Nicotto Town



3月期小題【花/「散華の言葉」】

草原に座り込んだ私たちは、差し入れられたおはぎを頬張りながら少しひんやりするそよ風の心地良さを味わっていた。遠くにはまだ五分咲きの桜が見える。

「『散る花あれば咲く花あり。散る花も元は栄えた花。花が肥やしになって次に咲く花を育てるんじゃ』…俺は爺さんからこう聞いた。だから俺はここにいる。俺は次に咲く花の肥やしになる」
浩介はこう言って、特攻服に包まれた身体で天を仰いだ。

「俺はどうしようかな」
何気なく呟いた私はすぐに後悔した。何も言わず、ただ虚ろな眼差しで空を見ている浩介に対して何と心無い言葉を吐いてしまったのかと思ったからだ。

昨年まで同じ中等学校(今の高等学校)にいた私たちは、学徒動員のあおりを受けた繰り上げ卒業と同時に召集され、私は整備士、浩介は飛行士として今の航空隊に配属された。

「お前は自分が納得できる人生を送ってくれ。絶対に生きることをあきらめないでぐっ…、ぐっ、ぐふっ。おっ、おぢゃっ!」
おはぎを喉に詰まらせた浩介は、お茶を飲み干すとバツが悪そうな顔で口元をほころばせた。

翌日、ほころんだ桜が私の記憶の中に刻み込まれた。浩介は、突如開いた桜の花に見送られながら南の空へと飛び立って行った。

それから半世紀以上が経ち、空襲と見紛う光景を目にした私は、今さらながら浩介の言葉を思い出すと思わず呟いた。
「俺たちはまだ生きなきゃいけないようだ。肥やしは充分だもんな。なあ、浩介…」

☆☆おしまい☆☆

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2012/03/18 11:38
戦争の焼け野原から見事に再生したこの国
今度も必ず。
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2012/03/11 13:34
『散る花あれば咲く花あり。散る花も元は栄えた花。花が肥やしになって次に咲く花を育てるんじゃ』
奥が深いですね。
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2012/03/09 09:13
やっぱり文章不足だったようです・・・最後の中に明確に「東日本大震災」を盛り込んでおくべきでした・・・(悔)
表現はさておき、最後の「私」の言葉には生き残った人たちへのエールを込めたつもりだったので・・・(再悔)
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2012/03/08 20:31
戦争のころって、戦死することと桜の散ることをかけて美しいものだとすることが多かったみたいですね。

戦争が終わっても、桜が散るのを見て、胸を締め付けられるような思いに駆られた人もたくさんいたのでしょうね。
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2012/03/08 20:27
戦争ですね。
時代に翻弄され、生きるべき命を全うできない。悲しく、儚く、切ないです。
沖縄の地元紙では、毎日のようにオジィ、オバァの戦争体験が語られています。
そこには、儚さや悲しさよりも、踏みにじられた憤り、恐怖、むごさがあります。
戦後何年たったとしても、忘れずにいたいですね(__)
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2012/03/07 21:40
二度と繰り返してはならない歴史であるならば、
かつて、こう言った人達がいた事を決して
忘れてはいけないと思います。
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2012/03/07 18:56
具体的な建物、飛行場、兵舎、
フェンス越しに見た飛行機の並び方
給油風景
具体的な機種、形、
エンジンをかけるところ
戦闘服、所持品


整備士、パイロット、航空隊だけですまさずに、キーワードと解説をセットにして
極力細部描写をいれるといいかなあと思います


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2012/03/07 10:33
 戦争に思いを馳せる人は多いですね。
 私も子供の頃、多くの大人たちから様々な話を聞きました。
 特攻崩れという人もいて、それは時代の背景が、特攻隊の背中を押していると感じたものです。

 まだ生きなきゃならない。
 まだ、【私】には生きてやらなきゃならないことがあるんでしょうね。
 もう少し、彼らの言葉を聞いてみたいと思いました。
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2012/03/07 01:40
サークルから見学に来ました。よろしくお願いします。

花の記憶が腐葉土のように形や色彩を失って、土に還っていく光景を想像しました。
土に朽ちても、かつて花だったという意思はいまだ無言のメッセージを放っている、

僥倖で生き残ったものも、やっぱり肥やしになれるような散り方を選びたいですね。
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2012/03/06 21:48
以前働いていた現場で、満州から引き揚げてきた人の昔話を思い出しました。
今生きていて、継承できる未来があるから、
うーん、あたしも上手く言えませんー(><) ごめんなさいー
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2012/03/06 15:17
散る花あれば咲く花あり。散る花も元は栄えた花。花が肥やしになって次に咲く花を育てる。

これは深い言葉ですね。
花と人の生を重ねていますよね。
脈々と生は、途切れることなく受け継がれていく。

けど、そこに想いを馳せることは少なくて、
直線であるべきものを、点線に感じてしまう自分がいます。

ああああ・・・・・うまく表現出来ずにごめんなさいです^^;




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