「進歩」は「退化」?
- カテゴリ:日記
- 2012/02/11 23:07:12
華氏451度
レイ・ブラッドベリ 著
宇野利泰 訳
本が禁制品となった世界。
本は麻薬か伝染病のように忌み嫌われ、
発見次第、焼却処分される。
主人公ガイ・モンターグは本の焼却処分
を行う「焚書官」
「逆消防士」とでも呼ぶべき仕事。
モンターグは、とある焼却処分の現場で、
偶然から禁制品の本を手にしてしまい、
自らの仕事に疑問を持ち始め、ついには
追われる身になってしまう。
ちなみにタイトルの”華氏451度”は、摂氏
だと233度。
この温度は、紙が自然発火する温度だという。
巻末の解説によると1950年代のアメリカの
マッカーシズムを風刺するために書かれた
らしい。
だが、モンターグの上司ビーティの語る
「焚書官の仕事の来歴」
の話は、今の事を言っているのでは、
と思えるほどだ。
曰く「テレビなどのメディアが発達し、
スピードを求められるあまり、複雑な
事は省略され、短く単純化される」
曰く「深く考察することは敬遠されるよう
になり、様々な事は、ますます省略
・単純化される」
曰く「手っ取り早く、結果だけ手に入れら
れるものが好まれる風潮が広まる」
伊坂幸太郎「魔王」の中で出てきた
「お前たちのやっていることは、
”思索”でなく”検索”だ」
というセリフがふと頭をよぎった。
「分かりやすい一言」の連呼。
なんでもかんでも単純な
「二項対立の図式」
に還元する手法。
どこかの国でよく使われているような気
がするのは、考えすぎだろうか。
さらにグサッとくるのは、本作の中で、
本が禁制品になったのは、暴走した
政治家が勝手に決めたのではなく、
多くの一般の人が求めた結果、という点。
政治家は一般人に何一つ強要などしていないのだ。
「進歩」「発達」だと思っているものは、
実は(ある意味)「退化」なのか、
と思ってしまった。
考える事までラクをしようとすると
とんでもないことになりかねない
ですね。
洗濯機とか掃除機とかあってもメンドクサイって思っちゃうんだよ~^^;
それとも単に出版時の状況と比べて、あまり進歩がないのかもしれません。
極めて高度の知性を持つ者と、とんでもなくおバカで単純な人とに、
分かれるのかもしれないわ。
ちょうど、自由に経済を放任すると、
大金持ちと貧乏人の2つに分かれて行くように。
ブラッドベリの洞察はスルドイわ・・。