迷宮 11 中編
- カテゴリ:自作小説
- 2011/12/28 01:08:24
12月25日。
世間一般にはクリスマスだが、如月玲にとってはそれよりも大切なイベントがある。 元婚約者の後輩であり、今年彼女の婚約者になった『滝野孝也』の25回目の誕生日なのだ。 二人の婚約はそもそもすんなりいったものではなかった。 彼女は今年、婚約者であり、幼馴染だった『山本 翼』と婚約していたのだが、彼には他に好きな人がおり、その彼女と勘当覚悟で駆け落ちをしたのだ。山本からそのいきさつは直接玲にも話があり、そのことを聞かされたのは玲と、あともう一人、幼馴染の孝也だった。その事情を知った孝也は玲のことを思い、偽の婚約者を買って出たのだ。
二人はすぐに婚約をし、同居生活をはじめるようになった。その時孝也はすでに玲のことを愛していたのだが、孝也はそのことを告げず、また玲のほうは孝也が好きなのは、彼の従姉である夏季だと思っていたのだ。玲は孝也のことをいつしか愛するようなるが、孝也と夏季が一緒にいるのを見ることに耐え切れず、滝野家を出たのだった。
孝也はすぐに玲を追いかけ、誤解を解き、晴れて二人は婚約を改めて交わしたのだった。
玲の祖母にその報告に行ったとき、
「わかった。ただし、結婚するまで手を出すんじゃないぞ、孝也。」
そう言って二人を祝福してくれたのだ。 そして、その命令を二人は今でも忠実に守っている。
(本当はもう少し時間をかけたかったけど・・・。)
孝也は何かの拍子にまだお互いの気持ちを確信できなかった時のことを思い出して、そんなことをふと思ったりすることもある。 当初の予定ではこんなにすぐに一緒に住むことになるとは思っていなかったのだ。 山本ではなく自分が傍に居ることに玲に少しずつ馴れてもらってから同居(同棲)を持ちかけようと思っていたのだ。 だがそれは、孝也の両親の出現により消え去った。 孝也の両親(主に母親が)玲との同居を望み、それを実現させた。
二人きりでいると、まだ気持ちがついていっていないであろう玲と、すぐにでも次の段階に進みたいと思う自分との間の防波堤になってくれていたのだ。
暴走しないように・・・。
毎日そんなことを考えていたのがつい昨日のことのように思える。そして、これでよかったのだと今では心のそこから思えるのだ。
「ねぇ、孝也くん。もうすぐお誕生日だよね。なにか欲しいものってある?」
玲はそう問いかけた。 二人が改めて婚約をし、孝也の両親と玲の祖母を説得し、二人は滝野家に再び同居となったのである。
そして、初めての彼の誕生日なのだ。どうしても彼の欲しがっているものをプレゼントしたい。
「・・・玲のくれるものなら何でもいい。」
孝也はやや間をおいてそう応えた。 だが、幼馴染を長くやってきた玲にはそれが孝也の本心だと額面どおりに受け取るはずがない。
「なんでも言ってね。せっかくの誕生日なんだもん。」
「―――ホンとに、いいんだ?」
そう聞く孝也の瞳の奥に何かが光った。それは玲も気がついたのだが、まさか今更、『やっぱり、ダメ。』なんてことを言えるはずがない。
「う、うん・・・。私にあげれるものなら・・・。」
玲がそう言うと、孝也はニッコリと笑った。
「わかった。じゃぁ、『玲』ちょうだい。」
孝也はそうこともなげに言う。
「!!」
半分予想していたものの、孝也の言葉に玲は顔を真っ赤にする。
「無理だったらいいよ。玲にもらえるものなら何だって嬉しいし。」
そう、無理強いはしない。玲の意思でもらいたいのだ。
「う・・・。わかりました・・・。」
玲の返事に孝也は嬉しそうに笑う。
「玲をまるごと、ね。楽しみにしてる。」
孝也はそう満足そうに言うと、玲の額にKissをした。
























