Nicotto Town



5月期小題「金環食/新女王誕生」

「ま、また天が食われた!」
1年前にも欠けた太陽が再び欠け始めると、人々の恐怖心は頂点に達した。

『再び天が消えるでしょう。ヒミ様が悲しんでいらっしゃるから…』
若巫女テヨの予言が現実になった。

侵食する月が太陽に飲み込まれ、鮮やかな金環食を作り上げた時、先代女王ヒミの墓所たる天の岩戸に篭っていたテヨが声を上げた。
「さあ、ウズ様、今こそ天の声を聞く時です。タヂカ様、岩戸をお開け下さい」
降臨の巫女たるウズが踊るように憑依の祈りを始めると、タヂカが重い岩戸の扉を力を込めて押した。
岩戸が開くにつれ、ぼんやりとしていた外界が徐々に光に照らされ、扉が完全に開かれた瞬間、侵食から抜けた一条の光が岩戸の中に立つテヨの姿を眩しく照らし出した。
テヨは、その予言の力を人々に見せつけたのだ。

「天を消されてはこの国に我の生きる場はない…」
さすがに物怖じしないスサ王も、再び天を隠そうとするテヨの霊力にただただ畏怖の念しか浮かばなかった。晴れの場たる日中を治めるスサにとって、天の光を消されることは自らの権力が行使できないことを意味した。

この後、スサは新たな国を作るためにヤマト国を去り、豪族から推戴されたテヨが新女王となった。テヨは賭けに勝ったのだ。

予言や占術が国策に大きな影響を与えていた頃の物語である。


☆☆おしまい☆☆

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2012/05/30 22:29
天の岩戸ですねw
壮大なお話をショートでって、すごいです^^
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2012/05/15 12:08
天を味方につける、というのはこういうことを言うのでしょうね
それも大事な実力。
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2012/05/10 21:44
科学的な知識が無くて見る天体の動きは、ほんとうに神々しく見えたでしょうね。
壮大ですねー短いのにドン!存在感あるお話ですね。
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2012/05/10 14:53
短編なのに、スケールの大きな作品だと思いました。
時代ものが書けない者には、こういう作品は憧れです。
また、読みたくなるタイトルだなぁと思いました
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2012/05/09 22:30
日食って、からくりを知らない方が面白いかもしれませんね。
5月21日は、原始人になったつもりで恐れおののいてみようかしら。
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2012/05/09 19:05
古事記というのはけっこうなことを
ぼかしたりなまめかしく書いたりしてます
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2012/05/09 16:29
日・月・火・雨・土・風の神々は
多神教では、必ず力ある神ですから。
喜びと恐怖をもたらすのが神。
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2012/05/09 14:18
太陽が欠けると、ほんとに怖かったでしょうね・・・^^;

竜巻や雷も今でこそ気象の問題だとわかるけど、昔だと龍が出てきたと思ってしまいそう。

そういえば、、、震災に始まって、人間の力ではどうにもならないことが続きますね・・・(; :)
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2012/05/09 05:24
万物の神である火の玉、太陽
暖かい日差しにほっとする今日この頃
太陽が無くなる恐怖、今も昔も変わりませんね
原子力発電所がストップした現代
光をもたらしてくれる神は現れるのでしょうか?
若巫女テヨさま~教えて~
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2012/05/08 23:42
 古代。
 確かに今のような知識はなく、間違った解釈もあるかもしれない。
 でも私は、こういう空気感好きです^^
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2012/05/08 23:32
はじめまして。自作小説から失礼します。

宮崎で、天の岩戸とされたのを見たことがあります。
公明が天文学を駆使して、戦略を考えたのと同じですね。
世の終わりだと思うでしょうね。
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2012/05/08 22:50
昔の人にとっては、天体、気象の現象は神秘的な意味を持つものに
思えたでしょうね。



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