剣と寒紅 福島次郎
- カテゴリ:小説/詩
- 2012/02/11 02:23:36
若いころ 三島由紀夫氏と交流のあった筆者が
高校教師の定年を迎え 還暦を過ぎたころ
思い出を書き残しておきたいと思った。
それが この作品。
本人の手紙の内容を掲載したことから
遺族から 出版差し止め請求の訴訟をおこされて
夫人の没後に出版された。
関係者の多くが実名で登場
作家 俳優 歌手なども 実名で描かれている
ほんの少し ゆかりのある人の名前が取り上げられていた
三島由紀夫が 市谷自衛隊駐屯地にて 切腹して果てたころ
靖国通りをはさんだむかいの 四谷坂町に私は住んでいた。
新宿通りが半蔵門に突き当たる少し手前
麹町二丁目から 国立劇場 最高裁判所 国会議事堂へ
その通りにあった小さなスナックに勤めていた
時代背景として 日吉ミミという歌手の
「男と女の数え歌」が どの店でも繰り返し流れていた
という記述があるけど
彼女の所属する 小さなプロダクションが 四谷三丁目にあり
このスナックのマスターの友人として 客になっていた。
日吉ミミになる前 本名の小池から
池和子という演歌歌手としてデビューしたけど
ヒット曲にはめぐまれていなかった
名前を変えて出した 「男と女のお話」という歌がヒットして
紅白にも出ることができたのだ。
直接会ったことはないけど
プロダクションの社長が夫婦でポスターと ドーナツ盤を持って
「店にポスターを貼らせて」と持ってきたのを覚えてる
弟は 赤坂TBSの前にある 喫茶店 「一心」に勤めながら
姉のために 仕事が終わると レコードを売り歩いていた。
一心のコーヒーはおいしかった
福島珈琲のブレンド豆で コロンビア ブラジル モカ ジャワ
香り コク 苦味 酸味 バランスが最高のドリップコーヒー
横道から戻って
著者は三島由紀夫の「仮面の告白」を読んで
作者に会いに行った。
それがきっかけで 交流がはじまったのだ。
実家にも招かれ 両親とも 親しい付き合いをするようになった。
「仮面の告白」の中には 同性愛をテーマとして書かれた部分も
それが世間にセンセーショナルな受け止め方をされて
ヒット作となった。
福島氏は その中で登場するゲイバーの店について
三島に質問をするために 家を訪ねた
文学青年的な質問だったら請け家つけなかったかもしれないけど
そういった質問だったので
訪れたその日に 中に招き上げ
それをきっかけに 親しい仲になっていった。
この時代には カミングアウトなど できるはずもない
ひたすら胸の奥にしまいこんで 他人にさとられぬよう
ひっそりと暮らしていた。
三島由紀夫も 仮面の告白 禁色 などを発表したあとは
一転として そんな色などみじんも感じさせない作品にと
肉体のコンプレックスも ボディービルによる肉体改造へ
のめりこんでいく
三島由紀夫氏が亡くなったのは 1970年
福島次郎氏は 2006年
この「剣と寒紅」を出版したのは 1998年
日吉ミミさんは 2011年死去