迷宮 11 前編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/12/28 01:06:59
玲は祖母に本当のことを告げて、まっすぐ両親の墓を訪れた。
そして、静かに手を合わせる。 ちいさいころに亡くなった両親のことは玲は余り覚えていない。 だが、何かあった時は必ず、墓を訪れ、自分で報告することにしているのだ。
「お父様、お母様。―――どうしたらいいの?」
玲は墓石に手を触れ、そう呟いた。 だが、どうしたらいいかなど、応えてくれるはずもない。
(忘れられるの、かな・・・?)
そう自問してみる。
今朝早く自宅に戻った玲は、ずっと孝也のことを考えていた。
『孝也くんの好きな人が、夏季さんみたいな人じゃなかったらよかったのに・・・。』
そう思いもした。 そうすれば、自分だってがんばれただろう・・・。 玲にとって、昨夜、孝也に自分からKissしただけで精一杯だった。
本当によく頑張ったと思う。
そう思いながらも、また新たな涙を流した。
「泣くくらいなら、逃げなきゃいい。」
玲の耳に、あきれた声とため息が聞こえた。
玲はその声に大きく肩を震わせ、顔を上げた。
コツ。コツ。・・・。
墓の前で動けずにいる玲に一歩一歩近づく男性の靴の音が響く。やがてその音は玲の真後ろで止まった。
「玲?こっちを向いてくれ?」
優しく耳元で紡がれる言葉に従い、玲がゆっくりと振り返った。
「孝也くん・・」
玲は知らず知らずのうちにそう呟いていた。
「なんで、いなくなった?」
少し怒ったような孝也の声に、玲はそっと俯いた。
「・・・だって・・・。」
玲は、そう言うとまた押し黙ってしまう。その言葉を続けたのは、質問をした孝也だった。
「俺が夏季さんを好きだと思ったから?」
そう問いかける孝也に玲は俯いたまま頷いた。
「俺は「夏季さんを好きだ」って、一度でも玲に言った?」
「・・・・・。」
「思い込み、だと思わないか?」
「―――だって、夏季さん。あんな素敵なんだもんっ。孝也くんが好きになったって仕方ないって思うもん!!」 「当たり前だろ。俺の従姉だから。俺の好きな人は別にいるよ。」
「・・・・・・。」 孝也のその言葉に玲は背中を向けた。
「―――知りたく、ない?」
そう問いかける孝也に玲は静かに首を振った。 玲の肩で、長い髪がそっと広がる。 孝也は玲にそっと近づいて、その後姿をそっと抱きしめた。
「俺がずっと好きだったのは―――愛していたのは玲、だよ。」
「え?」
玲の身体が揺れ、その背中が孝也の胸に深く沈む。
「ずっと、好きだった。玲がはじめに婚約するずっと前から・・・。だいたい、どれくらい相手が困っていたとしても、好きじゃないヤツと婚約なんてしないよ、俺。」
そういって一層強く、玲を抱きしめた。 その孝也の腕を玲の涙がそっと濡らした。
「・・・玲。玲から俺に愛の告白はないの?」
そう悪戯っぽく耳元で囁く孝也の耳に、か細い声が響いた。
「私も、孝也くんが好き、です・・・。」
そう言いながら、孝也の腕を抜け出し、その唇にそっとKissを落とした。
孝也は玲に嬉しそうに笑うと、彼女の腕を捕まえて、彼女の両親の前で誓いのKissを交わす。
それは、半年後に行われる結婚式の予行演習だった。
























