままの気持ちを伝えて、玲に戻ってきてもらうのだ。

























コメントありがとうございます。
今週怒涛のUPで本日完結しました。
あと一話、番外編をお送りするのみになってますw
孝也くんと玲ちゃんはどうなるの!?
続きを待っています!!