雨宮しずくは、雨の日が大好きだ。雨が降ると必ず、ある人のことを思い出す。しずくがその人にあった日も雨が降っていたからだ。それは、しずくがまだ小学校４年生の時のことだった。


「ど～しよ～。ビリーがどっかいっちゃった～。」
　しずくは学校の帰り道で、手提げにつけていたマスコットを落としてしまったのだ。
「そうだっ！さっきあそこで転んだから、あそこかもしれない。」
　しずくは近くの川沿いへ行って、雨の中、地面が濡れているのもお構いなしに、ひざをついてマスコットを探した。
「ビリー、どこー？ビリー。」

　と、その時、何か光るものを見つけた。水色で雫の形をした、宝石のようなものだった。それにはチェーンが付いていて、ペンダントになっていた。
「なんだろうこれ？」
　と、しずくがそれを手にしたその時
（ザァ～～～～ザァ～～～）
「な、何？今の音、波？」
　音は川の方から聞こえてきた。そして次の瞬間、水がいきなり盛り上がり、大きな手の形になってしずくを襲ってきた。
「き、きゃ～～～～！！！」
　しずくは逃げようとしたが、あっという間に水の手につかまれ、川に引きずり込まれた。
（ドッパーーーン！！）
　水の中で必死にもがくが、顔が水の外へ出ず息ができない。
（く、苦しい・・・苦しい・・・誰か・・・助けて！）
「よこせ～。それをよこせ～。」
　どこからか不気味な声が聞こえてきた。何をよこせといっているのかわからないし、今はそれどころじゃない。
（も、もう・・・ダメ・・・。）

　そう思ったその時、顔が水の外に出た。よく見ると、自分の体が水の塊（？）に包まれて、どんどん上へ上がっていく。今はまさに、宙に浮いているような感じだ。
「え？なにこれなにこれ！どうなってんの！？」
　すると、しずくを包んでいた水の塊が、みるみるうちに人のような形になり、そして透明な水にどんどん色が付いてきて、なんと、男の人になったのだ。
　男の人が宙に浮いて、しずくを抱えている。
「大丈夫かい？お嬢ちゃん。」
　しずくは驚きのあまり、返事ができず、口をパクパクさせた。

「おのれ～。レインめ～！」
　川からまたさっきの不気味な声が聞こえてきた。すると、男の人は（キッ）と川を睨みつけ、地面に降りてしずくを降ろした。
「ただ見つけただけの人間まで襲うとは！たちの悪い奴だな！」
　そう言うと、男の人は川の方へ手を伸ばした。すると、その人の手から尖った氷のようなものが出てきて、川に勢いよく入った。
「ぎゃ～～～～～～～！！」
　不気味な叫び声と共に。川が（ピカッ）強く光り、しずくは眩しさのあまり目を開けていられなくなった。

　気がつくと、さっきまで波打っていた川は元に戻っていた。
「これで片付いた。あ。大丈夫かい？怪我は無いかい？」
「は、はい。助けてくれてありがとうございます。」
「いやいや、こちらこそ。ありがとう。レインドロップを見つけてくれて。」
「レインドロップ？」
「ほらっ、君の手に引っかかっているそれだよ。」
　よく見ると、左手にさっきのペンダントが引っかかっていた。
「あ、これですか。」
「そうそう、ありがとう。」
　男の人はペンダントを取ると、握手をしてきた。その時、しずくは自分の心臓が（ドキッ）とするのを感じた。
（え？何？今の・・・。）

「えっと、君名前は？」
「え？あ、雨宮しずく。」
「しずくか。俺はレインだ。ところで、しずくはこんな所で何をしていたんだい？」
　しずくは自分が何をしていたのかを説明しようとした。が、その時
「ハックション！」
「おっとヤベッ！このままじゃ風邪引いちまうな。」
　そう言うと、レインはレインドロップを首に下げ、空に向かって手を伸ばした。すると、雨が一瞬で止み、雲が晴れ、太陽が出てきた。
「え、ええ～！？」
　そして今度はしずくのほうに手を伸ばした。すると、今度はしずくの体が青く光りだし、ずぶ濡れだったしずくの服と髪の毛が一瞬で乾いた。
「これで寒くない？」
「は、はい・・・。」
　レインが起こした数々の不思議な現象に、しずくは驚いてボーゼンとした。
「ああ、言ってなかったな。俺、水を操る精霊なんだ。さっきのも、たちの悪い水の精霊だ。大方、レインドロップを奪って、俺の力を奪おうとしたんだろう。」
　レインが人間ではないことはすぐわかったが、ますます驚いてしまった。

「で、改めて聞くけど、しずくはここで何してたんだ？」
　しずくは説明した。すると、
「どれ、そのかばん貸してみろよ。」
「？」