Nicotto Town


なんでもないこと


スナイパーへのメール(第3話)

鞄から何かの箱を取り出しているようだが、これはいったい?

スコープの倍率を上げて箱の正体を突き止めようとしたが、どうやら弁当かなにからしい。子供に人気の丸い顔をしたキャラクター”おてんきマン”のポーチを取り出したとたん、ターゲットの眉毛が漢字の八の字になってしまった。

どうやら子供の弁当と間違えたのだろう、しぶしぶ備え付けの先割れスプーンを使ってプチトマトを口に運んでいる。
武士の情けだ、せいぜい最後の晩餐(昼だが・・)くらいは楽しませてやることにしよう。

”オテントマン”は幼児から小学生までの男女に大人気キャラクターだ。天気をモチーフとした様々なキャラクターが”アメフリ博士”という敵と戦う、愛と勇気と友情がテーマの人気アニメだ。夕方、毎日15分で一話のペースで放送されており、特にエンディングの後の明日の天気のコーナーは実用的で毎日欠かさず観ているという固定ファンも多いらしい。

ブルルルルルル・・・・
おっと今度こそクライアントか?


メールを開くと、またもや主婦と思しき人物からのメールだ。おいおい、もう話すことはないだろう。なになに・・・

「あなた、もしかして間違ってアイちゃんのお弁当持って行ってない?今朝アイちゃんにお弁当を持たせようとしたらあなたのお弁当しかなかったから、もしやと思ったんだけど。」


!!


口調はさっき送ったメールの効果を発したからか幾分マイルドになっているが、問題はこの内容だ。今ターゲットが広げている弁当は確かに子供が持っていくようなものだ。まさかこのメールはターゲットの妻のものではないだろうか?
よし、試しに確かめてみるか。

「そうなんだよ、鞄を開くと”オテントマン”のポーチが出てきてびっくりしたんだ。」
ぽちっと。


1分もたたずに返答が送られてきた。女子高生並みの脊髄反射のような素早いキータッチだ。


「やっぱりー!そんなおっちょこちょいだから狙われるのよ」


やはり、このメールを送っているのはターゲットの妻のようだ。
とはいえ、こんな偶然があってたまるか!しかし完全に今の会話はあのターゲットへのメッセージの内容が自然につながっている。
あえて、わざと”オテントマン”という固有キャラクターの名前を出していたのだが、シチュエーションがここまで一致するとは単なる偶然とは思いがたい。

ちょっと、待て、この文面に最後にある「だから狙われるのよ」という一文が気になる。ここまで今の状況と合致することがあるだろうか?私がターゲットを狙っていることはクライアントしか知らないはずだ。もしかすると狙われるの意味が違っているのかも知れない。
たとえば、近所のおせっかいおばさんにゴミの出し方に間違いがないか狙われているとか。
独身じゃあるまいし、そんなことはないか。ましてこんなメールを送る奥さんのことだ、むしろおせっかいなおばさんの側の人間だろう。では、どういう意味だ?
あるいは、会社での地位を狙われるとか?そんなことをわざわざメールで伝えるか?
どうしても気になる!

私は返事を出して鎌をかけてみることにした。ポチポチ・・・
正直、携帯のメールを打つのはあまり得意ではない。まして顔文字など問題外。最もそんなメールを交わす相手もいないから使うこともないのだが。


「ばかだなぁ、何に狙われるんだよ?」

こんな感じか?
送信と。


1分も待っただろうか、すぐに返信が来た。

ブルルルル・・・・
「もちろんあなたからよ。」


なんだ、この返答は?どういうことだ?

ブルルルルル・・・
また着信だ。

「残念だけど、ここでそろそろネタばらしをしてあげる。後ろを向いて」

つづく

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2012/05/01 00:09
とうとう最終話ですね^^楽しみにしてま~す♪




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