Nicotto Town



迷宮 10 後編

 『おじ様、おば様、そして孝也くんへ   
 今まで、本当にお世話になりました。こんな形で黙って出て行くことを許してください。   
 今回の突然の孝也くんとの婚約は、窮地に陥った私のために、孝也くんにお願いをして、偽の婚約をしてもらったんです。   
 おじ様とおば様には本当に申し訳なく思っています。すみませんでした。   
 そして、孝也くん。いままで本当にありがとうございました。   
 これからは、偽の婚約者の私ではなく、孝也くんの好きな人と幸せになってください。  
  夏季さんにもよろしくお伝えください。   
 祖母には私のほうからちゃんと説明しておきます。    如月 玲』  

 そう、したためられていた。  
 「・・・玲っ!!」  
 「おい、孝也。どういうことだ?! 偽の婚約っていったい?!」  
 そう問い詰める毅には一言も応えず、孝也はまっすぐ社長室の入り口を睨んだ。  
 「・・・親父。今、暇?」  
 「お前、何言って?」  
 「悪いけど、少しの間、社長業を頼むよ。」  
 そう言って毅の返事を待たず、孝也は走って出て行った。  
 「どこ行くんだ?」  扉が閉まる直前に、毅は孝也の後姿に問いかけた。  
 「親父の義娘を迎えに行ってくる。」  そう不敵に笑うと、今度は後も振り返らずに走っていく。  
 「しっかり捕まえて来い。」    
 それが、放蕩親父から馬鹿息子へのエールだった。  
 「――――そ・・すい。玲は?」  
 孝也はKisaragiコンツェルン総帥の部屋に入るなりそう尋ねた。 如月邸には先ほど電話をして、不在である旨確認を取っている。玲が如月邸にいないのであれば、祖母であるカヤノの傍に居ると考えるのが妥当であろう。  
 「おぉ、孝也。よく来てくれた。丁度電話しようと思っていたところじゃよ。」  
 慌てた様子の孝也に比べ、カヤノのほうはいたって呑気にそう応えた。  
 「総帥、玲は?」  
 先ほどよりも、もう少しはっきりと孝也は発音した。  
 「玲か―――先ほど、玲から全部聞いたよ。玲が困っているので、お前に無理矢理偽の婚約者の件を頼み込んだってね。本当にすまなかったね。」  
 カヤノはそう言って頭を下げた。  
 「それ、玲が言ったんですか?」  
 「そうだよ。お前に申し訳ないことをしたって言ってね・・・。」  
 そう返事をするカヤノは、少し疑わしげに孝也を見やった。  
 「・・・違うのかい?」  
 「―――玲に無理やり偽の婚約者の件を持ち込んだのは私です。私が玲にそうさせたんですよ。」  
 そう言ってまっすぐカヤノを見つめた。  
 「それで、玲は?」  
 その返答にカヤノはゆっくり首を横に振った。  
 「ここにはいないよ。」  
 「・・・どこに行ったんですか?」  
 「さぁねぇ。ただ、夕食は一緒に取ることになってるから、夜までには家に帰ってくるはずじゃがな。」  
 そう応えるカヤノは、なぜか嬉しそうだった。  
 「総帥。玲との今夜の夕食の権利、私がもらってもいいですか?」  
 そう、問いかけた。  
 「玲は私のこと、多分、誤解しているんです。だから、もう一度はっきりさせてから、―――俺の家へ連れて帰る。」  
 それは孝也の一人称がカヤノの前で『私』から『俺』へと変わった瞬間だった。  
 孝也はそう一方的につげると、カヤノの答を待たずに踵を返した。  
 今では玲の昨夜の行動も、彼女の想いも何もかも孝也には理解できた。  
 玲が孝也のことをどう思っているかも、玲が孝也の好きな人が誰だと思っているかも・・・。 玲が孝也のことを好きでなかったのなら、昨夜、彼女からKissなどしないことは、ずっと彼女を見つめてきた孝也だからこそ、十分にわかっていた。だからこそ、
 (あの馬鹿っ)  
 孝也は心の中で玲を罵った。  
 (何で、俺が好きなのが、夏季「姉」さんなんだよ?!俺が好きでもないやつと婚約するなんて本気で思ってるのか?)  
 そう玲に直接言ってやりたかった。そして、自分が本当に好きなのは誰か、伝えるのだ。    
 孝也はそう決意した。  
 今度こそ本当に、自分のありのままの気持ちを伝えて、玲に戻ってきてもらうのだ。

#日記広場:自作小説

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2011/12/29 00:14
柏木由紀さん

コメントありがとうございます。
今週怒涛のUPで本日完結しました。

あと一話、番外編をお送りするのみになってますw
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2011/12/27 10:20
続きが気に気に気になりますーーーーーーーーーーーーーーー><><><><><

孝也くんと玲ちゃんはどうなるの!?

続きを待っています!!




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