真夏のシリウス
- カテゴリ:自作小説
- 2012/03/30 19:03:47
空調の効いたレストランの窓から外の風景を眺めると
全ての物がほぼ真上から照りつける真夏の灼熱の太陽で
目に眩しく映った。
国道の向こう側の畑が広がっているさらにその先に基地の
柵が滑走路に沿って伸びていて、滑走路と3機の航空機が
並んだ駐機場の向こう側に、管制塔と3つ並んだかまぼこ型の
格納庫が立ち昇る蜃気楼に揺らめいて見えた。
はるか昔、この国の都市を爆撃する為に、南方から飛来して来る
長距離爆撃機を迎撃する為に、局地戦闘機があの滑走路から
飛び立っていった。
戦後、基地は戦勝国に接収されていたが、その後返還されて
今はこの国の(軍隊)が使用している。
「何だか、この辺りの風景って何と無く殺風景だわね。」
摩耶が言った。
「多分、地形に変化が無さ過ぎるからだろうと思う。」
僕が答えた。
僕らはレストランを出た。
外に出ると、途端に僕らは降り注いでくる激しい陽射しと
アスファルトから立ち昇る熱気にさらされた。
基地の滑走路から輸送機がジェットエンジンの轟音を響かせながら
飛び立って急上昇して行くのが見えた。
僕らは国道沿いを歩いた。
途中にある小学校の運動場では、盆踊りの為の櫓が組まれ
提灯が吊り下げられていた。
国道から左の方に伸びている道をしばらく歩いて、
僕らは生い茂った木立に囲まれた建物にたどり着いた。
激しい陽射しからは逃れる事が出来たが、すぐ真上から
いっせいに降って来る、蝉の鳴き声が耳をつんざいた。
僕が持っていた鍵を使ってドアを開け、建物の中に入ると
蝉時雨ははるか遠くに遠のいて行った。
玄関のすぐ脇にある部屋でクーラーの風を浴びながらしばらく休んだ後、
僕らは、薄暗い廊下を奥の方に進んで、突き当りの右側の部屋に入った。
暗闇に目を慣れさせる為に、黒いカーテンを閉め切って真っ暗に
してあるその部屋に摩耶を待たせて、僕は鍵束とライトを持って
向かいの部屋に向かった。
(5)のテープが貼られた鍵を差し込んでドアを開け中を照らすと
大きなドーム型の白いスクリーンの下に、サークル型にパイプ椅子が
配置され、その中央に、操作盤が内臓されたキャビネットの上に
古い天体映写装置が置かれている。
数十年前、この町にある基地を接収していた戦勝国の空軍が
パイロットに非常時の為の天体観測飛行訓練を行う為に
この装置を持ち込んだ。
装置はその後この国の軍隊に引き継がれ、時を経て、町に
寄贈される事になった。
・・・
南の空に、赤く輝く星アンタレスが心臓部分にある、さそり座
天頂からやや東寄りの空に、デネブを尾にした白鳥座
映し出されているのは、夏の夜に広がっている、星空だ。
星空を見上げながら摩耶が言った。
僕は答えた。
地球の公転軌道が今の軌道より内側や外側にあった場合
秋の星座、ペガサスがスクリーンを駆け抜けて
光り輝いた。
「オリオン座の東に輝いているシリウスは夜空でもっとも
2年前から、僕はこの装置で年に何度か子供たちに星座の
説明テープの声は、僕のかつての恋人の2年前の声だ。
今は結婚して遠く離れた場所に住んでいる。
生命と言うのは、なぜ新しい生命を誕生させてまで、存続を
僕は頭上を覆い尽くしている闇に無数にちりばめられた星を
放送マイクが使えなくなってね であわてた放送委員の人や 学校関係者から何かピアノで
繋いでって言われて、 咄嗟に弾いたのがこの曲とあと2~3曲あったような・・・・・
このタイトルだけチャンと覚えてるのですよ^^
霊が地上にたまってにっちもさっちもいかなくなるからだ、
という話を聞いたことがあります^^
コメントありがとうございます。
まあ実際にはいろいろあったにしても、出来れば過去の事は
美しい思い出として、少なくともほろ苦い思い出もしくは
教訓として、胸に留めておきたいでしょうね。
コメントありがとうございます。
命の連鎖への疑問。
そこには、それぞれの解釈や受け止め方があるだけで
本当の所はその問いには答えが無い様に感じます。
容量オーバーという事で言えば、もし霊というものが
存在するのなら、いずれ地上は寸分の隙間も無いほどに
霊に埋め尽くされると思っています(笑)
全然くどくないですよ^^
彼はどんな思いで過去の恋人の声を聴きながら
きれいな星を映し続けているのでしょう。
コメントありがとうございます。
残酷とは行かないまでも、やはりその度に思い出さない訳には
行かないでしょうね。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、あの夜空に広がるあの圧倒的な空間には
しばし人の心を現実から引き離し、壮大なものの考え方をさせる
力がある程のスケールがあると思います。
コメントありがとうございます。
星がよく見える夜空のイメージによく合う曲だと思います。
コメントありがとうございます
僕の場合、雰囲気を伝え様として描写がくどくなる傾向があると
以前言われた事があって、一応その辺を留意して書いてはみましたが
それでも結構字数を使ってます><
きっと高度な知性体しかできないことかもしれませんよね。
生存するためには、それに気付かないフリをしていればいいのか、
最初からそういう疑問を持たない方がより競争に勝ち抜けるのか、
けっこう難しい問題かもしれないですけど、
けっきょく適応しなくて生存できなかった種の記憶は霧散して、
存在した事実やテーゼすら消去されてしまう、、
ファイルに保存しないでいた作業メモリー上の内容みたいです。
まあ、容量オーバーを防ぐためにリセットされるわけですが。
引きつけられます。
かつての恋人は、仕事場に声だけを残して去っていった。
星座を何周回しても、その声が遠ざかることがない。
ちょっと、冷え冷えとした残酷さが感じられて面白かったです。
星を見上げるというありふれた行動が、非日常への小さな扉かもしれないと思います^^
見上げるたびに、いつも何かを感じさせてくれるものですよね^^
します。 星座おくわしいのですね^^
丁寧な描写に、夏の暑さやクーラーの冷気がしっかりと伝わってきました。
最後の2行、いいですね・・・^^