蜜月(迷宮 番外編) 前編
- カテゴリ:自作小説
- 2012/01/03 20:20:49
「おめでとうございます。二ヶ月に入られたところですよ。」
その週、いつもより体調が悪かった玲を心配して、同居している(年の半分は海外で放蕩生活をしている)父毅に社長業を押し付け、滝野家の所有する総合病院に連れて行った孝也に産婦人科の医師はニコニコと告げた。
「え?」
イマイチ言っている意味を飲み込めていない様子の孝也に、医師はもう一度言葉を伝えた。
「妊娠していらっしゃいます。ちょうど二ヶ月目に入られたところです。」
その時の孝也の顔は、驚きと嬉しさと、そしてちょっと悲しそうな複雑な顔をしていたという。
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「ねぇ、そんなに心配しなくて大丈夫だよ?」
妊娠がわかって数ヶ月。何度この言葉を伝えただろう?
玲はそう思いながらまた言葉を紡いだ。
玲の妊娠が発覚したとたん、孝也はいつも定時に仕事を終え帰途についている。―――いや、無理やり仕事を終わらせて帰ってくるのだ。
だが、そこは何事にも完ぺき主義の孝也だ。仕事に手を抜くことはないし、ちゃんと終わらせてくるのだ。いつも(孝也の速度)の1.5倍の速度で仕事をやっつけるものだから、彼の補佐をしている秘書などはたまったものではない。(先日など、もう少し何とかならないものかとその秘書から泣きつきの電話が玲の下にあったくらいだ。)
「玲は自分がしんどくても我慢しちゃうところがあるだろ?だから俺が見張ってないと…。」
「大丈夫だって。お義父さまもお義母さまも良くしてくださってるもの。」
それは孝也にも分かってはいる。だが、それは孝也を安心させるのかと言えばそうではない。
玲を喜ばせるのも甘えさせるのも、気をつけてあげるのも自分でありたいのだ。家族になったとはいえ、自分よりも玲の世話をしている両親が恨めしくて仕方が無いのだ。
(しかも親父のヤツまだ『隠居』なんて年じゃないくせに、俺に仕事を押し付けて完全に隠居してしまったし…。)
「それに、一日仕事をして帰ってきた孝也くんにこんなにイロイロしてもらっちゃうと、こっちの方が悪いなって思っちゃうし…。」
「なに?玲は俺にかまわれるのって好きじゃないの?」
ちょっと自分らしくないかなと思うようなセリフを吐いてみる。
























