王の資格
- カテゴリ:自作小説
- 2012/03/31 23:13:30
星の船から赤い光線が放たれる。街一つを破壊した破壊光線だ。
「しっかり掴まってろよ!主舵いっぱいぃいいい」と、ギルバードは叫ぶ。
間近で見ると美しくさえ見える。その赤い光線を螺旋を描くように空気の流れに逆らわず避けた。
とても初めてとは思えない。
「学者をやる前は船乗りだったわけじゃないが、「エーテル」のおかげだな。イメージした通りに動いてくれた。はっはー。動いてくれなかったら、どうしようかって思ってたところだ」
と、ギルバードは高笑いしているが、聞くんじゃなかったと、ボクは思った。
スコットも顔を青ざめている。
ニナはボクの服の裾を握ってきた。
「怖かった…」と、ニナも涙目だ。
そんなボクたちの気持ちはお構いなしに、
「おい、上空につけたぞ」と、ギルバードは言ってくる。
覚悟を決めなくては……。
甲板にはスコット、ニナがボクの後ろにいる。
ボクは振り向き、決意を口にした。
「ボクはこれから殺人を犯す……合図があるまで待っていてくれるか」
「リルル、任せたぜ」と、スコットは肩を叩いてくる。
「…一人でいいの?」と、ニナは聞いてくる。
「ああ。合図は閃光弾を打ち上げる……ニナ、スコット。」
「何だよ?」
「どうしたの?」
「ボクを見捨てないでくれ」
「あっ当たり前だろ!」と、スコットは抱き締めてくれた。
その後ろに、ニナが歩み寄ってくる。
「ルゥ…」エメラルドの瞳に涙が溜まる。スコットはそそくさと、離れてくれる。
風に金の髪をたなびかせながら、ニナはボクの頬に口づけをした。
「あなたは私がを守るから……安心して、ルゥ」
ボクは自分の目からあふれたモノを拭き取り、甲板を蹴って、飛び降りた。
ニナも飛び降りてくる。
ボクたちはただ落下して行く。「エーテル」のネックレスの力を借りて、軌道修正をしながら星の船へ向けて落ちて行く。
ボクは殺人者に戻る。
ニナの声が聞こえる。
「ううん、あなただけに戦いはさせないわ。」
ニナは落下スピードを上げて、ボクの手をつかんできた。
ボクはただつかみ返した。
星の船の甲板へ数十メートルのところで精霊力が弱まるのを感じる。
エーテルのネックレスに頼れるのはここまでだ。
このまま落ちれば骨折は免れないどころか、即死だ。
だがボクとニナは互いにほほ笑み合って、特にあせるということも無く、そのまま落下するのに身を任せた。
二人の黒騎士が落下地点を教えてくれる。腰から剣を抜き放ち、ボクたちを串刺しにするつもりのようだ。
ニナは言霊を唱え出した。ヴァルキュリアスに伝わる言葉だろうか……聞き取れない。
耳では聞き取れないが……胸の中へ。
心に直接響いてきた!
まるで心地良い音色のように。
『われ、唯一の所持者なり』
『そなたらの罪、すなわち我が物なり』
『われ、そなたらの罪を解き明かす者なり』
『われを何と呼ぶ?王の中の王。神の中の神。魔王の中の魔王』
『すなわち、真の主(あるじ)なり』
『我は汝。汝は我。然らば、真の主として命ずる』
『汝は我を助けよ…我は汝を助ける』
胸に響く、その言葉が終わると、ボクとニナの身体が金色に輝き出した。
一気に読んじゃった。