Nicotto Town


「さくら亭」日報


【改装】マジカルフラワーの秘密飼育室

画像

*注意。
無駄に長いです。
人によってはグロと感じてしまうかもしれませんので苦手な方は読まないでください。

~手記~
昨春、発表されるやいなや世界中を騒がせたものがある。
登録商標「マジカルフラワー」
暗闇でほんのり光るその花は馥郁たるやさしい香りを放ち、
まことしやかに贈られた人に幸福をもたらすと噂された。
何しろ数があまりにも少ないため入手が困難であり、
裏では宝石よりも高額で取引されている。
普通の花であれば数日で枯れるものだが、この花が枯れたという報告は今のところない。
製造している桃の木カンパニーによると切花のまま、ほぼ半永久的に咲き続けるそうだ。
学者たちはこぞってこの花を調べたが、これまでのところ間違いなく植物であるが
どんな植物とも異なった細胞を持つとしかわかっていない。
そして採取した細胞からクローンを作り出そうとしても必ず失敗した。
謎に満ちた宝石よりも稀少な花。それがますます人々を熱狂させることになる。

「マジカルフラワー」を発表して以来、
桃の木カンパニーの中心である桃之木一族はこぞって世間に姿を現さなくなり、
多くの者が「マジカルフラワー」の秘密をさぐろうとし、そして誰も帰ってこなかった。
雑誌記者のはしくれである私は、
たまたま取材した相手が「マジカルフラワー」を所有していたため、
実物を拝むという僥倖を得た。
その花を見て香りを嗅ぐことで与えられた言葉では表現しえない至高の感覚に私は酔った。
そしてどうあってもこの花の秘密を解き明かしてやると心に決めたのだ。
たとえ、どんなことがあるとしても――。

それから伝手をたどり足で調べ、約半年。
ついに現在桃之木一族が隠れ住むという邸を見つけ出すことができた。
おそれていた警報装置なども見当たらず誰にも見咎められないまま、私はどんどん邸の奥へと進む。
突き当たりは書庫だった。ぎっしりと私には読めない洋書が大半を占めている。
高い書架の間にはしごがかかっていたので迷わず足を進め、隠し部屋を発見した。
部屋中に満ちていたのが間違いなく「マジカルフラワー」のものであることに
私の心は高揚し、たちまち幸福感に捉われる。
まちがいなくここに、「マジカルフラワー」とその秘密があるのだ!
窓際の椅子の上で穏やかな表情のまま眠っているのは筆頭取締役の桃造氏に違いない。
世間を騒がせる「マジカルフラワー」の総元締めであるはずなのにあまりにものんきだ。
いや、それもしかたがないのかもしれない。
こんなに大きな窓からの日差しが暖かくて、心を穏やかにする香りが満ちていて、
知らず眠りに誘われるような子守唄が聞こえてくるとあっては。
子守唄。
その部屋には桃造氏以外にもうひとりいた。専務に名を連ねている桃造氏の妹、桃美氏である。
彼女は部屋の奥のソファに身を預け、目を閉じて歌い続けていた。子守唄を。
誰に?

少し落ち着いて改めて部屋を見てみれば、そこは異様なものであふれていた。
何よりも目につくのは桃美氏の周囲にびっしりと並べられた奇妙な瓶詰め。
かなりの大きさがある瓶の中にはどうやら同じものが入っているらしい。
ここからでは遠くてよくわからないが、生物のような気がしないでもない。
だがふと朝鮮人参にも似ている気がした。
朝鮮人参に似ているとしたら、それは根だろう。
つまりはそこから芽が出て花が――
無意識に部屋に入り込み、瓶詰めに近づいていた。
ああ、花が咲いている。影の中で淡く光りながら。
そのおぞましい醜悪な根とは似ても似つかぬ美しさで。
しゃりん、と金属のこすりあわされる音で我に返る。
桃美氏のいる部屋の奥は、鎖で封じられていたのだ。
決して大きな音ではなかったが、音と共に瓶の中の「顔」が一斉に私を見た。
声にならない悲鳴をあげた私の背後から男の声が響く。
「うちは代々オカルトマニアでねえ。怪しい本を集めては怪しい術なんかを試していた。
半分以上遊びだったがね。
だがあるとき、どうやら本物の魔方陣を作ることに成功していたらしく、
そいつらがやってきたんだよ。
育ててみると実に美しい花を咲かせるのでね、花に害はないので商品化してみた。
けれど花を咲かせるには養分が必要なんだよ。
妹が子守唄を歌っている間は必要ないんだが、妹もずっと歌い続けることはできない。
だから、養分の方からきてもらうことにしたんだ。
わざとこの場所のヒントをちりばめて。
そいつらは君を見た。もう君は逃れることはできないよ」
――どうやってそこから帰ったのかは覚えていない。
気がつけば見慣れた我が家で床に座り込んでいた。
こんな与太話、誰が信じてくれるだろう?
もちろん、桃造氏の話は馬鹿で非常識な侵入者をこらしめるための作り話かもしれない。
だが私は見てしまったのだ。やつらの「目」を。
「マジカルフラワー」はまた美しく咲くだろう。
ああ、窓に、窓に!


調子に乗りすぎました……。御大に愛をこめて。
改装はわざと中央を空けています。

アバター
2012/04/29 16:46
こんにちは。お久しぶりです^^
長かったけれど、なんだかんだで読んじゃいました!

「眠っている桃造氏」の絵を自分の中でいろいろ思い描いてましたが、なぜか画像を見るまでモモゾーさんと結びついてませんでした。見てみてなるほど、ですw
アバター
2012/04/25 22:51
ヾ(・∀・`*【♥♡*†*♠コンバンハ♤ *†*♡♥】

正直文章が細かく長いので、要所を読んでみました。

秘密飼育室と言っても神秘性とか秘密と言った雰囲気もなく、むしろほのぼのみたいな雰囲気ありますね。
作りはあずみさんの和流をどこか感じさせるものです。

全体にはいい料理かもしれないけれど、私的にはメインデイッシュが不在な感じがするのが気になった改装でした。
アバター
2012/04/13 22:12
>暦さま
暴走した設定、読んでくださってありがとうございます♪
2000字で書くのは厳しかったですがそのわりに中身がないんですorz
マンドラは最初から瓶詰めしか作る気がなかったのでごろごろ溜まってますw
でも暦さまのお部屋で見て以来、「鉢植えもいいかも」と思い始めました♪
アバター
2012/04/11 20:58
こんばんは♪
これは...!!
何とオカルティックな小説!!
続きはまだ掲載されないんでしょうかΣヽ(゚Д゚○)ノ
と聞きたくなるような、引き込まれてしまった物語でした。

お部屋も広々としていて、子守唄を謳い聞かせるには
丁度良いスペースですね~。
何気にマンドラ瓶が小説のように沢山あるのが...Σ(`L_` )
私ももうちょっと栽培したくなりましたbb
アバター
2012/04/10 00:07
>うじゃさま
正解です♪
猫好きで魚の嫌いなあの方です。
本当はもっと凝った文章つけたかったんですが、途中で飽きましたorz
アバター
2012/04/09 23:54
こんばんわ^^

“御大”とは…ラヴ・クラフト氏で合ってますでしょうか…?
(クトゥルフ神話の『ダゴン』でしたっけ……)



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2017

2016

2012

2011


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.